プロメテウスの政治経済コラム

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「生活扶助基準に関する検討会」  最後の命綱も「下に下に」と切り下げ

2007-11-12 18:50:19 | 政治経済
厚生労働省が「生活扶助基準に関する検討会」なるものをあたふたと立て続けに開催し、最後の命綱である生活保護費の切り下げを目論んでいる。安易かつ拙速な生活保護基準の引き下げが、福田政権のもとでも、小泉「構造改革」=「骨太方針2006」を引き継ぐ形で進められているのだ。生活保護基準は生活保護適用世帯のみならず、連動するさまざまな基準の引下げにもつながり、国民生活全般、とりわけ低所得世帯の生活を直撃する。引き下げの論拠は、毎度おなじみの「下に下に」である。生活保護水準よりも低い生活をしている世帯がおるではないかというのだ。

厚生労働省は、本年10月19日、学識経験者によって構成される「生活扶助基準に関する検討会(第1回)」(以下「検討会」という。)を開催した。同省のホームページで検討会の設置と開催が発表されたのは同月16日であり、それから僅か3日後の突然の開催であった。その後、10月30日に第2回検討会が開かれ、11月8日には第3回検討会が予定され、「平成20年度予算編成を視野に入れて結論が得られるよう検討する」こととされている「生活扶助基準に関する検討会」は、厚生労働省社会・援護局長の私的研究会とし設置され、これまで三回開催されたわけだが、開催3日まえにようやく時間と場所を告知するという姑息なやり方をしてきた。厚生労働省社会・援護局長の中村秀一氏は、社会保障の市場化・営利化に先鞭をつけた人物として関係者の間では悪名高い。社会・援護局長としての中村氏は、障害者福祉にまで応益負担を持ち込んだ障害者自立支援法の制定の国会審議の際、「これからの福祉は金で買うものだ」と言い放ったのだ。

2006年(平成18年)7月に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」(「骨太方針2006」)は、生活保護の削減のために、(1)生活扶助基準の見直し、(2)母子加算の廃止、(3)級地の見直し、(4)持ち家を担保にするリバースモーゲージ制度の導入―という四つの検討課題を掲げ、すでに07年度には母子加算の縮小・廃止とリバースモーゲージ導入を強行した。今回、残された基準そのものの見直しに着手したのである。第1回「検討会」の議事次第及び配布賃料によれば、「骨太方針2006」が「生活扶助基準について、低所得世帯の消費実態等を踏まえた見直し」及び「級地の見直し」を行うことを基本方針とし、「早急に見直しに着手し、可能な限り2007年度に、間に合わないものについても2008年度には確実に実施する。」ものとしているので、期限を区切って、2008(平成20)年度予算編成に間に合うように検討会の結論を得ることが至上命題だと言っている。厚生労働省は、基準引き下げ、もしくは構成部分の一部据え置き・切り上げを織り交ぜながら総額としては抑制するという結論を先に持っており、検討会はそのための「アリバイ作り」のためにあたふたと開催されているように思われる。

上記第1回「検討会」の配付資料は、生活扶助基準の見直しについて、「生活扶助基準は、一般国民の生活水準との関連においてとらえられるべき相対的なもの」であり、「具体的には、年間収入階級第1・十分位の世帯の消費水準に着目することが適当」としている。厚生労働省が、生活保護を受給していない一般低所得者層(全世帯を収入の多い順に並べて十の階級に分けた場合に最も少ない階級に属する世帯)の消費支出統計と現行生活保護基準とを比較し、その均衡を図るとして、現行生活保護基準の引き下げを目指していることは明らかである。小泉・安倍「構造改革」によって、貧困と格差が拡大し、現行の生活保護水準以下の絶対的貧困世帯=ワーキングプア世帯が550万から600万世帯に達するといわれている(後藤道夫「ワーキングプアと国民の生存権」『経済』2007年8月号)。わが国では保護世帯に対する強いStigma(恥辱)意識の強制や違法な窓口規制が広汎に行われているため生活保護の捕捉率が極めて低く、生活保護基準以下の収入で生活する世帯が多数存在する。とりわけ勤労世帯では、まず生活保護の対象とならない。かかる世帯の消費水準との均衡を理由として生活保護基準を引き下げることは、「負のスパイラル」として、生存権保障水準を際限なく引き下げていくことにつながる。「公平性」を口実にして、福祉を「下に下に」と切り下げていくやり方だ。憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」の基準が、このままではどんどん引き下げられる。

基準引き下げ「先にありき」とばかりに、年末までのわずかな期間で結論を引き出すことは、余りにもひどいではないか。憲法や生活保護法が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」とはどのような水準なのか、現行の基準が人間らしく生きるためにふさわしいのかをこそ審議すべきだ(「しんぶん赤旗」11月11日)。

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1 コメント

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Unknown (ドロンジョ)
2007-11-13 19:05:29
はじめまして。
あいさつもそこそこに、キレさせてください。

厚労省の役人は人間をなんだと思っているんでしょうね!?
薬害事件への対応だけでも腹が立つのに。

機械なんですよ、連中は。
軍人と言った方がいいかもしれない。

あんな連中に厚生(生活を豊かにする、と変換のときに意味が出ていた)の仕事を任せるのはもうムリ。

医療、福祉って国民の、いえ、文明国の生命線じゃないですか? どうして日本という国はアメリカのいいところをまねせずに、悪いところだけを選りすぐってまねるんでしょう!

こうなったら不満はあるけれど、次の選挙ではいったん、民主党に入れて、それから民主党右派を叩いていくしかないですね。解散ですよ、解散!
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