プロメテウスの政治経済コラム

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6カ国協議  そろそろ再開? 米朝シンガポール協議の中身は?

2008-04-16 15:45:40 | 政治経済
北朝鮮からの核計画の申告内容で暗礁に乗り上げていた6カ国協議がそろそろ動き出す気配だ。
16日付の韓国紙・韓国日報は、北朝鮮が今月末までに核計画の申告書と別途文書を米国や6カ国協議議長国の中国に提出し、米政府も同時にテロ支援国の指定解除を保証する報告書を議会に提示することで米朝双方が一致したと報じた。韓国政府筋の話として伝えた。同紙によると、こうした核申告とテロ支援国指定解除に関する日程は、先に米朝首席代表がシンガポールで会談した際に合意しており、ブッシュ大統領も最近、これを承認したという(時事通信2008/04/16-10:53)。
フリージャーナリストの田中宇さんは、「4月8日、シンガポールで、アメリカのヒル国務次官補と、北朝鮮の金桂寛(キム・ゲグァン)外務次官が会談し、北朝鮮の核開発疑惑に関し、米朝間で非公開の合意がなされ、覚書が取り交わされた」という(田中宇「北朝鮮から“ねつ造する権利”を買ったアメリカ」(田中宇の国際ニュース解説 2008年4月15日)。

北朝鮮の核兵器開発疑惑は、いくつもの話が長期にわたって複雑に絡まっていて理解が難しいが、北の核疑惑は、「プルトニウム」と「ウラン」と「核技術の海外譲渡」という3つのテーマにわけることができる(田中宇 同上)。
「プルトニウム」に関しては、北朝鮮が1980年代から稼動している寧辺(ヨンビョン)の小型原子炉と再処理工場でプルトニウムを製造し、それで核爆弾を作って2006年10月に地下核実験を行ったが、起爆装置が稚拙で一部しか爆発せず失敗したという経緯だ。昨年の6者協議で、北朝鮮は作ったプルトニウムの総量を発表することで合意し、昨年11月に北朝鮮は「30キロのプルトニウムを作った」と、米朝2国間協議の場で米側に開陳した。しかし米側は「もっと作ったはずだ」と言って、北朝鮮の開陳を6者協議の合意事項の履行とみなすことを拒否した。北朝鮮は「本当のことを開陳したのに、それを事実と認めない米側が悪い」と怒り、この問題は暗礁に乗り上げた(田中宇 同上)。
「ウラン」に関しては、パキスタンの「核の父」と呼ばれているカーン博士が、ウラン濃縮によって核兵器を作れる施設と技術を北朝鮮に譲渡したと、米当局が1990年代末から主張していた。その後2002年10月、米朝2国間交渉で、北朝鮮がウラン濃縮を行っていることを、北の代表であるカン・ソクジュ(姜錫柱)外務次官が認めたという話が大々的に報じられ、これ以降「北はウラン型核兵器開発も行っている」というのが「事実」(真相は不明)として定着したアメリカは「証拠を持っている」と言うばかりで具体的にはなにも出さず、北朝鮮は「ウラン型の核開発はやっていない」と反論する水かけ論が続いた(田中宇 同上)。
3つ目の「核技術の海外譲渡」は、昨年末から急に問題になりだしたポイントだ。昨年9月6日、イスラエルの爆撃機がシリアの軍事施設を空爆した。イスラエル側では「シリアが北朝鮮の技術支援を受けて建設中だった核兵器開発用の原子炉を空爆した」という話が出てきた(イスラエル政府は攻撃対象について何も発表せず)。シリア政府は「空爆されたのは、使われていない軍事施設であり、核関連の施設ではない」と反論したが、この事件を機に「北朝鮮がシリアに核兵器技術を譲渡したに違いない」という疑惑が、米政界などで問題になった(田中宇 同上)。

田中宇さんは、各種の情報を総合して《一つ目の「プルトニウム」については、アメリカは、北朝鮮が開陳した「30キロ製造」を事実として容認することにした。 2番目の「ウラン」と3番目の「対シリア核技術供与」に関しては、アメリカが主張をまとめて文書にしたものを、北朝鮮が認知することで、解決することになった》のではないかと推測する《北朝鮮は、自国としてはウラン濃縮と対シリア供与について積極的に認めるつもりはないが、アメリカが「2点を認めたら、米朝関係を正常化してやる。テロ支援国家リストから外し、経済援助を再開する」と言うので、2点は事実ではないが認知することで取引した》というのだ(田中宇 同上)。
原則を崩さない北朝鮮に対し、ブッシュ政権が米国国内を説得する妥協点を模索していることだけは確かである。

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