プロメテウスの政治経済コラム

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外務官僚、核密約文書を破棄、証拠隠滅か ナメられた首相、外相そしてなによりも国民は怒るべきだ

2009-07-11 18:21:44 | 政治経済
これまで、日本共産党の米国調査などで明らかになっていた「核密約文書」とそっくり同じものが日本側では外務事務次官ら外務省の中枢官僚が引き継いで管理し、官僚側の判断で一部特定の首相、外相だけに伝えていたことが先月はじめ共同通信の取材で明らかになっていたが、続いてその一人でもある村田良平氏(1987年7月から89年8月まで外務次官)が実名を出して、密約文書を「引き継いだ」などと認めた。「密約」の存在を否定する政府への批判があらためて噴出している最中、今度は「朝日新聞」(2009年7月10日)によると、01年ごろ、当時の外務省幹部が外務省内に保存されていた関連文書をすべて破棄するよう指示し、証拠隠滅をはかった可能性が高いと言う。米国の公開公文書や関係者の証言で、密約の存在はすでに明らかになっている。それを「存在しない」と国民にうそをつき続け、さらには破棄指示の証言にまで無視を決め込む麻生・自公政権の政権担当能力は、ことここに極まれり、である



(写真)2000年4月の党首討論で不破委員長(当時)が使った核密約原文コピー(「しんぶん赤旗」2009年6月22日)

日米両政府は1960年の安全保障条約改定時に、核兵器を搭載した艦船の寄港や領海通過を日本政府が黙認する密約を交わした。日本の国連加盟も実現し(1956年)、国際的地位も次第に高まりつつあるとき、いくら日本の支配層が唯々諾々だとしても、戦後占領時代の基地体制をそのまま横滑りさせたような「旧安保」の体制を日本に押し付けておくことは、アメリカにとっても世界の手前、なんとか考えざるを得なくなっていた。「旧安保」は、アメリカが必要とするなら日本全土のどこでも基地とし、基地の使用についても何の制限もないという「全土自由基地方式」の条約であった。こんな一方的な基地提供条約は、当時の世界でも類例のないものだった。もう少し、対等であるかのような装いをほどこしながら、自衛隊を将来の「日米共同作戦」に引き込む手当てもしておく、ということが60年安保改定のアメリカ側の狙いであった

アメリカが一方的な基地使用権の押し付けでないとして知恵を絞ったのが「事前協議」方式であった。「岸・ハーター交換公文」と呼ばれているものだ。
「合衆国軍隊の日本国への配置における重要な変更、同軍隊の装備における重要な変更並びに日本国から行なわれる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用は、日本国政府との事前の協議の主題とする」。
しかし、アメリカ側は、はじめから在日米軍の作戦行動についていちいち日本側と「事前協議の主題」とする気など毛頭ない。核兵器を積んだ飛行機や軍艦の出入りも自由。外国で戦闘する部隊の日本からの出撃も自由。――との約束を条約の裏で日本側に認めさせた。
<核兵器の日本への持込(イントロダクション)は事前協議の対象だが、軍用機の飛来(エントリー)、艦船の領海や港湾への立ち入り(エントリー)は「旧安保」どおり自由(いわゆる「核密約」)。軍隊が日本から出動しても、日本からの移動(トランスファー)に関しては自由。>という内容だ。

1967年米原子力空母の日本寄港が問題となったとき、当時の佐藤栄作首相は「作らず、持たず、持ち込ませず」の「非核三原則」をとなえ、心配御無用と胸を張ったものだった。佐藤氏が60年安保改定時の密約を知らないはずがないと思う。自民党政権担当者の無責任さはあきれるばかりだ。歴代自民党政権の言い分は「米政府から事前協議の申し入れがない以上、核兵器の持ち込みはありません」の一点張りである。それが真っ赤なウソであることは、「非核神戸方式」以降、神戸港に一隻の米艦船も入港していないことから明らかだ。そもそも、米政府の戦略は「核兵器の存在は肯定も否定もしない」ということだ。今後も米側から事前協議の申し入れがあり得ないのは明らかだ
在日基地からベトナム、アフガン、イラクに出動しても日本からの移動(トランスファー)に関しては自由の密約があるから、日本国から行なわれる戦闘作戦行動のための基地使用そのものなのに、これまた一度も事前協議の主題となったことはない

(写真)不破委員長(当時)の党首討論=2000年4月(「しんぶん赤旗」同上)

最近、『サンデー毎日』(7月19日号)で中曽根康弘元首相と「世紀の顔合わせ」をした、日本共産党の不破哲三前議長が語っている。「取り決めができて以降、首相が23人、外相は34人。密約を知っていたと指摘されるのは、締結の当事者を含め首相5人と外相6人です。密約を知らされなかった首相や外相は怒るべきじゃないですか
対談を傍聴した山田道子編集長は、「不破氏は誌面で紹介したよりもっと細かく追及。『日本が核問題で世界にモノが言えるようになるためにも、中曽根さんは一肌脱ぐべきだ』と迫ったことを付け加えておきたい」(編集長後記)と書いている。

怒るべきは、密約を知らされなかった首相や外相だけではない。「主権者である国民に対して、政府が重大な事実を隠し、その証拠も処分してしまう。これではとても民主主義とは言えないではないか」(「朝日社説」2009年7月11日)。
真実に直面する意思も勇気もない。ごまかしで切り抜け、自分たちの政治的立場の保身をはかる知恵しかない。自公政権のもとでは、日本の未来がないとつくづく思う。


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