プロメテウスの政治経済コラム

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イラク派兵の陸自幹部 「赤旗」に真情を吐露 日米政府の改憲衝動と正反対の実体験

2007-01-22 18:45:25 | 政治経済
憲法第9条2項は、国民から国家に対して戦力不保持と交戦権の否定を要求している。9条によって、米軍と一緒になって海外で武力行使することができないのだ。サマーワの自衛隊はゲリラの掃討に参加できなかったばかりか、他国の軍隊によって守ってもうこととなった。軍事力が外交におけるプレゼンスのすべてと考える安倍にとっては耐えられないことである。こうして改めて9条改憲に情熱を燃やすことになった
集団的自衛権の容認は米軍の世界的再編にとっても喫緊の課題である。ラムズフェルド国防長官(当時)は、2005年秋の日米安保協議委員会で「自衛隊はボーイスカウト」だといって集団的自衛権を行使できない自衛隊に対する苛立ちを隠さなかった

しかし、明文改憲には時間がかかる。そこで安倍は「二本建て路線」(渡辺治一橋大学院教授)をとろうとしている。すなわち一方で9条明文改憲のスピードアップを図りつつ(通常国会での国民投票法案成立はその第一歩)、他方での「集団的自衛権行使」の解釈見直しという二本建て戦略である。たとえば、従来、個別的自衛権の行使として進めてきた後方支援の活動に上乗せして、米軍の後方支援の最中に米軍への攻撃があった場合、応援として軍事行動をとることを合法化することなどである。

「赤旗」のインタビューに応じたイラク派兵の陸自幹部は、まさに日米政府が破壊をめざす障碍物こそが自衛隊を守ったと語っている(「しんぶん赤旗」同上)。
制服幹部は、自衛隊員から一人の犠牲者も出すことなく任務を遂行できた背景として、自衛隊独自の対応を別にして二つの要因をあげた。一つは「日本ブランド」。第二次世界大戦で敗れ、広島・長崎への原爆投下などの深刻な戦災にあいながら、自動車、家電製品に象徴される世界第二位の経済大国にまで復興したアジア人の国、日本へのイラク人の共感。二つ目は憲法9条の存在そのものである。
同幹部は「自分たちは米軍などとちがって、海外での武力行使を日本の憲法が禁じていることを一生懸命に説明した。イラクの人たちもそれを理解してくれた。そういうイラクの人たちによって自衛隊は結果的に守られたんです。その意味で憲法九条の存在の大きさを改めて実感した」と語った。
制服幹部は、米軍による「掃討作戦」、武装勢力による「テロ」などでイラク市民の犠牲が連日のように続くバグダッドを「向こうは地獄だ」としたうえで、憲法九条への思いを込めて改めて真情を吐露した。「自衛隊員として憲法を議論できないが、(イラクの体験からも)自分としては憲法九条は変えないほうがいいと思う」

紛争の解決を軍事力ではなく、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼」して,外交によって自国の「安全と生存を保持しようと決意した」憲法の崇高な理念は21世紀の世界諸国民の導きの糸として実現されようとしている。これが、人類の世界史の発展方向である。世界の軍事同盟がその解消・役割の軽減に向かっているとき、憲法改正してまで「日米同盟」を強化する方向に動く時代錯誤のおろかさを制服幹部の実体験が見事に証明している。

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