プロメテウスの政治経済コラム

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臨時国会と民主党 「対立軸」をいうが肝心なところで与党と二人三脚

2006-12-23 19:24:47 | 政治経済
国民にとって真剣に議論されなければならないのに、臨時国会で短時間の審議で強行された悪法がいくつかある。政府・自公とともに、肝心なところで与党と二人三脚を組んだ民主党の重大な責任を指摘せざるを得ない。例えば「防衛省格上げ」法。賛成したのは、自民・公明・民主であった。同法案は自衛隊の海外派兵を本来任務(主要任務)にし、防衛庁を「省」に格上げするもの。「日本防衛」が、自衛隊の任務であった筈なのに海外に出て行くことも主要任務だと言う。明らかに憲法理念の破壊である。これだけの重大問題なのに、衆院では15時間、参院では12時間のスピード審議であった。テロ特措法、イラク特措法も本来任務なのは、問題といいながら、民主党は結局、与党提案の採決日程に同調。法案にも賛成してしまったのである。それどころか、「(海外派兵のための)装備品や人員の配置等についての適切な整備」を政府に要求する付帯決議まで提案、自衛隊を本格的な「海外派兵隊」へ転換することを主張したのである。

外資系企業による政治献金を解禁する政治資金規正法の改悪も、自民、公明、民主、国民新党の賛成で成立した。衆院で、2時間、参院で1時間半の超スピード審議であった。これまで「日本の政治や選挙が外国の勢力によって影響を受けることを未然に防止するため」に、株式の50%超を外資が所有する企業の献金を禁止していた。ところが、特別に事情が変わったわけでもないのに、御手洗冨士夫キャノン会長が献金の総元締めである日本経団連会長に就任した途端、正々堂々と献金させろということで、急遽法律改正となった。理由はキャノンの外資比率が50%超前後であるというだけである。民主党は表では、「政党交付金が配分されている現状で、企業団体献金の増額をもたらす改正はどう考えても、国民の理解はえられない」「上場企業からの寄付なら外国勢力の影響を受けないといえるのか」と問題点を指摘しながら、「超スピード審議」で賛成してしまったのである。もう財界献金欲しさのためなら「めちゃくちゃ」(国会関係者)である。東京新聞は、「外資からも献金いただきます センセイの“愛国心”どこへ 国会の植民地化に危ぐも」と題する記事を書いた。

9条改憲の条件づくりとなる改憲手続き法案(国民投票法案)について、法案そのものは継続審議となったが、国会が教基法改悪で騒然となるなかで、自民・公明と民主党との間の共同修正が加速した。もともと改憲という基本方向で与党と民主党に違いはない。早期に改憲手続き法案を成立させ、改憲論議を本格化させたいという思惑は一致している。両者のちがいは、①国民投票制度を改憲に限定するか②投票年齢を20歳以上とするか18歳以上とするか③改憲案の承認の要件を「有効投票の過半数」とするか「投票総数の過半数とするか」―などにすぎない。スケジュールが遅れているのは、衆院憲法調査特別委員会の21人の参考人のうち、積極的に成立を主張したのは、4人だけで、しかもその4人を含め全員が今の与党案、民主党案の問題点を指摘しているように国民は改憲手続き法案(国民投票法案)に積極的ではないのである。特別委員会への反対、廃案を求める請願が75件もあった(しんぶん赤旗2006年12月23日)。

民主党は、教基法改悪反対の広範な国民世論の手前、野党4党との共闘体制をとり、衆参で、政府案に「反対」した。しかし、参院で安倍首相にたいする問責決議案を提出する最終局面で腰砕け、“本音”を露呈してしまった。野党の書記局長・幹事長会談で確認していた首相への問責決議案の提案に、民主党は背をむける態度をとったのである。「読売」15日付によれば、「実は、参院の自民、民主両党は別の『円満採決』のシナリオを水面下で練り上げていた」ということで、会期延長に追い込んだという民主党のメンツを立て、成立させることが既定事実であったようだ。 国による「愛国心」の強制や教育への国家介入を無制限に認める点で、与党と民主党の間にもともと「対立軸」がないことが最後で露呈した(「しんぶん赤旗2006年12月19日)。

こうして、民主党は、小沢代表のもとで「対立軸」路線を打ち出したが、全体を振り返ってみれば、その中身は何もみえず、肝心な点で、自民党・公明党との共同歩調が浮き彫りになった臨時国会であった。これがマスメディアが囃し立てる二大政党制の実態なのだ

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