プロメテウスの政治経済コラム

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浜岡原発判決  行政権力側の言い分を追認するだけの司法判断は要らない!

2007-10-27 19:32:35 | 政治経済
マグニチュード(M)8級の巨大地震の震源域にある浜岡原発。世界の常識では考えられない原発の立地条件だ。M6・8の新潟県中越沖地震は、柏崎刈羽原発に「想定外」の被害をもたらし、現在も被害実態の調査中である。国や中部電力の主張を全面的に受け入れた静岡地裁の判決は、柏崎刈羽原発の教訓を無視したもので、権力の相互監視としての司法の役割を放棄するものである。確かに、裁判所は口頭弁論終結の時までに明らかになっていた事実に基づいて判断する。しかし、公知の事実について考慮することは許されるのである。柏崎原発の損傷に関する教訓を無視した点で、本判決は、極めて政治的である(海渡 雄一 同上)。
判決は、国や中電の主張をほぼ全面的に認めた。そのうえで、住民の安全に影響はないと結論付けた。
結審後の7月、新潟県中越沖地震が起こった。東京電力柏崎刈羽原発では、揺れが想定を超える1000ガル近くに達し、大きな被害を受けた。これは、浜岡原発の最新の想定を大きく超える水準である。国の新しい耐震基準でも原発は危ないのではないかという懸念も出てきた。今回の判決は、こうした地震に関する最新の知見をまったく反映していない(北海道新聞10月27日)。

原発の耐震設計をめぐっては、柏崎刈羽原発が今年7月に新潟県中越沖地震の被害を受け、実際の地震の揺れが、設計で想定した揺れを大きく上回り、現在の原発耐震設計の想定の甘さが露呈した。原発構内のいたるところで地盤沈下や崩落、亀裂が発生。調査では、すでに約3千件もの事故や損傷が確認されている。変圧器火災で実証された消火体制の不備、放射性物質の漏えい事故のほか、原子炉の“ブレーキ”にあたる制御棒が取り出せなくなるなど、原発中枢部の変形を示唆する安全上重大な事故も発生しているのだ。複数同時故障が原子炉の安全にどう影響するかについての解明もこれからである。耐震性にとって、原発の老朽化も問題である。浜岡原発1、2号機は、それぞれ1976、78年に運転を開始し、もともと30年程度といわれていた耐用年数にきている。老朽化原発では、中性子を浴び続けることによって材料が劣化し、配管の亀裂や減肉が発生し、耐震強度が低下する(「しんぶん赤旗」10月27日)。
判決は、老朽化についても、配管の金属がやせる「減肉」対策などが講じられて、点検、管理体制は適切としている。だが、本当にそう言いきれるのだろうか。約5年に及ぶ裁判では地震の規模や原発の耐震強度をめぐって、住民側や電力会社側の証人として出廷した専門家が主張を闘わせた。意見は真っ向から対立した。判決は中部電の言い分を支持する一方で、住民側が示している疑念をぬぐえるような「反証」は示していないようにみえる。北陸電力志賀原発の運転差し止めを命じた昨年3月の金沢地裁判決が、双方の主張を勘案し、判断の根拠を示しているのと対照的だ(中国新聞10月27日)。

原発への信頼が揺らいでいる一つの原因として、原発耐震設計時の想定を超える強い地震が相次いでいることが挙げられる。1981年に策定された旧指針は「およそ現実的ではないと考えられる限界的な地震」を想定し、それでも安全機能を損なわない耐震性を要求している。だから、この基準を満たしているとして、電力会社側は安全性を強調してきた。しかし、2005年の宮城県沖地震や、今年3月の能登半島沖地震、7月の新潟県中越沖地震では、揺れがその想定を超えていた。国は昨年9月、以前よりも厳しい想定の基準を盛り込んだ新指針を策定した。しかし、これら一連の地震の教訓は反映されていない。
国や電力会社は信用できるのか。電力会社のデータに驚くほど多くの隠蔽や改竄があったことは記憶に新しい。原発では、臨界事故や制御棒トラブルの隠蔽である。三権分立のもと行政権力を監視するのが、司法の役割である。次ぎの東京高裁がまともな判断をするよう国民の監視が必要だ。

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