プロメテウスの政治経済コラム

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海自幹部 インド洋派兵の効果を否定  海上阻止活動 「ザルにもならぬ」

2008-10-01 19:01:49 | 政治経済
政府は、新テロ特措法に基づくインド洋での海上自衛隊の給油継続に躍起となっている。ポスターやパンフで宣伝作戦を展開するとともに、全国14カ所で「防衛問題セミナー」を開催する。ところが、第一弾のさいたま市のセミナーでは、首をかしげたくなる主張の連続であったらしい。元インド洋派遣海上支援部隊指揮官の久野敬市・一等海佐(自衛隊千葉地方協力本部長)は、二回派兵された体験に基づき、給油支援活動の実態を紹介。同氏は、海自艦船が活動するインド洋に日本列島がすっぽり入った地図を示し、同海域の広大さを指摘。そこで海自の補給艦一隻が約十五隻の外国艦船に給油していることを紹介した後、「ザルにもならないぐらいだ」と思わずその実態を吐露した(「しんぶん赤旗」2008年10月1日)。

さいたま市のセミナーでの防衛省北関東防衛局の鎌田昭良局長や外務省総合外交政策局安全保障政策課の山本雅史・課長補佐らの講演の要点は、
(1)テロとのたたかいの主戦場はアフガニスタンだ。
(2)アフガンで活動するテロリストの武器や資金を含む流入ルートは、陸路ではなくインド洋だ。小船で移動するテロリストに対し、米国など七カ国の十五隻程度の艦船で海上阻止活動をする。
(3)日本は、それらの艦船が常時活動できるように洋上補給をしている。中断すると日本の地位は低下し、国際社会から孤立する。
ということだ(「しんぶん赤旗」同上)。

(1) について
国際テロ組織アルカーイダとの対決を「テロとの戦い」と呼び、戦争に等しい行為と位置づけたのは正しかったか。米軍部のシンクタンクといえる「ランド研究所」が、テロに「戦争」という観念をあてることで、戦場で問題の解決が見いだせるかのような幻想を抱かせたのは、ブッシュ政権の誤りだったとする報告を出した。報告書は1968年以降に世界で活動した648のテロ組織について、どのようにテロ活動が終息したかを分析した。「政治解決路線への転換」が43%でもっとも多く、「警察や諜報(ちょうほう)当局による取り締まり」が40%で続いた(「産經」2008年9月11日)。
「テロが軍事力によって解決されるケースは、実は非常に少ない」「軍事力に頼った“対テロ戦争”よりも、警察、諜報活動に重点を置く“テロ対策”こそが有効だ」「“対テロ戦争”という勇ましい用語は、アルカーイダが自らを戦士と位置づけることを許してしまう。アルカーイダは犯罪者であり、戦士などではない」
セス・ジョーンズ研究員は産経新聞に対し「継続にせよ見直しにせよ、次期政権は発足後すぐに、対テロ戦争という方法論が正しかったのかどうか、重大な判断を迫られるだろう」と話した(「産經」同上)。

(2) について
テロ勢力は「陸路を使わず」インド洋を経由するというのは、ウソだ。いまアフガンで問題にされているのは、各種の武装勢力が地続きのイラクから流れ込み、増強されていることである。久野一等海佐が吐露したように、海自が給油する15隻程度の外国艦船は日本列島がすっぽり入ってなお余りある広大な海域で海上阻止活動をし、「ザルにもならないぐらい」の効果しかないのが実態である。新テロ特措法成立後の今年2月から6月までの同海域での米軍を中心とする海上阻止活動の成果としてセミナーで紹介されたのは、「麻薬等の押収10件、麻薬押収量約30トン」だけ。アフガニスタンで活動するテロ勢力が捕捉された“実績”はまったくないのだ(「しんぶん赤旗」同上)。

(3) について
海上阻止活動がテロ勢力捕捉にほとんど効果がないのは(2)のとおり。7年も戦争を続け、外国軍部隊が増加の一途をたどっているのに タリバンは全土の八割近くで“復活”。「対テロ戦争」の誤りで米国の国際的地位が低下し、同盟国も含めた米国離れが進み、世界が多極化している(国際戦略研究所「2008年版戦略概観」)のが現実だ。アフガン問題解決の出口は見えない。しかし、最低限、道理のない戦争への加担は直ちにやめることだ。

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