プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

オバマ外交 前向きなチェンジを世界の歴史的変化につなげるのは世界の人民運動

2009-06-09 20:12:47 | 政治経済
「核兵器のない世界」の追求を述べたオバマ米大統領のプラハ演説(4月5日)に続き、世界の大きな歴史的変化を印象付けるニュースが、先週相次いで報じられた。一つは、6月4日のカイロでのオバマ演説であり、もう一つは、6月3日の米州機構(OAS)でのキューバ復帰決議である。オバマ外交には、「中身のある大きな政策変更はない」、「信じられるのは言葉でなく行動」という評価もあるが、世界を動かすのは、世界の人民の運動である。オバマの前向きなチェンジをチャンスととられて、どんな小さな変化にも働きかけ、促進させることがいま世界の人民運動に求められている

4月5日のオバマ米大統領のプラハ演説は、(1)米国が「核兵器のない世界」――核兵器廃絶を国家目標とすると初めて明示したこと(2)広島・長崎での核兵器使用が、人類的道義にかかわる問題であることを初めて表明し、その立場から核兵器廃絶にむけた責任について語っていること(3)「核兵器のない世界」にむけて諸国民に協力を呼びかけたこと――の三つの点において世界の核兵器廃絶運動を大きく前進させる歴史的内容を持つものだった。
このチャンスをすばやく捉えて、日本共産党・志位委員長は4月28日、オバマ大統領に(1)核兵器廃絶のための国際条約の締結をめざして、国際交渉を開始するイニシアチブを発揮すること(2)来年のNPT再検討会議において、核保有国による、核兵器廃絶への「明確な約束」を再確認することを求める、書簡を送った。
オバマ政権が具体的な行動にどうでるかは、すべてこれからである。しかし、志位委員長宛返書のなかで、「どうすれば私たちが最良の方法で核兵器のない世界を実現できるかについての考えを伝えた」ことへの感謝が表明され、「この問題にたいするあなたの情熱をうれしく思う」と書簡を評価し、「思慮に富んだあなたの書簡に重ねてお礼を申し上げる」と言っているのだから、言葉だけではすまされないだろう。
核兵器問題の帰趨を決めるのは、世界諸国民の世論と運動である。来年のNPT再検討会議にむけて、昨年の原水爆禁止世界大会がよびかけた、「すみやかに核兵器禁止・廃絶条約の交渉を開始し、締結する」ことを求める国際署名が現在取り組まれている。この署名運動をはじめとした核兵器廃絶をめざす草の根の世論と運動が、世界各国で、わけても被爆国・日本でどれだけ広がるかが、決定的に重要である。米国の核の傘にしがみつき、世界の変化についていけない麻生・自公政権は、この点だけでも、政権担当の能力をもはや持ち合わせていない

オバマ大統領が、6月4日のエジプトのカイロ大学での演説でイスラム世界との共同を呼びかけたことに域内外で反響が広がっている。特にイスラエル・パレスチナ問題への言及部分は注目されている。
同大統領は、イスラム教徒とイスラム過激派を明確に区別し、「米国はイスラムと決して戦争しない」と言明。その一方で、アフガニスタンのイスラム過激派は世界の脅威であり、イスラム世界と協調して打破する必要があると訴えた。同時に、オバマ氏は「いかなる政治制度も他国に押し付けることはできないし、押し付けるべきではない」「米国は各国の主権と法の支配を尊重していく」と、イラクへの侵略を反省したかのような発言もしている。
米国が今後、どこまで本気で帝国主義的政策を改めるかは、わからない。しかし、イラク戦争の失敗は、米国大統領をしてこのような発言をさせるところまで追い込んだのだ。
私は、オバマ中東外交の本気度を測る尺度は、パレスチナ・イスラエル問題だと思っている。イスラレルの無法を許してきた最大のスポンサーは米国であった。オバマ氏は、米・イスラエルとの友好関係やユダヤ民族の悲劇的歴史についてふれながらも、イスラエル建国の過程でパレスチナ人が追放や住居破壊などの被害を受け、60年におよぶ占領下でも同様の人権侵害に耐えてきたと主張。「両者の願いを実現する唯一の解決策は、イスラエル人とパレスチナ人が平和で安全に暮らすことのできる2国家共存であり、それはイスラエルとパレスチナ、米国と世界にとっての利益でもある」と訴えた。最近オバマ氏は、イスラエルに対し「米国との良い関係を保持したければ、西岸での入植地拡大をやめて、パレスチナ国家の建設を助け、アラブ諸国と和解せよ」と迫っている、という。パレスチナは、一部の熱烈な支持者を除いて、世界の世論から無視され続けてきた。パレスチナ人の真っ当な要求を実現しないで世界の歴史的前進はない。 オバマ大統領が言葉だけではなく、行動でどれだけイスラエルを抑えることができるか、世界は注目している

南北米大陸34カ国による米州機構(OAS)が6月3日、革命後のキューバを追放した1962年の決議を無効にする新決議を全会一致で採択した。中南米地域がもはや米国の指図で動く「裏庭」ではなくなったことを改めて浮き彫りにするものだった。米国は当初、キューバが「国内の民主化」など米国の求める条件を満たさない限り、復帰を認めない方針を押し通す構えだった。1962年の排除決議に同調した多くの中南米諸国がいまや米国を孤立に追い込んだ。「中南米諸国はそれぞれの国に適した経済、政治、社会モデルをつくる権利を持っている」(ベネズエラのマドゥロ外相)。

世界の歴史的変化は、時間がかかるし、時にはジグザグがあり一直線ではない。しかし、理不尽なものは、永久に続かない。帝国主義も資本主義社会も同じである。世界の人民運動は、オバマの前向きなチェンジを世界の歴史的変化につなげていくだろうし、また、つなげていかねばならない

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。