プロメテウスの政治経済コラム

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年越し派遣村「閉村」  事態はよくなったか

2009-06-30 19:07:28 | 政治経済
労組や市民グループが昨年末、東京・日比谷公園に開設し、失職した派遣労働者らを支援してきた「年越し派遣村」が、6月30日で活動を終えることになった。派遣村は当初、年始の1月5日に解散予定だったが、予想を超える多くの人が支援を求めてきたことや、3月末から4月にかけて年度を超えた就労支援の必要が出たことから、実行委員会を存続してきた。実行委員会では今後も、個別相談に応じるための窓口などを維持するという。「閉村」にあたって28日、実行委員会主催の「派遣村」を通して課題を考える全国シンポジウムが東京都墨田区のすみだリバーサイドホールで開かれた。東京・日比谷公園での年越し派遣村から半年。その後、事態はよくなったのだろうか

「『派遣村』全国シンポジウム」には、派遣村の活動に賛同し、北海道から鹿児島まで全国各地で同様の課題に取り組む12の実行委員会の関係者ら約500人が参加した。湯浅誠村長は「職を失うと、住居も失う貧困のスパイラルに陥っている現状を目に見えるようにした結果、セーフティーネットの必要性や、自己責任論に対する見方が変わった」と評価。派遣法の抜本改正や最低賃金引き上げ、生活保護の改善などが急務だとのべた。東京の派遣村は閉じるものの、共同をさらに広げて、「安心でき、くらしやすい社会に変えていこう」と呼びかけた。マツダや三菱ふそうで雇い止めされた期間工や派遣労働者らも「自分も何かやれると勇気をもらった」「『自己責任』にさせない社会にしたい」と発言した。

年越し派遣村に登録した人は505人。年度末に失業した人らを対象にした春の派遣村に来場相談した人124人。このうち実行委員会が住所を把握している260人を対象にアンケートを行った。6月23日までに回収できたのは、年越し派遣村の村民77人、春の派遣村の村民31人の計108人分だった。村に直接相談に来た人計629人に対する回答率は17%。実行委員会は「回答のない人たちの中には、再び貧困の生活をたどっている人もいるのではないかと懸念している」と話す(「産經」6月28日22時26分配信)。
回答のあった108人の約8割に当たる81人が生活保護によって生計を立てていた。失業手当や就労支援金など生活再建の手だてとなる支援の受給者は計12人にとどまっている。半数を超える人に、消費者金融などからの借金があった。さらに、半数近くの人が心や体に何らかの不調や不安を訴えた。
就職できたのは13人(約1割)にとどまっており、55人が就職活動を続けている。面接を10件以上うけても就職できない人が9人いるという。有効求人倍率(0・46倍)をも下回る実績に、実行委では「学歴や過去の職歴などで不利な条件を抱えた人も多いことが理由にあるのでは」とみる。残りの40人は病気療養中などだった。多くが生活保護制度を利用して当面の生活を安定させつつも、相変わらず仕事探しに苦労している実態が浮かぶ(「毎日」2009年6月28日)。

年越し派遣村から半年。その後、事態はよくなったのだろうか
湯浅さんは「相談の電話は今も1日100件かかり、つながらない状況だ」という。作家の雨宮処凛さんも「若い野宿者が増え、自殺も多い。事態はむしろ悪くなっている」と発言している(6月27日のテレビ朝日系「朝まで生テレビ!」)。
厚生労働省が6月30日発表した5月の有効求人倍率(季節調整値)は0・44倍で、過去最低に並んだ前月から0・02ポイント悪化し、最低記録を更新した。また、総務省が同日発表した5月の完全失業率(同)も前月より0・2ポイント上昇の5・2%となり、5年8カ月ぶりの水準に悪化した。雇用情勢は「さらに厳しさを増している」(「産經」6月30日15時30分配信)。
土曜日の午後の上野公園では、二つのボランティア団体が炊き出しを行っている。20日は炊き出しに合わせて1000人を超えるホームレスが列をつくった。「1月ごろから増えだして、6月になってからの数週間は800人を超えるようになりました」と女性スタッフは言う(「しんぶん赤旗」2009年6月27日)。

ボランティアが「これまで聞いたこともない炊き出し人数」という状況で、政治は一体何をしているのか。総選挙を前に、やれ「麻生おろし」だの、「政権交代」だと騒いでいるだけではないか。最低賃金、基礎年金、失業手当、そして生活保護など、憲法25条がいう国民の最低限度の生活を支える仕組みがまったく存在しない1世紀前の資本主義社会を見る思いだ。このようななか、ローカルユニオンに41都道府県134組織1万人以上が結集。「派遣切り」とのたたかいが大きく前進している。国民の生活と権利を守るためには、財界・大企業の横暴勝手とたたかうことが避けられない。総選挙で日本共産党を伸ばし、「ルールある経済社会」へ向かって大きく前進しようではないか。

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