プロメテウスの政治経済コラム

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拉致問題解決の努力をぶち壊す安倍首相「慰安婦」発言  ご主人のアメリカを怒らせてしまった!

2007-03-26 20:46:04 | 政治経済
93年7月の総選挙で当選したばかりの安倍首相の面倒をみたのは、同年8月に発足した自民党「歴史・検討委員会」であった。「歴史・検討委員会」はアジア太平洋戦争について、侵略戦争でない、聖戦だったと総括し、南京大虐殺や「慰安婦」はでっち上げだとする自民党などの歴史歪曲の理論武装をした委員会である。
「戦後、占領政策と左翼偏向に基づく教育の影響力の大きさを思い知らされる……次代の青年や子供達に自国の歴史に対する誇りも、日本人として生きる喜びももたらすことの出来ない教育は、間違っているといわなければならない。まして、一方的に日本を断罪し、自虐的な歴史認識を押しつけるに至っては、犯罪行為と言っても過言ではない」(歴史・検討委員会編『大東亜戦争の総括』展転社)というわけだ。
安倍は委員会の奥野誠亮元文相をはじめとする「長老」たちに歴史歪曲を学び、「若手」議員のリーダーとして育てられた(俵義文『安倍晋三の本性』金曜日2006)。

国家に殉ずる国民を育てる、国権第一のいわゆる「伝統的国家主義」思想は、偏狭的ナショナリズムにつながりやすい実は安倍の最大の弱点はそこにある。安倍の思想の本来的特徴は、偏狭的ナショナリズムではない。卑屈なまでの親米がそれを示している。グローバル経済システムのもとで、国家主義は、多国籍大企業の経済活動と調和的でなければならない。日本についていえば、国家主義も、保守主義も二人のご主人―米国と財界そして共通の基盤である新自由主義―と親和的でなければならないのだ。ところが彼の支持基盤のコアの部分には、このことが理解できない「靖国派」の輩がいる
内閣支持率の続落で、「どうせ落ちるなら、やりたいことをやる」(首相周辺)という心境になったのか、それとも「靖国派」の本性が出たのか、安倍首相は、この現代の国家主義、保守主義が備えなければならない基本まで忘れてしまったようだ。

“日本は本当に過去の侵略戦争を反省しているのか”という批判はこれまでは、中国や韓国など直接の侵略と植民地支配を受けたアジア発であった。ところが今回は、アメリカの議会とマスメディアが先頭をきって日本政府の対応を批判するというアメリカ発の様相をみせ、欧米諸国にひろがっている。アメリカ議会もマスメディアもいままでは、日本がかわいい子分であることを意識して、対日批判を抑制するのが常であった。この間の連続的な厳しい対日批判は、安倍首相のあまりにも時代遅れの国家主義に違和感、危険性を感じたのだろう。
問題が深刻化しているさなかの16日の「慰安婦」問題での民主党議員の質問主意書にたいする安倍首相名の答弁書は、「政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかった」とし、怒りに追打ちをかけた。
ニューヨーク・タイムズ紙(十七日付)は、この答弁書をとりあげ、「日本が第二次大戦中の性奴隷への関与を再否定」と報じ、シーファー駐日米大使の「私は慰安婦の証言を信じる」「彼女たちは強制的に売春を強要されたのだと思う。つまり、日本軍にレイプされたということだ」との発言を引用して、安倍首相の立場を非難した「安倍首相は、旧軍によって恐怖を強いられた多くの女性に、拉致被害者にたいするのと同じ同情を持てないでいる―ロサンゼルス・タイムズ紙(3月18日付)は、日本政府は拉致問題では「北朝鮮を非難する」が、「従軍慰安婦」問題では「強制を否定している」とのべ、拉致問題で日本政府の立場を支持する人たちを困惑させていると批判した(「しんぶん赤旗」2007年3月26日)。日本政府は日本人の人権侵害については声を大にするが、自国の行為による外国人の人権被害には無感覚であるという安倍首相の「人権感覚」を問題にし始めたのだ。

世界では、「従軍慰安婦」問題と拉致問題の二つは、関連(リンケージ)していると認識されるようになってきたのだ。拉致問題の解決には、国際社会の理解と支援が不可欠である。だからこそ、日本政府はアメリカ政府をはじめ国際社会に訴え、支援を求めてきたのではなかったのか。安倍首相はその努力を一瞬にしてぶち壊してしまった。もはや首相の資格はないといわざるを得ない。

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4 コメント

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ご本人はどうなんでしょうか (そまん)
2007-03-27 18:36:25
いや~普段にもまして、この記事とプロメテウスさんのコメントには、完全かつ全面的に同感です。
しかし、だからこそ一方でプロメテウスさんが「韓国の領土を侵略して奪い取れ」という理解しがたい論陣をはっておられるのは、実に実に理解に苦しみます。
日本軍慰安婦の問題を通して過去の日本のアジア侵略を上記のように強力に批判していながら、韓国=アジアに対する新たな侵略を扇動するというのは、少なくともその面では安部のダブルスタンダードを批判できないのでは?
たとえ、小島のひとつやふたつでも、他国の領土を奪い取るというのは「侵略」であるという当然の理解をしていただきたいと心から思います。
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返事 (e-hori)
2007-03-27 20:24:24
コメント有難うございます。なにか誤解があるのか、他のプロメテウスさんでしょうか。私に限れば、思想的に新旧いずれの国家主義とも無縁であり、韓国の領土侵略で論陣をはったこともありません。
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Unknown (a)
2007-04-02 13:31:59
とにかく慰安婦問題については、小林よしのり著「戦争論2」の「総括・従軍慰安婦」を読んでみてほしい。
あらゆる関連本の中で一番良い。
この問題の全容も把握できる。


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(a)さんへの返事 (e-hori)
2007-04-02 21:13:22
ご苦労様です。あなたのようなコメントをアホの一つ覚えといいます。小林よしのりをださないと反論できないようでは底が割れてますネ。
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