プロメテウスの政治経済コラム

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イラク開戦4年  世界から「米軍撤退を」の声  際立つ日本政府の思考停止

2007-03-20 18:59:22 | 政治経済
米CNNテレビが9―11日に行った世論調査では、イラクに駐留する米軍の撤退について、「即時」が21%、「一年以内」が37%と、過半数の58%が早期の撤退を求めた。イラク戦争開始四周年(20日、米国時間19日)を前にした17、18の両日、米国ではワシントンやロサンゼルスなど各地で、米国民の声を無視し戦争政策を続けるブッシュ政権に抗議する大規模なデモ・集会が行われた。2日間の反戦行動は一千カ所に上った。国防総省(通称ペンタゴン)に向けて行われたワシントンの2万人デモでは現役兵士やイラク帰還兵が行進の前方で隊列をつくり、「今すぐ兵士たちを帰せ」「ブッシュ(大統領)やチェイニー(副大統領)を(議会が)弾劾せよ」と訴えた。
イラク戦争で息子を亡くしたシンディ・シーハンさんは、法を無視してイラク戦争・占領を進めるブッシュ大統領を「キング・ジョージ」と呼び、「アメリカでは、法を超越する者はいない」と批判。「国民こそが政策決定者だ」と語り、「ブッシュ大統領とチェイニー副大統領の弾劾」を要求した。現役兵士の間でイラク反戦署名運動を進めるジョナサン・ハット氏=海軍兵士=は「兵士たちは入隊時に『海外、国内のあらゆる敵から憲法を守る』と宣誓した」と述べ、「われわれは今、イラクを破壊し、イラクの市民を殺し続け、米兵を犠牲にし続ける」ブッシュ政権という「国内の敵とたたかっている」と語った(「しんぶん赤旗」2007年3月19日)。

欧州は四年前、イラク戦争をめぐって分裂。現在の欧州連合(EU)27カ国でみると、15カ国の政府が世論の反対を押しきって、ブッシュ政権の呼びかける有志連合に加わり、派兵した。しかし親米派与党が選挙で敗北したスペインやイタリアをはじめ、有志連合を離脱してイラクから撤退する国が相次ぎ、今年2月末には米国の最大の同盟国である英国も部分撤退を発表するに至った。現在、イラクに部隊を残留させている国は英国を含めて8カ国で、開戦当時から半減。しかも英国の発表に合わせてデンマークとリトアニアが今年秋までの撤退を、ルーマニアも大半の部隊撤退の意向を明らかにした。ポーランドも年内いっぱいで現地の任務を終えるとしている。
有志連合は米国を含む当初の38カ国から半減。16カ国が完全撤退し、韓国を含め5カ国が撤退・縮小を計画しており、兵力を削減せず駐留を継続している国は17カ国だけになっている(「しんぶん赤旗」2007年3月19日)。

イラク戦争とは、ブッシュ政権がイラクのフセイン政権を倒す目的ではじめた侵略戦争であったことは、いまや誰の目にも明瞭になったといっていいだろう。国連憲章のもとで許されない軍事覇権主義であり、国連安保理事会が開戦を認めなかったのは正解である。
「フランスは2003年にイラクで軍事的解決はないと強く主張した。2007年でもこれは真実だ」(ドビルパン仏首相)
「ドイツは正当な理由をもって対イラク戦争に反対した。残念ながら、いまイラクでは、われわれが懸念していたことが実際に起こってしまった」(シュタインマイヤー独外相)(「しんぶん赤旗」同上)。

異常なのは日本の政治指導者である。小泉首相(当時)はいち早く開戦を支持。国連憲章にもとづく平和秩序よりも「日米同盟」が大事であるからだ。「日米同盟」最優先以外に判断基準を持たない安倍首相は、最近のブッシュの兵士増派についても、いちはやく「良い成果をあげることを期待する」といい、盲従ぶりを示した。
政府は7月に期限が切れるイラク特措法を二年間延長し、7月以降も航空自衛隊の米軍支援を続けるつもりである。安倍首相の態度は、アメリカ議会のなかでさえ米軍撤退が大問題となり、軍隊を送ってアメリカのイラク政策を支援してきた国が次々に軍隊を撤退・縮小しているなかで、世界に日本政府の思考停止ぶりを晒すものである。 政府と国民は違うことを示さなければならない。

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