プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

堀江被告に実刑判決  株で儲けてなぜ悪いの? 株取引の経済的本質

2007-03-18 20:35:58 | 政治経済
われわれ年配の人間にとって、株の値上がり益は“不労所得”というのは、いわば常識であった。しかし、グローバル化、新自由主義、金融ビッグバンなどを通じて、自己責任による資産形成の奨励は国策となり、株値上がり益で儲けてなにが悪い、株値上がり益は自己責任と努力の成果だとう風潮が広まるとともに株取引の経済的本質が見失われはじめた。
経済の専門紙であるはずの「日本経済新聞」2005年12月7日付夕刊は次のようにいう。「いくら偶発的なもうけに見えても、情報収集や銘柄選択の努力の成果であり、宝くじの賞金やカジノのもうけとは異なる。・・・株式投資は本来、お金を増やすことが主目的であり、一か八かを狙ってするものではない」「不正なインサイダー取引などに手を染めるのは論外として、株式投資の利益は値下がりなどの大きなリスクをとったことに対する報酬」であって不労所得などではない、というわけだ(宮川彰『「資本論」で読み解く現代の貧富の格差』ほっとブックス新栄2006)。

経済学を少し勉強した人間ならリスクでお金(経済的富)が増えるなどというのは、とんでもないインチキであることを知っている。 金融庁や文部科学省の後押しで中学校、高校で「株式ゲーム」の教材を使った教育が行われているらしい。2006年6月末の「朝日新聞」に17歳の高校生の投書が載った。「『頑張っている人が馬鹿を見ない学校に』と、校長先生が話したそうですが、勉強に励んできた人が馬鹿を見ずにお金を儲けられる世の中になったということではないでしょうか。私自身、株に興味があり、自分なりに勉強したので分かるのですが、株は地道な調査と優れた判断力がなければ絶対に成功できません。・・・頑張って学んだ結果、株で利益を得て生活するのがそんなに悪いことなのでしょうか・・」(宮川彰 同上)―村上氏の「金もうけ、悪いことですか」の思想が学校現場にも確実に影響しているようだ。
努力とか、勤勉とか、才能・才覚をそれだけを取り出していくらひねくり返してみても、資本主義社会の仕組みはわからない。 エンゲルスは先の手紙のなかで、取引所についておよそ次の三点を指摘している。①株取引は過去の労働者搾取の産物である剰余価値の分捕り合戦(再分配戦争)である ②ユンカー(大土地所有者)や、工場主や、小ブルジョアが取引所でひどい目にあって剥ぎ取られても搾取者への味方同情は労働者が直接関心を持つことではない(情け無用)③取引所は、資本主義腐敗のショウウインドウ/社会変革の契機としては直接にわれわれ労働者の関心を引く

労働によって生み出された剰余価値(=経済的富)は、資本家の利潤(金融資本への利子、商業資本の利潤を含む)、地主階級への地代の形態で社会へ分配される。労働者は賃金として労働力の対価を受け取る。経済学が明らかにしたように流通過程からは価値は生まれない(価値が増えるのは労働力の使用=労働の結果である)。株取引はこの分配された労働者搾取の産物=剰余価値の再分配をめぐる分捕り合戦なのだ。
宮川彰さんは、山崎元『投資バカにつける薬』(講談社)のことを紹介している。山崎さんは、金融機関で財テク商品を売っていたプロらしい。山崎さんはズバリ売り手の得は買い手の損、これぞ不滅の真理といっている。「株式投資は本来、お金を増やすことが主目的」などという「日経新聞」のインチキを見事に暴露している
価値が生まれないのに、全員がお金を増やすことなど、絶対にあり得ない。これぞ株取引の経済的本質=不滅の真理なのだ。取引所が、資本主義腐敗のショウウインドウであることも忘れまい。第二、第三のライブドア事件、村上事件が起きてもなんら不思議はないのだ。

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