プロメテウスの政治経済コラム

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消費税増税を福田首相に迫る「朝日」社説  あるべき税制を語らないマスコミ

2007-11-22 17:51:20 | 政治経済
本日(11月22日)付「朝日」社説は「消費増税―首相は正直に語るべきだ」と題して、政府税制調査会や自民党の財政改革研究会が、折角、社会保障財源としての消費税増税の必要性を打ち出したのに、実施時期や税率を明確にできなかったのは、あいまいな態度をとる福田首相のせいだと消費税増税を首相に迫っている。そこにあるのは、財政改革といえば、消費税増税という思考停止の大マスコミ=支配階級の僕の態度である。なぜ国民の立場に立った税制改革論議をしないのか!

政府税制調査会(香西泰会長)は20日、「抜本的な税制改革に向けた基本的考え方」とする答申をまとめた。答申は、社会保障財源としての消費税増税の必要性を打ち出した。政府税調が消費税増税の必要性にふれるのは三年ぶり。答申は、「消費税は、税制における社会保障財源の中核を担うにふさわしい」とした上で、社会保障費を「消費税率を引き上げていくことによって賄うとの姿勢を明らかにすること」を求めている。答申は、配偶者控除や配偶者特別控除、扶養控除の「見直し」にも言及。給与所得控除については「今日の経済・社会状況に適合するように再構築すること」を求めた。また、公的年金等控除の「適正化」も求めている。一方、法人税については、「法人実効税率のさらなる引き下げが求められている」と提言。また、研究開発減税などの政策減税について、「効果的な活用に重点を置く必要がある」と述べ、大企業優遇税制については、いっそうの拡充を求めている(「しんぶん赤旗」11月21日)。
消費税の税率を二ケタにするとともに、中・低所得層の増税をはかる、他方、「企業活力」の観点から、大企業に対してはさらなる減税をはかる―まさに小泉「構造改革」路線の踏襲である財界は、今後の年金・医療などの財政支出増が、決して企業の負担増に結びつかないような年金制度や税体系の仕組み=構造改革をめざして、包括的抜本的「税制改革」に着手したのだ。

自民党の財政改革研究会(会長・与謝野馨前官房長官)は21日、消費税を社会保障財源に使途を限定した「社会保障税(仮称)」に改組し、2015年度に向けて消費税率を現行5%から10%程度に引き上げることを柱とする報告書をまとめた。報告書は、社会保障給付費が「将来にわたりわが国財政を大きく圧迫する要因となっている」として、今後も「給付面での効率化・適正化を引き続き推進する」と福祉のいっそうの切り捨てを提言。同時に、「歳出削減のみに頼った財政健全化は、社会保障等の国民への適切なサービス供給…に支障をもたらす恐れがある」とのべ、「歳出改革と一体的に歳入改革にも取り組む」と、引き上げ率と時期を明示して、消費税の増税に踏み込んだ。具体的な引き上げ時期は「自民党税制調査会で論議する」(園田博之座長)としているが、09年度には、基礎年金の国庫負担率を現行の三分の一から二分の一に引き上げることが決まっているため、報告書は「安定財源確保」のため「早期に税制上の措置を講じる」として、早ければ09年度税制改正で増税に着手する必要があるとしている(「しんぶん赤旗」11月22日)。

消費税は、税調答申がいうように、社会保障の持続可能性を支えるのに「ふさわしい財源」であるか。低所得者ほど重い負担を強いられる逆進性をもつ消費税は、年金をはじめとする社会保障の財源としてもっともふさわしくない税金ではないか。消費税は、生活していくうえで最低限必要な生計費には課税しないという税制の根本原則を踏みにじる。無収入の子どもや老人でも生きている限り、負担しなければならない。所得ゼロの人間の消費税率は無限大である。税率の高いヨーロッパ諸国では、生活必需品の税率はゼロまたはきわめて低率に設定している。しかし、答申は軽減税率については「極力単一税率が望ましい」とのべ、生計費課税を当然としている。よく知られているように、価格に税を転嫁する大企業は、消費税をまったく負担しない。企業が納める消費税額は「売り上げにかかった消費税」から「仕入れにかかった消費税」を差し引いた金額になる。大企業が仕入れで支払った消費税は、売り上げにかかった消費税(製品価格に消費税を上乗せし、消費者に転嫁した消費税)から差し引かれてしまい、大企業自身の負担になることはないのだ。“年金財源に消費税を充てる”という財界の主張は、現行の厚生年金保険料が、労働者と企業との折半になっているのを企業の保険料負担をゼロにし、これを消費税に置き換えることで、企業負担を逃れることを狙っているのだ。

「朝日」社説は、現在の税制改革が財界の構造改革要求から出てきたものであることに一言も触れない。社会的現実のよって来るところを分析し、真実を民衆の前に提示するのがマスコミの仕事ではないのか。支配階級の僕である政府税制調査会や自民党の財政改革研究会を激励し、消費税増税を即時明言しない福田首相を責めるということは、自らが支配階級の僕であることを証明するものだ。

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