プロメテウスの政治経済コラム

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「防衛省」法案 衆院を通過 武力による国際貢献を望んでいるのはアメリカだけ

2006-11-30 18:53:09 | 政治経済
24日の衆院安全保障委員会の参考人質疑で、軍事ジャーナリストの前田哲男氏は、現行の自衛隊法第三条が、自衛隊の本来任務を“日本防衛”と定めていることについて「憲法九条との関係でギリギリの整合性のある条項としてつけ加えられたものだ」と指摘。海外活動を本来任務に加えることは「自衛隊法の憲法に対する下克上が決定的になる」と批判した。法案に賛成の参考人からも「(国民の中で)省にすべきだという強い議論が果たして起きているのか」と疑問が出され「あわただしく採決が急がれるのは異常な事態」とし、「憲法との関係についての根源的な議論が必要だ。そのような問題点について正面から提起し、議論を」すべきだということだった(「しんぶん赤旗」2006年11月30日)。

よく知られているように日本が国連に加盟申請したとき(1952年6月―実際に加盟したのは4年後の1956年12月)、当時の岡崎勝男外相は、「日本国政府は国際連合の加盟国としての義務を、その有するすべての手段をもって履行する」とする書簡を国連事務総長あてに送った。この中の「有するすべての手段をもって」の文言は明らかに憲法九条を念頭に置いたものである。
たしかに、国連は世界中央政府ではなく、世界の各国が加盟しているだけの存在である。そのために、国際社会の平和維持、秩序回復のために、各国からの派遣軍に頼らざるを得ない場合もある。しかし、言うまでもなく、軍隊を出すことだけが国際貢献でない。国際社会は日本には憲法九条があることをよく知っている。憲法九条が邪魔だといっているのは、アメリカだけで他の国はまったくそんなことをいっていない。自衛隊を海外へ出さないと、国際社会での責任、役割をはたしたことにならいと思い込むのは、自衛隊とその背後の日本の後方支援を自国の戦争に動員したいと考えているアメリカだけを見ているからである。

イラク戦争以降、世界の多くの国々は、ものごとを武力で解決しようしても、しょせん無理だと考えはじめている。中東情勢も徐々にではあるが、アメリカ、イスラエルの武力路線が修正を余儀なくされ始めている。アフガンのNATO軍もいまのままでは問題を解決できないであろう。
そもそも、戦後アジアの人々が、侵略と植民地支配をまともに反省もしない日本を受け入れた根本には、日本の憲法九条の存在があったことを私たちは決して忘れてはならない。自衛隊の海外活動を「本来任務化」するということは、過去の侵略戦争を反省し、二度と戦争をしないと誓ってつくった憲法をふみつけにするものであり、アジアや世界から期待、歓迎されるどころか、警戒の目でみられることは明らかである。

自衛隊法の「改正」で、国際緊急援助活動や国連の平和維持活動(PKO)だけでなく、テロ対策特措法やイラク特措法に基づく活動、周辺事態での後方支援などが国土防衛や災害派遣と同等の本来任務に位置づけられる。「周辺事態」での米軍支援活動を「本来任務」にするということは、日本が攻撃されてもいない段階でアメリカがアジア太平洋地域でおこなう戦争を日本も一緒になって進めることを本業にするということだ。アメリカのイラク戦争を支援することが自衛隊の本業だということは、これからもアメリカの先制攻撃戦争に参加・協力することの表明にほかならない。
世界から期待されてもいないのになぜ自衛隊の海外派兵にこだわるのか。日本の支配階級が日米同盟こそが自分たちの支配力の支柱だと考えているからである。

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1 コメント

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Unknown (自民党支持者)
2006-12-10 09:35:03
あなたに限らず、自衛隊は違憲だという人は憲法9条の条文だけ見て発言しているように思います。確かに自衛隊は9条の条文を見る限り違憲ととるのが普通かもしれません。しかし憲法というのは、人の手によって運用するものなので、世論等により意味するものが変わってくると思います。少なくとも国家としての自衛権まで放棄したものではないと思いますよ。
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