プロメテウスの政治経済コラム

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新テロ法案 自公が採決強行  わけの分からぬ妥協を勧める「朝日」社説

2007-11-13 18:46:09 | 政治経済
衆院は13日午後の本会議で、インド洋での海上自衛隊の給油活動を再開させるための新テロ対策特別措置法案を自民、公明両党の賛成多数で可決した「朝日」は、「給油新法―接点を探れぬものか」と題する社説で、給油支援継続に疑問を投げ掛けながら、一方で政策協議による妥協を勧めている(「朝日」11月13日)。確かに問題によっては、政策協議による妥協が成立することもあるだろう。しかし、新テロ法案による給油支援はやるべきかやらないのかの二者択一しかなく、中間の妥協点が成り立つ問題ではない。「対テロ戦争」の本質を正確に掴んでいないから、わけの分からない論議になってしまうのだ

新テロ特措法案をめぐる衆院での審議などを通じて、四つのことが明らかになった。(1)新テロ特措法案が報復戦争支援法であること(2)テロ根絶逆行法であること(3)報復戦争支援を担う組織・部隊が疑惑まみれ(4)委員会審議の最中に、自民・民主両党が審議日程まで無視して密室で党首会談をおこない、恒久法づくりについて基本的に合意したことの4点である(「しんぶん赤旗」11月13日)。
新法案による補給対象は、「空爆を含むあらゆる米軍活動の支援」にならざるをえない。米軍が「海上阻止活動」だけでなく、対アフガニスタン、対イラク作戦を一体で進めているからだ。政府も複数の任務につく艦船への補給となることを認めている。
「テロ」に戦争で対応することは、軍産複合体や石油資本などの儲けが目的であり、もともと「テロ」根絶を目的にはしていない。だから、テロに戦争で対応してきたことが、アフガン情勢の泥沼化をつくりだしているのだ。いま防衛省・自衛隊に必要なことは、守屋武昌前防衛事務次官と軍需専門商社との癒着が、政治家や米軍再編をめぐる利権疑惑に広がる様相をみせているもとで、それらの徹底究明である。福田首相が民主党の小沢一郎代表との密室協議で、自衛隊の海外派兵をいつでもどこでも可能にする恒久法まで議論したことは、きわめて重大である。自衛隊の海外派兵の問題は、国連決議がある無しの問題ではないからである。

朝日社説は、「世論は割れている。朝日新聞の調査では、給油活動再開について『必要だ』が43%で、『必要ではない』が41%。ほぼ互角である。活動停止は日本の立場に悪い影響があるという声が50%だった。何らかの貢献策は必要だと思うが、給油がその回答なのかどうか、判断しかねている様子がうかがえる」という。これは、「朝日」自身の立場でもある。給油活動が、アメリカのテロ報復戦争への支援であり、報復戦争を支援することが、どういうことかはっきりと分かっていないのである。
これまで幾多の紛争地で国連の治安回復や武装解除に取り組んできた元アフガン武装解除日本政府特別代表の伊勢賢治・東京外国語大教授は、「自衛隊の活動を継続したり、地域復興支援活動(PRT)に(自衛隊を)出すことは、実に、バカげたこと」と明快である。伊勢氏は、アフガニスタンの現状を踏まえると、給油継続で米国への忠誠を示し続けたい自民党も、国連決議のあるISAF(国際治安支援部隊)に参加したいという民主党も、どちらの選択肢も的外れであると一蹴する理由は、いずれを選択しても、アフガニスタンの安定と戦争終結には結びつかないことが明らかだからだ。
伊勢氏は、現在のアフガニスタンの最大の問題は、治安の悪化にあると指摘する。アメリカとその有志連合が展開するテロ掃討作戦のOEF(不朽の自由作戦)も、国連決議に基づいて各国が展開するISAF(国際治安支援部隊)PRT(地方復興チーム)も、対テロ戦争は、治安の回復には何の役にも立っていない大規模な掃討作戦は必ず、一般市民の犠牲者をだし、テロやタリバンを強化する。これでは、いつまで経っても治安は回復しない。伊勢氏はまた、これまでは日本には非軍事の分野でも、貢献できることが少なくなかったとも言う。現在アフガニスタンはOEFによる二次被害(一般市民への被害)が広がる中、米軍をはじめとするOEF参加国に対する市民の怨念が蓄積している。しかし、アフガニスタンから遠くの彼方にあるインド洋での無料ガソリンスタンドしかやっていないため、アフガニスタン国内では日本は加害者ではないという「美しい誤解」があったと言うしかし、今回の給油継続をめぐる騒動でこの「美しい誤解」をぶち壊してしまった。日本がアメリカOEFを支援していることが、アフガン国内に知れ渡ってしまったからである(マル激トーク・オン・ディマンド 第342回2007年10月19日)。

アメリカの対テロ戦争は、国際社会の人道・復興支援を妨げる障害物である。民生支援と戦争継続は両立しない。新テロ特措法案による給油支援はやるべきかやらないのかの二者択一しかなく、中間の妥協点が成り立つ問題ではない。新テロ特措法案には廃案の選択肢しかないのだ。

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1 コメント

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朝日の世論調査 (わたなべ)
2007-11-13 20:58:50
>>『必要だ』が43%で、『必要ではない』が41%。ほぼ互角である。
朝日の記事はよく読まない限り
「必要だ」が上回ったとは気づかないものでしたな。
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