プロメテウスの政治経済コラム

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沖縄新基地「修正」合意はまったくの空文句だった

2006-04-16 17:43:13 | 政治経済
額賀防衛庁長官と島袋沖縄県名護市長が合意した沖縄新基地「修正」の「基本合意」についての地元説明会で、「修正」案のデタラメさかげんが早くも露呈しています。「基本合意」は、「(住宅)上空の飛行ルートを回避する方向で対応」「生活の安全」「自然環境の保全」をうたっていますが、すべて根拠のない空文句でした。説明を受けた区長からは反発の声が相次ぎ「区民に説明できない」との声もでています。日米同盟応援の朝日新聞でさえ「『V字形』仮定だらけ」(「朝日」06.4.16)と言わざるを得なくなっています。

七日の合意案は、滑走路を二本建設する計画です。計器飛行の米軍機が着陸する場合は陸側の滑走路を、離陸する場合は海側の滑走路を使うなどして、名護市が求めた辺野古などの住宅地上空の飛行を回避するとしています。本当に「住宅上空を飛ばない保証があるのか」との共産党・赤嶺政賢議員の質問にたいし、政府は「アメリカに基本合意をふまえ理解を求めていく」とのべるだけです(12日衆院外務委員会 北原防衛施設庁長官)。
合意案は北側からの風を想定していますが、先の「朝日」の記事によれば「南側からの風の場合にどうするかまでは米側と話し合っていない」(防衛庁防衛政策課)のです。同じ「朝日」記事は、軍事評論家の江畑謙介氏の“自然相手なのに風向きを特定方向に(仮定して)滑走路を片方からしか使わない発想そのものがおかしい。民間定期輸送機でも滑走路を片方からに限定するような運用はしません”とのコメントを載せています。

緊急時を想定してさまざまな訓練をおこなう軍用機が方向を限定して使うと考えること自体が現実離れしています。
米軍機は、着陸すれば事故を起こすおそれがある場合は着陸しないでもう一度やり直しする「ロー・パス」(低高度通過)や、車輪をつけてはまた浮き上がる「タッチ・アンド・ゴー」の訓練を行います。事故防止能力維持のためです。米軍機が常に一定方向に限定して、住宅上空を飛ばないなどというのはあまりにも無責任です。
「基本合意」は別図で、海上にヘリの訓練コースを明示し、住宅上空をいっさい飛ばないかのように描いていますが、ヘリ訓練が海だけですむはずがありません。普天間基地周辺の市街地上空での旋回訓練をみてもわかるように、名護市街地を戦場に見立てて、旋回しながら戦況判断や着陸地点を見つけだす訓練などをおこなうのは必至です。

騒音についてはどうか。防衛庁は辺野古沿岸案について「周辺の集落では環境基準で『専ら住居の用に供される地域』について定めた基準値70Wを満たしています」(同庁のパンフレット)とさかんにアピールしています(《注》Wは、「WECPNL」(うるささ指数)のこと。航空機の騒音レベル(デシベル)に飛行回数を加味して算出)。
しかし、那覇防衛施設局が01年3月、米海兵隊普天間基地の米軍ヘリを実際に辺野古沖合で試験飛行(デモフライト)させたときの騒音測定記録は、皮肉にもその説明がまったく事実に反していることを示しています。
結果は深刻でした。住宅地で最高60デシベル以下(昼間)、道路に面した地域で65デシベル以下という環境基準をはるかに上まわる騒音を多くの地点で記録していたのです。
沖合1kmコースで71―83デシベルが六カ所、1・4kmコースでも76―83デシベルが四カ所、2kmコースでも72―77デシベルが四カ所といった具合です。
80―85デシベルは「地下鉄の中」「交通量の多い幹線道路並み」で、75―80デシベルは「電話のベル」「騒々しい事務所の中」のうるささです。
新基地の滑走路延長線から辺野古集落までの距離は推定1km程度しかありません。試験飛行はまさにこの1kmから3km沖合での飛行であり騒音値は予測値ではなく実測値です(「赤旗」06.4.14)。

生活・環境被害も重大です。
日本自然保護協会は、西側の浅瀬の埋め立てでジュゴンやウミガメの餌場を失いサンゴ礁生態系に悪影響を与え、大浦湾での埋め立てやパイル打ち込みが海水の動きや堆積(たいせき)物を大きく変化させ、生物群集に悪影響を与えるとして、新基地計画の見直しを要求しています。
名護漁協は、大浦湾が大きく削られることで漁場に重大な影響がでると怒りをあらわにしています。

空文句で市民を欺き、新たな苦痛を与えるだけの「基本合意」は撤回しかありません。


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