今日５月３日は日本国憲法施行６１周年記念日である。９０年代以降の支配階級の改憲要求を完成させる任務を自ら進んで引き受け、勇んで首相になった安倍晋三前首相は２つの大きな失敗をした。一つは、自分の任期中の改憲を急ぐあまり、国民投票法案で民主党との共同歩調を捨て単独強行可決をしてしまったことである。改憲は自公だけでは実現できないという基本を見誤った。いまひとつは、あまりの改憲イケイケのために国民に警戒感をもたせてしまったことである。保守二大政党の枠を踏み破った民主党の攻勢の前に、国会は「対決」一色となり、福田政権は一見、改憲どころではないという状況のように見える。しかし、来年１月にリミットがくる新テロ特措法を再び期限切れにするような失態は、アメリカの手前、絶対に許されない。民主党を抱き込んで自公民で派兵恒久法を制定する動きが国会「対決」の陰で着々と進んでいる。
冷戦終焉後のグローバル資本主義と日本多国籍企業の展開を背景に支配層の改憲策動は、小泉政権下でアフガン、イラクでの米軍支援というところまで進んだ。しかし、自衛隊を実際に戦場に派兵してみて、支配層は、憲法９条の壁の厚さを改めて思い知らされた。憲法の建前上、自衛隊は「戦闘地域」には入らない、「武力行使と一体化した行動」をとらないといわざるを得なかったからである（名古屋高裁判決はこの二つの言い分がウソであることを自衛隊の実際の行動で検証した）。自衛隊を召集したアメリカから見れば、給水活動や土木工事をやり、英軍や豪軍に護衛される自衛隊は足手まとい以外のなにものでもない。ブッシュは小泉のプレスリー踊りをニコニコ眺めていたが、腹の中は煮えくり返っていたはずだ。この壁を突破するためには、憲法の「改正」をどうしても実現しなければならない。安倍前首相は、まさにその最適任者であった。こうして２１人の自民党首相では始めて任期中の改憲を公約にかかげて安倍氏は颯爽と首相になった。しかし、その改憲イケイケが逆に改憲のスケジュールを狂わせることとなった。
構造改革のスピードを自民党と競い合い、改憲でも歩調を合わせていた民主党が、昨年の参議院選挙を前に突然「変身」した。小沢代表と民主党の党内非民主主義がなかったらこんな変身は無理であったろう。民主党の選挙公約は反構造改革であり、テロ特措法延長反対、イラク自衛隊の即時撤退であった。これで、民主党は参院第一党となることができた。この選挙の意味は大きかった。構造改革、改憲という９０年代以来の支配階級の要求に対し、国民世論が国会の議席というかたちではじめて待ったをかけたのだ。保守二大政党の枠を踏み破った民主党にアメリカが強い怒りを示し、小沢代表が慌てて雑誌『世界』に論文を書き、福田首相と「大連立」の会談をやったが、反構造改革、反安倍改憲で選挙に勝った民主党は後戻りできなかった。しかし、福田自民党は小沢代表のメッセージを見逃さなかった。
自民党改憲戦略にとってまずやらねばならないことは、民主党との関係修復である。道路や後期医療でいくら対決していても、改憲のためには、民主党を抱き込まなければ一歩も進まない。まず手をうったのが鳩山由紀夫幹事長、前原誠司副代表の「新憲法制定議員同盟」の役員就任（３月４日）である。民主党の幹部を改憲同盟の幹部にすえて、改憲に向けた自民・民主一体の動きを修復することになった。超党派の「新世紀の安全保障体制を確立する若手議員の会」は４月２３日、国会内で約３年ぶりに総会を開き、自民党の中谷元・元防衛庁長官、民主党の前原誠司前代表、公明党の上田勇広報委員長の３人を新たに世話人代表に選んだ。 自民党の山崎拓元副総裁は４月２３日に東京都内で開かれた山崎派政策セミナーで講演し、自衛隊を常時海外派兵できる態勢をつくる自衛隊海外派兵恒久法（一般法）について、今通常国会会期末までに要綱をまとめ、秋の臨時国会で成立をはかるとのスケジュールをした。これは単なるアドバルーンではない。来年１月の新テロ法の期限切れから逆算した考え抜いたスケジュールである。自民党、民主党で海外派兵恒久法の摺り合わせが水面下ですでに始まっているということだ。
