プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

9条改憲に向かって「国民投票法案」の動き急

2006-03-17 20:38:19 | 政治経済
2006年度の予算案衆院通過とともに、憲法改定の必須の条件整備としての「国民投票法案」の成立をめざす動きが活発化してきました。自民、公明両党は14日、国対委員長会談を開き、改憲手続きを定める国民投票法案の今国会会期内での成立を目指す方針を確認し、後半国会での重要課題としました。当面は衆院憲法調査特別委員会での論点整理の協議を優先させながら、法案をまとめる予定です。自民党の船田元特別委員会理事(同党憲法調査会長)は4月上旬にも法案を提出したい意向を示しています。国民投票についてのNHKの世論調査では、「よく知っている」3%、「ある程度知っている」24%、「あまり知らない」48%、「まったく知らない」18%となっています。66%の人がこの法案についていまのところあまり知らないという状況です。『知っている』人の中でも『早く法案を成立させるべき』23%に対して、『時間をかけて議論すべき』『法案は必要はない』があわせて76%でした。改憲派の「国民投票法案」にかける狙いを注視しなければなりません。

日本国憲法は、第96条で憲法改正の手続を定めています。これは二段構えになっています。第一段階は、衆議院、参議院それぞれの総議員の三分の二以上の賛成で「憲法改正案」を発議する。第二段階は、その改正案を国民投票にかけてその過半数の賛成を得る。承認を経たときは、現憲法と一体のものとして国民の名で天皇による改定憲法の公布となります。改憲派にとって、国民投票のやり方を定める国民投票法の制定は事前にやっておかなければならない前提条件なのです(憲法論議として自民党・新憲法案は、現憲法の根本原則を覆すものなので現憲法と一体のものとしてに当らないすなわち96条改正の埒外という議論があります)。

先月、大阪市内で開かれた公開討論会で、改憲勢力の代表は「憲法改正がもう目の前にきている。その中で手続き法を整備する大きな責任がある」(船田元・自民党憲法調査会長)、「改憲内容の議論は詰められてきており、タイムリミットは近い」(枝野幸男民主党憲法調査会長)、「九条を最大の論点として加憲論議をすすめているが、その筋道を定めるべく早期に成立させたい」(斉藤鉄夫公明党衆院議員)と、国民投票法案は「九条改憲」のためのものであることをあけすけに語っています。

改憲勢力は、一方で、9条改憲の動機を隠すため「憲法改正の手続きと憲法改正の内容とは直接関係ない。国民投票法案は、中立・公正な投票ルールをつくるだけ」などと言っています。なぜ、彼らが憲法改定――そのための国民投票法を急ぐのか。それは米国が、アメリカの世界戦略に同盟軍=自衛隊を参加させることを急いでいるからです。
最近の政治情勢は、憲法改定の狙いが米国とともに海外で戦争をする国づくりにあるということをいよいよはっきり示しています。
一つは、自民党の「新憲法草案」にみられるように、憲法改定案を具体化してみたら、結局、「自衛軍」なるものの明記と海外での武力の行使がその核心だったことがはっきりしてきたこと。もう一つは、「米軍再編」の動きのなかで、米軍と自衛隊が海外で一体となって軍事活動を行うという方向が、日米で共同して目指されていることが明らかになったこと――です。

このような中で、憲法改定に向けた条件づくりを一歩すすめようというのが最近の国民投票法案をめぐる動きです。私たちは、9条改憲に連動した国民投票法案の動きをきびしく監視し、「国民投票の制度くらいあってもいいのでは?」といった甘い誘いの奥にある狙いをしっかりと見極めなければなりません。


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