プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

「雇用の三分化」に邁進する「財界」―圧倒的多数は永久に「雇用柔軟型グループ」の運命に

2006-12-01 20:56:33 | 政治経済
「財界」は、派遣労働や請負、パート・アルバイトという身分をつくり、いつでも必要なときに必要な量の低賃金労働力を調達できる仕組みをつくりあげることに邁進してきた。
1995年に「財界」は「新時代の日本的経営」という日経連の提言のなかで、長期雇用はごく少数にして、圧倒的多数の労働者は不安定な雇用形態にするという雇用戦略を打ち出した。これは、労働者を、(A)企業の核となる一握りの幹部候補生(「長期蓄積能力活用型グループ」)、(B)企画・営業・研究開発などの専門部門の労働者(「高度専門能力活用型グループ」)、(C)それ以外の一般労働者(「雇用柔軟型グループ」)、という三つのグループに分けるというものである。そして、常勤雇用(期間の定めのない雇用)は(A)のみにして、それ以外の労働者は「景気変動に柔軟に対処する雇用形態」にするべきだとした。要するに、長期雇用の正社員は一握りのエリートだけで、それ以外は、短期雇用契約で必要がなくなれば、いつでも契約解除でき、必要になれば調達するというように、「使い捨て」自由にするというものである。

この「財界」の「雇用ポートフォリオ」とでも呼ぶべき戦略にそって、大企業は、正社員の雇用を急激に減らして、派遣労働やパート・アルバイトにきりかえてきた。こうして、無権利で、低賃金の、いわゆる不安定労働者(日経連のいう「雇用柔軟型グループ」)が急速に増えているのだ。これらを労働法制面から支えたのが歴代自公政府による労働法の破壊・規制緩和である。
労働者派遣法についても、1999年12月派遣対象業務が原則自由化され、2004年3月から更なる規制緩和がなされた。派遣期間一年の制限が三年に延長され、いわゆる「26業務」については、行政指導による3年の派遣期間制限が撤廃された。製造現場への派遣社員の導入も自由化された。そして、いますべての派遣業務の期間制限を撤廃し、派遣社員を必要なら、長期にわたって無権利で、低賃金のまま固定することを主張しはじめたのだ。経済界は『長期非正規社員』という階層を作り、低賃金の労働力を手厚くプールしたいのだろう」(昭和女子大・木下武男教授)。

自己の労働力を売ること以外に生きる手段のない労働者にとって雇用の安定はなによりも重要である。「労働者を雇う以上は、長期に雇い」「期間を設定するには解雇と同様の理由が必要である」という「常用雇用(長期雇用)の原則」や雇用主の責任を明確にするための口入稼業の禁止(間接雇用の禁止」)は、労働法の最低限の民主的原則である。低賃金のまま一生不安定な状態におかれて、派遣を続けたいと思う者はまずいないだろう。しかし、このまま「財界」の意のままに動く政府のやることに手をこまねいていると日本は間違いなく欧米以上の階級社会になるだろう。

圧倒的多数の労働者を「雇用柔軟型グループ」として社会の下層に滞留させることは、支配階級の一貫した戦略である。いま学校教育では、できる子どもや恵まれた家庭・地域の子どもを優先・優遇する「強者の論理」による教育システムの再編が行われている。将来のエリート(「長期蓄積能力活用型グループ」)と不安定雇用型労働者(「雇用柔軟型グループ」)の区分け・「養成」が子どものときから、すでに始まっているのだ。そして、「負け組」の子どもは、無権利で、低賃金の労働者になることが運命づけられ、彼らのかなりの部分は、やがてよりよい賃金を求めて兵役を希望することになる。アメリカ型社会がどんどん近づいている。

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