プロメテウスの政治経済コラム

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普天間問題  米軍が「県外」を拒否する理由  海兵隊の「抑止力」について真剣な議論を

2010-04-22 18:44:42 | 政治経済
日本共産党の志位和夫委員長が昨日、ジョン・V・ルース駐日米国大使と会談したとき、普天間基地に関して大使は、現行のキャンプ・シュワブ案がベストで実現可能なものと考えていると重ねて表明した。いまや、普天間基地問題の解決の唯一の道は、移設条件なしの撤去しかないのだが、米側が沖縄に拘るのは、普天間のヘリ部隊は地上部隊の運搬手段、ロジスティックス(logistics)の要となっているからだ。普天間のヘリ部隊が遠く離れてしまったり、なくなってしまうと沖縄米軍の訓練計画、作戦計画を一から見直すことが必要となる。これが、米軍が「県外」を拒否する第一の理由である。日本側の普天間無条件返還の「壁」は、支配層や大手マスコミが常に持ち出す「抑止力」論である。しかし、その「抑止力」論の中身たるや、きわめて雑駁なムード以上のものではない。大体、私たちは、在日海兵隊が日頃何をしているのかほとんど知らない。海兵隊の「抑止力」についてもっと真剣な議論が必要だ。沖縄の海兵隊の実態は、沖縄に基地を固定化する愚かさを示している。

 鳩山政権が米軍普天間基地ヘリ部隊の「移転」有力候補地とする鹿児島県徳之島で18日、反対集会が開かれ、島内人口(約2万6千人)の約6割にあたる1万5千の人々が総決起した。鳩山政権の「移設先探し」は、完全に行き詰まり状態である。ところで、徳之島案について米側も地上部隊と遠距離になるなどとして拒否している。ヘリ部隊と地上部隊は一体的な運用のため65カイリ(約120キロ)以内の距離に配置する必要があるというのだ(徳之島は約200キロ離れている)。普天間のヘリ部隊は地上部隊の運搬手段、ロジスティックス(logistics)の要となっているので、ヘリが徳之島から飛んでくるのを待っていたのでは、訓練計画に支障をきたすというわけだ。普天間基地には輸送・汎用・攻撃の各種ヘリと空中給油機など合計71機が配備され、米軍が全地球に張り巡らした侵略戦争の中継基地の役割を果たしているのだ。

 米軍が沖縄に固執する理由は、基地が集積しているので、効率的に各種の訓練ができ、作戦行動をより即応的に発動できるということだ。さらに、沖縄は、気候もいいし家族が住むインフラも整っている。そのうえ、日本政府は思いやり予算や米軍への特権付与で面倒をみてくれる。結局、米軍にとって、最も居心地が良いのが沖縄なのだ。しかし、日本の支配層や大手マスコミは、このような事の真相には、一切触れない。ただ漠然と「抑止力のために」と言い続けてきただけだ。しかも、その抑止力の中身については一切具体的に説明しないのだ。
柳沢協二・元安全保障担当の政府高官は、まず、「抑止力」というが、何に対する抑止力かという点を問題にする。柳沢さんは、あくまで、抑止力というなら、「日本防衛」の抑止力でなければならないが、その観点から考えると、果たして海兵隊が抑止力かどうか、根本的な疑問があるという。「海兵隊はいつでも、世界のどこへでも出動する。特定の地域に張り付くような軍種ではない。したがって『沖縄かグアムか』という問いに軍事的正解は存在しない」(「朝日」2010年1月28日)。
海兵隊は地球規模で出撃する軍隊であり(最近ではアフガン、イラクへ真っ先に出撃した)、「日本防衛」を専門にするような軍隊ではないということだ。

 「抑止力」だから海兵隊は必要だといっても、軍事専門家は「日本防衛」のための抑止力としては位置づけていないのだ。
とすれば、どのような「抑止力」か。「沖縄の海兵隊はアジア太平洋の全域に常に短時間で出せる態勢を維持し、さらに他地域から展開してくる兵力を受け入れる態勢を持つことで抑止力が働く」「前方基地としての沖縄は、米国のアジア太平洋戦略にとって不可欠な重要拠点になっている」というのだ(森本敏・拓殖大学教授)。
海兵隊の役割がそういうものであるとすれば、なぜ沖縄かということについて、合理的に説明できない。森本さんは、「即応戦力の拠点がハワイ以外にグアムしかないのと、グアム、沖縄と3つあるのとでは、運用の柔軟性が違う」という。しかし、そんなことを言い出したら、基地はもっとあった方がいいということになる。北朝鮮有事に即応することを想定すれば、沖縄より佐世保とか対馬にあった方がいいし、台湾海峡のことを想定すれば、沖縄のなかでも下地島にあった方がいいということになる(松竹伸幸「続・抑止力を考える・3 」)。

 米軍の「抑止力」に縋ろうとすれば、米軍基地は多ければ多いほどいいということになる。極端なことを言えば、日本中、米軍基地だらけだったら安心だということだ。漠然と「北朝鮮脅威論」、「中国脅威論」を振りかざすのではなく、日本の安全保障はどうあるべきかの議論が必要だ。私は、在日米軍基地こそが、北朝鮮脅威、中国脅威の原因となっており、米軍がアジアから手を引くことが、アジアの国々が相互に安心して暮らせる道だと考えている。いずれにせよ、海兵隊の日本への駐留には大いなる疑問があると考える

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1 コメント

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Unknown (アリエス)
2010-04-22 20:04:33
柳沢とかいう奴一人が言ってることを鵜呑みにしてご高説ですか。
だったら何で鳩山さんやその取り巻きは、そのように主張しないんですかねー。
納得いく説明が欲しいなー。

> 私は、在日米軍基地こそが、北朝鮮脅威、中国脅威の原因となっており
さすがにこれはキチガイとしか言えんわ…。
チ ベ ッ ト
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