プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

小林多喜二の解雇理由

2005-11-04 22:07:52 | スポーツ
今、小林多喜二の解雇理由がちょっとした話題になっています。これまでは解職の理由として「依願退職したかたちでの解雇」とされていましたが、、破綻後の残務整理をしている北海道拓殖銀行から内部資料(「行員の賞罰に関する書類」)の寄贈を受けた市立小樽文学館が、「依願解職」(諭旨)と明記された文章を発見しました。同資料によれば、多喜二は当時、拓銀小樽支社で書記をしていましたが、1929(昭和4)年11月16日の発令で「依願解職」(諭旨)と記されています。解職の理由として「左傾思想ヲ抱キ『蟹工船』『一九二八年三月一五日』『不在地主』等ノ文芸書刊行書中当行名明示等言語道断ノ所為アリシニ因ル」ことを挙げ、欄外には「書籍発行銀行攻撃」と書かれています。退職手当金も「1124円14銭なるも半額の560円給与」に減額されたと記されています。これまで「依願退職」ということが言われていたことについて、多喜二・百合子研究会の大田努さんは、手塚英孝氏の評伝で『依願退職というかたちで解雇された』とあることが影響したのではと述べています。多喜二本人は当時の書簡で「勤めの方が首になってしまいました」と書いていたとのことです(「赤旗」2005.11.4)。
大企業が従業員を思想で差別し、企業への忠誠心で、昇進・昇格差別することは、戦後の新憲法のもとでも一貫して実行されてきました。現在もおびただしい数の裁判が行われています。企業社会日本は、いま確実に崩壊しつつあります。職場で自由にものが言えないことをがまんすれば、将来になにがしかの生活の保障が約束されることもなくなったとき、労働者はますます保身のために身を小さくするのでしょうか。労働者は「労働力」を売っているが、「労働者自身」は売っていないとうことを忘れないでいたいものです。日常生活のあり方に歴史をつくる主権者としての矜持を持ち続けたいものです。


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