安倍晋三首相がおととい(2月14日)の衆院予算委員会で、自らの答弁を撤回して陳謝した。首相の国会答弁撤回は極めて異例の事態である。しかも首相が今通常国会で最重要法案と位置付ける「働き方改革関連法案」に盛り込まれる裁量労働制の拡大を巡る答弁だ。裁量労働制のもとでの労働時間は「一般労働者よりも短いというデータもある」とする同委での自身の答弁(1月29日)を、答弁の誤りを認めて謝罪し撤回したわけだから、「法案提出は当然断念すべきだ」(共産党穀田恵二国対委員長)。
安倍政権は「働き方改革」と表現するが、実態は「働かせ方改悪」と呼ぶべきものである。残業時間に上限を決めて、罰則規定を設けることが宣伝されているが、その上限というものが「過労死を引き起こす」水準に設定されたのでは、何のための上限規制であるのか分からない。
日米財界の代理人である安倍政権にとって、残業規制で労働者が人間らしい労働を取り戻すことなど初めから眼中にない。「残業代ゼロ制度」と呼ばれる制度の導入、「裁量労働制度」の拡大が最初からの狙いである。
「高度プロフェッショナル制度」は年収1075万円以上の収入がある専門的な職業を、労働時間の規制や残業代、休日・深夜の割増賃金の支払い対象から外す制度であり、一般に「残業代ゼロ制度」と呼ばれているものである。現在適用対象は、年収1075万円以上の労働者に限るとしているが、この金額が法律に書き込まれるわけではない。「省令で定める」としているため、今後、政府が勝手に金額を引き下げてゆく可能性が高いし、財界もそのつもりである。
「裁量労働制」では、残業時間を一定の時間と決めれば、それ以上残業しても残業代を出さないでよいという制度で、これを営業職に広げることが検討されている。高橋まつりさんを過労死自殺に追い込んだ電通のかねてからの悲願でもあった。
定額無制限労働を企業の自由にする。こんなものは労働法制でも何でもない。