日本航空インターナショナルは、育児・介護休業法に基づく深夜業務の免除申請をしたママさんスチュワーデスに対し見せしめ、嫌がらせとしか思えない仕打ちで、月に一、二日しか仕事を与えず、あとは無就業=無給ということで、一、二日分の月給しか与えなかった。これは、真夜中家に子どもだけを残さないで、子育てと仕事を両立させたいというママさんスチュワーデスを使い勝手が悪いからと事実上排除するものである。多くの乗務員が「月数日分の給与では生活できない」と申請をあきらめ、航空の安全に必要な熟練した乗務員が退職を余儀なくされることがしばしばであった。
育児・介護休業法19条は、小学校就学前の子どもを養育中の労働者が申請した場合、深夜勤務(午後10時から午前5時)を免除するとしている。日本航空の言い分は、免除すると書いてあるが代わりに昼間の仕事を与えよとはいっていないということだ。東京地裁の土田昭彦裁判長は、訴えていた女性客室乗務員4人について、深夜勤務時間をはずして月10日前後の乗務を命じることは可能だったと指摘し、相当分の賃金支払いを命じた。判決では、客室乗務員は労務を提供する意思があったが、会社側が拒絶したと指摘。乗務しない日を無給日とする労働協約を結んだJALFIO(JAL労働組合、連合加盟)の組合員には、月5―13日(おおむね10日前後)の乗務を指示しているにもかかわらず、訴えていた客室乗務員(日本航空キャビンクルーユニオン)に(月一、二日しか就業させないのは不当であり)同程度の乗務を指示することは可能であったと断じた(「しんぶん赤旗」2007年3月27日)。
育児・介護休業法の趣旨はなにか。会社が使い勝手が悪いからと権利を行使した労働者から仕事や賃金を奪う無法が許されてよいのか。1999年施行以来はじめて同法の趣旨を問う判決となった。
損害保険最大手の東京海上日動火災保険株式会社で保険募集に従事する「外勤社員」を七月から廃止するリストラ計画について、東京地裁(難波孝一裁判長)は26日、正当性がないとして撤回を命じる判決を下した。
全日本損害保険労働組合日動火災外勤支部の佐藤修二委員長ら四十六人が「制度廃止は、事実上の解雇に等しい」として中止を求めていたもの。保険金不払いに続いて雇用問題でも、損保トップの社会的責任が厳しく問われることになった。
外勤社員は、地域限定で保険募集に携わる正社員のこと。佐藤さんらは東京海上と合併前の日動火災の時から外勤社員として働いてきた。外勤社員制度存続が合併の条件であったにもかかわらず、同社は、合併からわずか一年後の2005年10月、「不採算」を理由に921人が働く外勤社員制度を07年7月から廃止すると通告。会社をやめて保険代理店になるか、大半は既存代理店に出向する配転を選ぶかを迫った。代理店になれば現在と同じ保険募集を維持しても、年収は平均31%もダウン。代理店出向でも売り上げを二倍にしないと現在の賃金水準を維持できない。損保トップ企業が、いっそうの儲けを目指して外勤社員を切り捨てる挙に出たのだ(「しんぶん赤旗」同上)。
東京海上日動火災は損保最大手で、規模、売り上げとも2位以下を大きく引き離す、赤字などと無縁の会社である。会社の言い分は「経済合理性の観点で企業が判断したのだから高度の必要性がある」と言うだけ。儲けのために憲法や労働法、判例法理は邪魔だといわんばかりの態度を取り続けた。判決では、外勤社員が職種限定の契約であることを認め、正当な理由もなく契約内容を変更することはできないと指摘。制度廃止によって「大幅な減収が見込まれ、転居も伴う異動もあるなど生活上の不利益が大きく、正当性が認められない」として、七月以降も外勤社員としての地位にあることを認めた。
労働者側弁護団は、労働法制改悪がねらう「就業規則による労働条件の不利益変更」を認めず、大企業のリストラに事前差し止めを命じたことでも大きな意義があると記者会見で語った。
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