菅首相は16日午前の衆院予算委員会で、東電福島第1原発1号機でメルトダウン(炉心溶融)が起きていたことに関して「6~9カ月後に冷温停止」とした東電の事故収束工程表の日程に大きな影響を与えないと答弁した。東電は、工程表を作成するときに、すでに1号機の燃料が破壊されていることを知っていたのだから、当たり前である。罪が深いのは、本当のことを適時に発表しない東電・政府と「公式発表」しか報道しないマスメディアである。 すでに3月末には原子力学会始め、多くの専門家が「1号機の燃料は破壊されて原子炉の下に落ちているだろう」と言っていた。原発問題に限らず、国民は情報収集をマスメディアだけに頼ってはいけない。彼らは、調査報道せず、発表報道をするだけなので、発表者側の情報操作によって、常に、なんらかのバイアスがかかっていると考えるべきだ。
東京電力の清水正孝社長も、16日午後の衆院予算委員会で、炉心溶融が判明した東電福島第1原発1号機について「(安定化に向けた)工程表をしっかり守っていきたい」と述べ、6~9カ月で冷温停止させるとした工程表の日程順守を明言した。
専門家は、水の循環ができなくなると、発熱量、水の蒸発熱、熱容量、燃料の融点や力学的性質などから、破壊までの時間を計算できる。東電は、とっくの昔に(すでに3月時点で)、メルトダウン(炉心溶融)が起きることを知っていた。問題は、どの程度注水効果があるかを見極めるだけであった。
メディアは、さも昨日判ったように言っているが、1号機の燃料棒が破壊されていることが判ったことによって、工程表は変わらない。その理由は東電は工程表を作成するときに、すでに1号機の燃料が破壊されていることを知っていたからである。 メルトダウンが起きても東電はよく頑張っているというふりを見せたいだけである。すでに3月末にはメルトダウンの事実は専門家の間でもはっきりしていたのに事実を伝えないマスメディアは東電に加担した。これで、日本のメディアは調査により事実を報道するのではなく「公式発表」に依存している、 東電は「国民に危険なことを知らせてくれない企業だ」ということがわかった。
一号機は、3月12日午後3時36分、水素爆発を起こしているが、東電は3月11日午後4時36分に注水が出来なくなった時点で予測できなかったのだろうか。水素爆発で大量の放射性物質が漏洩するかどうかは、原子炉の破壊状態によるが、かなり危険だったことは東電も判っていたはずではないか。すぐに避難指示を出さなかった東電・政府そして何も警告しなかったメディアの罪は 重い。
武田邦彦さんは次のようにコメントしている。
1) 菅首相が斑目(まだらめ)原子力安全委員長と福島原発を視察した時にはすでに1号機は破壊に向かっていた。
2) 菅首相は東京に帰った後「原子炉は大丈夫だ」と言っている。
3) このことは、菅首相がウソを言ったか、斑目委員長が間違ったか、それとも福島原発の吉田所長が事実を伝えなかったかである。
4) いずれにしても誰かが原子力基本法の公開の原則を破っている。
東電も政府もメディアも国民の安全や健康にかかわることですら正直でない。この人権無視の日本社会の構造こそが、あらゆる面で、現代の最大の危機であると私には思えてならない。