プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

儲かったから、オレの税率をさげよ―大企業の横暴を代弁する政府税調

2006-12-02 19:04:36 | 政治経済

税調会長の本間は阪大大学院教授の肩書きを使って、「(税収の)自然増収の一部を財源に、法人課税を手当て(減税)していく」(「毎日」11月7日付)と財界の意向を代弁している。国立の大学院教授が、財界の下僕を勤めて恥ずかしくないのだろうか。企業の業績があがり、納める税収が増えれば社会に還元するのが当たり前だろう。それをまた企業に還元せよという発想はどこからでてくるのか。景気が悪くても良くても“オレたちの税負担には減税しかない”と言っているようなものである。(「しんぶん赤旗」2006年12月2日)。こんなもの公共経済学(本間の専門分野)でもなんでもない。力の強いやつが勝手なことを言っているだけである。

彼らは、なにかというと「わが国企業の国際競争力の強化」を口にするが、日本の大企業の国際競争力はいまでも十分に高いのだ。製造業17業種のトップテン170社中、上位10社に入った日本企業は69社(複数業種であがった社を含む)、実に4割強を占めるのだ。ロボットでは八社、電線・ケーブル、アルミニウム圧延、工作機器、情報通信機器では六社が日本企業である。業種全体の売上高が大きい自動車でもトヨタ(四位)、ホンダ(六位)、日産(七位)が入り、マツダも十二位である(「しんぶん赤旗」同上)。
さらに、彼らが、いかに日本の下請中小企業や労働者を踏みつけにして儲けているかは各国別の営業利益率を見ればはっきりする。トヨタの営業利益率は日本が9・56%、北米6・38%、アジア4・85%、欧州3・35%、ホンダの営業利益率は日本が8・36%、北米6・30%、アジア6・52%、欧州2・21%、東芝の営業利益率は日本が3・51%、北米2・04%、アジア1・45%、欧州0・93%である。労働者の権利が守られている欧州の営業利益率が軒並み低く、政府と一体となって、労働者・中小企業に過酷な「コスト削減」を押し付けることが可能な日本が際立って高い(「しんぶん赤旗」2006年11月22日)。

財務省の法人企業統計によると、資本金十億円以上の大企業の経常利益は2000年から05年にかけて1・5倍に増えた。役員報酬は総額1・7倍、一人当たり1・8倍、株式配当は2・5倍になった。ところが、従業員給与は同期間、総額で0・95倍、一人当たり0・97倍と逆に減った(「しんぶん赤旗」2006年12月2日)。何故こんなことになるのか。給与の高い労働者の雇用を抑制し、低い労働者の比率をどんどん上げているから、個々人の給与は下がっていなくても企業の人件費は総額でも一人あたりでも下がってしまうのだ。ワーキングプアを踏みつけにして特定の企業と特権層の役員・サラリーマンがこの世の春を謳歌しているのだ(尤もそのかなりの部分は、成果を上げることばかり考えてゆとりもうるおいもない精神的には貧しい生活を送っているのであるが)。

マルクスの再生産表式を持ち出すまでもなく、経済の再生産の基礎は消費財部門の消費である。一部特権層を除いて労働者が貧困化すれば、消費の減退は避けられない。しかし、資本主義が国民経済を超えて外延的に発展している限り、直ちに再生産は行き詰まらない。先進国では、新自由主義の席捲でどこの国も労働者階級の貧困化が広がっている。とりわけ日本では社会保障制度のあり方ともかかわってそれが顕著である。ワーキングプアが階級として再生産されるようになったとき、日本の国民経済、社会はどうなるのか。大企業の横暴を庶民の声で抑えながら、同時に経済学徒しての理論研究を怠れない異常な事態が進んでいる。


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