プロメテウスの政治経済コラム

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無法キヤノンに反撃  「解雇権乱用」仮処分申請へ 偽装請負告発の元期間社員

2008-10-02 20:50:01 | 政治経済
キヤノンの偽装請負を告発し、同社の期間社員になって11カ月の男性が8月末で解雇された。キヤノンは、宇都宮、長浜、大分など全国いたるところで、偽装請負問題を引き起こし、厚労省労働局の行政指導を受けている。日本経団連の会長・御手洗冨士夫氏はキヤノンの会長だ。儲けのためには、平気で法律違反をする。告発労働者は、権力で容赦なく切り捨てる。記者会見した宮田裕司さん(29)は、「泣き寝入りするのはうんざり。大きく行動に移し、頑張りたい」と語った(「しんぶん赤旗」2008年10月2日)。

キヤノンの偽装請負を告発し、直接雇用されて11カ月後の8月末に雇い止めされた有期雇用の労働者が10月1日、解雇権の乱用で無効だとして解雇撤回を求める仮処分を東京地裁に申し立てた。申し立てたのは、元期間社員の宮田裕司さんで、キヤノン非正規労働者組合の組合員。2006年3月からキヤノン宇都宮光学機器事業所(栃木県)に派遣され、半導体製造装置のレンズ加工などに携わってきた。同年10月に偽装請負を告発。栃木労働局が偽装請負を認定し、07年10月から宮田さんら42人の労働者が最長2年11月の期間社員として直接雇用された。ところが、宮田さんは、作業上の小さなミスを理由に8月末で「契約期間満了」と通告され、一人だけ契約期間の更新がされなかった。
キヤノン非正規労働者労働組合宇都宮支部の大野秀之支部長は、今回の問題について「作業ミスは、製品の出荷に影響のない単純なミス。契約更新を拒否できる理由にはあたらない。組合員は会社のホームページへのアクセスも制限されている。奴隷のような働かされ方だ」と会社側の対応を批判している(「しんぶん赤旗」2008年8月29日)。

キヤノンが偽装請負の行政指導を受けて、とった手は請負労働者を最長2年11カ月の期間社員という直接雇用にすることだった。なぜ、最長2年11カ月か。これは、労働基準法が有期雇用契約の上限を3年にしているからである。3年以内であれば、いつでも自由に雇い止め(事実上の解雇)ができるためだ。3年で雇い止めにする「契約職員」や「期間社員」といった雇用形態は、航空会社のリストラ策として、アルバイト・スチュワーデスが導入され有名となった。更新は2回に限られていて、同じ労働者を3年を超えては決して雇用しない。これまでの裁判例からも3年以上繰り返して契約更新したら、雇い止めのときに整理解雇として争われる危険があるためである(脇田滋『労働法を考える』新日本出版社2007)。

キヤノンは国内の工場など製造現場の派遣労働者を原則ゼロにする方針で、期間社員や業務請負契約への切り替えを進めている。期間社員や業務請負契約にするのは、労務コスト(賃金プラス法定福利費などの附帯費)を引き下げる目的もあるが、最大の眼目は、固定費の変動費化である。不要になれば、いつでも契約期間満了・雇い止め(事実上の解雇)自由な短期雇用労働者は派遣でも、期間社員でも業務請負でもなんでもかまわないのだ。
現在、「契約期間」は、本来の労使を拘束するという機能とはまったく違った機能を果たしている。解雇に対する規制を逃れるために「期間を定めた契約」を最大限悪用する雇用慣行が広がっている。期間を定めた雇用契約では、雇い止め(事実上の解雇)について特別に争わなくても、当事者の意思にかかわりなく、期間満了で契約を終了させることができる。景気変動を見越して6ヶ月以内の短期契約にしておけば、固定費の変動費化を労働者側の抵抗をうけることなくやすやすと達成できる。


有期雇用は、「解雇の不安を常に抱えた雇用」である。現在の非正規雇用の大部分が「有期契約」である。労働基準法で、「有期契約」そのものに規制を加えないと労働者の無権利状態を救うことができない。「有期契約」を原則禁止し、労働者が希望しているのに使用者側からの一方的な契約終了による解雇を制限することが必要だ。
宮田さんの雇い止めは偽装請負の告発に対する報復であり、組合つぶしをねらった不当なものだが、期間社員は最長2年11カ月で雇い止めされることに根本的な問題がある。派遣会社に対する「委託・派遣の打ち切り」自由も含めて、解雇規制回避目的の脱法を許さない労働法制を確立しなければならない。

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