これら一連の動きは、自民党議員が大量に欠席して民主党の新テロ法の対案を参院で否決、廃案となるのを防ぎ（共産・社民の反対で否決となる可能性があった）、衆院で継続審議扱いとした時からの予定の行動である。派兵恒久法をめぐる護憲派のたたかいが、秋の臨時国会に向かっての当面の一大焦点となってきた。
冷戦終焉後のグローバル資本主義と日本多国籍企業の展開を背景に支配層の改憲策動は、小泉政権下でアフガン、イラクでの米軍支援というところまで進んだ。しかし、自衛隊を実際に戦場に派兵してみて、支配層は、憲法９条の壁の厚さを改めて思い知らされた。憲法の建前上、自衛隊は「戦闘地域」には入らない、「武力行使と一体化した行動」をとらないといわざるを得なかったからである（名古屋高裁判決はこの二つの言い分がウソであることを自衛隊の実際の行動で検証した）。自衛隊を召集したアメリカから見れば、給水活動や土木工事をやり、英軍や豪軍に護衛される自衛隊は足手まとい以外のなにものでもない。ブッシュは小泉のプレスリー踊りをニコニコ眺めていたが、腹の中は煮えくり返っていたはずだ。この壁を突破するためには、憲法の「改正」をどうしても実現しなければならない。安倍前首相は、まさにその最適任者であった。こうして２１人の自民党首相では始めて任期中の改憲を公約にかかげて安倍氏は颯爽と首相になった。しかし、その改憲イケイケが逆に改憲のスケジュールを狂わせることとなった。
構造改革のスピードを自民党と競い合い、改憲でも歩調を合わせていた民主党が、昨年の参議院選挙を前に突然「変身」した。小沢代表と民主党の党内非民主主義がなかったらこんな変身は無理であったろう。民主党の選挙公約は反構造改革であり、テロ特措法延長反対、イラク自衛隊の即時撤退であった。これで、民主党は参院第一党となることができた。この選挙の意味は大きかった。構造改革、改憲という９０年代以来の支配階級の要求に対し、国民世論が国会の議席というかたちではじめて待ったをかけたのだ。保守二大政党の枠を踏み破った民主党にアメリカが強い怒りを示し、小沢代表が慌てて雑誌『世界』に論文を書き、福田首相と「大連立」の会談をやったが、反構造改革、反安倍改憲で選挙に勝った民主党は後戻りできなかった。しかし、福田自民党は小沢代表のメッセージを見逃さなかった。
自民党改憲戦略にとってまずやらねばならないことは、民主党との関係修復である。道路や後期医療でいくら対決していても、改憲のためには、民主党を抱き込まなければ一歩も進まない。まず手をうったのが鳩山由紀夫幹事長、前原誠司副代表の「新憲法制定議員同盟」の役員就任（３月４日）である。民主党の幹部を改憲同盟の幹部にすえて、改憲に向けた自民・民主一体の動きを修復することになった。超党派の「新世紀の安全保障体制を確立する若手議員の会」は４月２３日、国会内で約３年ぶりに総会を開き、自民党の中谷元・元防衛庁長官、民主党の前原誠司前代表、公明党の上田勇広報委員長の３人を新たに世話人代表に選んだ。 自民党の山崎拓元副総裁は４月２３日に東京都内で開かれた山崎派政策セミナーで講演し、自衛隊を常時海外派兵できる態勢をつくる自衛隊海外派兵恒久法（一般法）について、今通常国会会期末までに要綱をまとめ、秋の臨時国会で成立をはかるとのスケジュールをした。これは単なるアドバルーンではない。来年１月の新テロ法の期限切れから逆算した考え抜いたスケジュールである。自民党、民主党で海外派兵恒久法の摺り合わせが水面下ですでに始まっているということだ。
これら一連の動きは、自民党議員が大量に欠席して民主党の新テロ法の対案を参院で否決、廃案となるのを防ぎ（共産・社民の反対で否決となる可能性があった）、衆院で継続審議扱いとした時からの予定の行動である。派兵恒久法をめぐる護憲派のたたかいが、秋の臨時国会に向かっての当面の一大焦点となってきた。
