プロメテウスの政治経済コラム

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社保庁「改革」 問題の本質を逸らしはならない 年金運営がますます不安定になる恐れ

2007-05-22 19:24:08 | 政治経済
日本の年金制度の最大の問題は、保険料掛け金に対し、あまりに給付が貧弱であることである。一カ月約一万四千円を二十五年間掛け続けないともらえず、それで給付額は平均四万数千円である。日本の年金制度は、年金で最低生活を保障するというようにはなっていない高度経済成長時代には、元気に働いて年金を受給する頃にはなにがしかのたくわえがあるはず、という前提であった。ところが、「構造改革」路線で貧困層や不安定雇用を増大させているもとで、「保険料が高い」「年金額をあてにできない」年金制度の保険料納付率が低下するのは、当然である。参院選挙に向けて「公務員減らしの“実績”」を上げてみても問題は何も解決しない。

社会保障の根幹をなす年金は、憲法二五条が定める国民の生存権保障であり、企画・立案から執行まで国が責任を持って運営すべきものである。ところが、社会保険庁「改革」関連法案は、社会保障の根幹をなす年金に対する国の責任を投げ捨てるものである。年金は、給付だけでも数十年に及ぶものであり、公正で安定的な運用が何よりも求められる。
社会保険庁を解体し、新たな「非公務員型」の公法人「日本年金機構」を設置することを柱とした社会保険庁「改革」関連法案は、日本年金機構を設置する法案と、年金事業運営関連法案の二つからなっている。法案は、年金の適用、徴収、記録管理、相談、裁定、給付などの業務をバラバラにし、その多くを競争入札で民間委託するとしている。委託業者や従業員は数年ごとに入れ替わることになっている。保険料の長期にわたる確実な記録・管理が必要な事務を数年ごとに入れ替わる業者任せにすれば、保険金の未払いが大問題となっている損保・生保の二の舞になることが十分に予想される。これでは、国民は不安でたまらない。結局のところ、社保庁職員を悪者に仕立て、「民間に任せればよくなる」という漠然とした国民の意識を利用して財界が要求している年金民営化に道を開いただけである。

政府もいまの年金制度で保険料収納率が上がるとは思っていない。そこで無茶苦茶なことを「収納対策」に盛り込んだ。徴収強化のため未納者から国民健康保険証をとりあげ、期限付きの「短期保険証」を出すというのである。年金保険料を納めなければ病院に行くなというにことである。健康を人質に取った陰湿な国民いじめというほかない(「しんぶん赤旗」5月10日)。
年金は本来、老後の生活を保障する制度でなければならい。ところが、いま国民がくらしの先行きで最も不安を感じているのが年金制度なのだ。支給開始年齢の繰り延べ、「百年安心」と偽って、保険料の連続値上げや給付水準の一律引き下げを強行した政府・与党の年金「改革」が、不安と不信の大もとにある。対象者の四割が国民年金の保険料を払っていないなど、現在の年金制度は破綻寸前である。

社保庁からの関連企業への天下り、特定業者との癒着・腐敗、保険料の流用、不正操作―「社保庁を解体せよ」の声は一見もっともなように思える。しかし、社会保障制度に値しないような年金制度の運営を民間に委託してもなにも問題は解決しない。運営事務経費、システム経費はすべて保険料からの負担となる。国営なら保険料を100%給付にまわすことも可能である。
財界は、厚生年金の所得比例部分を民営化し、基礎年金は消費税の増税でまかなうことを考えている。保険料の雇用者負担分を逃れ企業の社会保障負担を減らし、日米保険業界のビジネスチャンスを広げることを狙っている。
安倍・自公政府に期待できないとすれば、国民の声を聞く政府をつくるほかないではないか。

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