プロメテウスの政治経済コラム

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日ロ首脳会談  平和条約交渉、予想通り“中身ゼロ”

2019-01-23 18:34:47 | 政治経済

22日夜にモスクワのクレムリン(ロシア大統領府)で会談した安倍首相とプーチン大統領。北方領土問題を含む平和条約締結交渉の進展に向け、多面的な関係発展が重要などと当たり前のことを確認しただけで、領土問題を巡っては、2月中旬にドイツで両国外相による交渉を行う方針などを確認したが、予想通り“中身ゼロ”だった。
プーチン大統領は平和条約締結交渉について「環境整備には長く地道な取り組みが必要だ」と指摘。平和条約は両国の国民に受け入れられる必要があるとして、「多面的、全面的な関係の発展」の必要性を訴えた

両国の国民に受け入れられるというのは、どういうことか。毎週日曜夜のロシア国営テレビの人気ニュース番組「べスチ・ニェジェーリ」は昨年12月20日、2週連続で日ロの平和条約締結交渉を特集、看板キャスターのドミトリー・キセリョフ氏が日ロ間にはロシアと中国との間にあるような友好関係はないとして、真の友好関係構築のためには日本からの在日米軍撤退のような行動が必要だと強調したhttps://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190121-00000001-yonnana-soci)。

領土交渉=日本の戦後処理の出発点は、いわゆるサンフランシスコ平和条約である。米国とソ連が敗戦国(主にドイツと日本)が敗戦によって失った勢力範囲を巡り対立を深めていく中で、米国主導で1951年にサンフランシスコでソ連の参加なしに調印された。中国(中華民国も中華人民共和国も)も南北朝鮮も呼ばれなかった。米国によって選ばれ、招待された国々だけが署名した。

それでも、アメリカはソ連とのヤルタ協定をまったく無視できず、第2条(c)項で「日本国は、千島列島並びに日本国が千九百五年九月五日のポーツマス条約の結果として主権を獲得した樺太の一部及びこれに近接する諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する」と規定した。 放棄して引き渡す相手が誰か、また千島列島の範囲はどこまでかについては一切触れなかった
結局、千島については、1945年9月2日の日本の降伏に続いてダグラス・マッカーサー元帥が発令した一般命令第一号「(ロ)満洲、北緯三十八度以北ノ朝鮮、樺太及千島諸島ニ在ル日本国ノ先任指揮官並ニ一切ノ陸上、海上、航空及補助部隊ハ「ソヴィエト」極東軍最高司令官ニ降伏スベシ 」に基づいてソ連(それを引き継いだロシア)の占領が今日に至っている。ロシアのラブロフ外相が「大戦の結果を認めよ」と言うのはこれらの歴史経過を指す。

ロシアのプーチン大統領は、昨年12月20日に開いた年末恒例の大規模記者会見で、北方領土を日本に返した場合に米軍基地が置かれる可能性について、「日本が決められるのか、日本がどの程度主権を持っているのか分からない」と指摘し、米軍辺野古移設基地建設について「知事が基地拡大に反対しているが、(日本政府は)何もできない。人々が撤去を求めているのに、基地は強化される。みんなが反対しているのに計画が進んでいる」このような対米従属国とまともに領土=国境画定交渉はできないと言わんばかりであった。ラブロフ外相も16日行った年頭記者会見で「日本は先進7カ国(G7)の反ロシア声明に加担し、国連決議でもロシアと反対の投票行動を取っている」とし、日ロ間には、真の友好関係はないと指摘した。

プーチン大統領が、平和条約締結交渉について「環境整備には長く地道な取り組みが必要だ」というのは、日本とロシアとの間の友好・信頼関係の構築がまず先だということを安倍首相に分からせたかったのだろう。

 

 

 


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