プロメテウスの政治経済コラム

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辺野古県民投票から一夜 埋め立て反対の民意が示されてもなぜ工事が続くのか

2019-02-25 16:54:52 | 政治経済

県民投票で「埋め立て反対」の民意が示されてから一夜明けた25日午前、沖縄防衛局は埋め立てに使用する土砂の搬出作業を名護市安和の琉球セメント安和桟橋で継続した(https://ryukyushimpo.jp/news/entry-880360.html)。2019年1月24日には、131人の憲法学者が声明を発表し、「(工事の)強行は、基本的人権の尊重、平和主義、民主主義、地方自治という日本国憲法の重要な原理を侵害、空洞化するもの」と批判した。しかし、安倍政権は全く聞く耳をもたない。なぜか。

それは、日本が敗戦と占領期を経て、アメリカの基地国家となり、その体制が今も継続しているからである。サンフランシスコ講和条約第6条で、米軍駐留の継続を認める特別の規定がおかれ、それと連動して日米安保条約と行政協定(地位協定)が結ばれた。1951年1月、日米講和交渉のために、使節団を率いて来日した米国務省顧問ダレスは、使節団の会議でつぎのように発言した。「我々は日本に、我々が望むだけの軍隊を望む場所に望む期間だけ駐留させる権利を獲得できるであろうか? これが根本的な問題である」。

「日本の全区域が、(米軍の)防衛作戦のための潜在基地」であり、米軍の「戦略的配置」と「戦術的配備」のための「無制限の自由」の権利は、アメリカ合衆国側にある――この原則が今も生きており、米軍の治外法権的「基地権」は、日本の空、陸、海に張り巡らされている。ところが、この屈辱的な方式で基地提供を強いられているということを理解している日本人は、米軍の直接占領を体験した沖縄の人びとを除けば極めて少ない。戦後直後から今に至るまで、日本人はアメリカに支配されているという事実から目をそらそうとしてきた。なぜそれができたか。沖縄を除いて、アメリカが象徴天皇体制と日本政府を通じて間接的に日本人を支配してきたからである。こうして、戦争に負けた日本は天皇の上に米国を戴くという「戦後の国体」によって再出発し、復興を成し遂げた。戦前からずっと、日本人には、疑うことなく「国体」に付き従うというマインドがインストールされていたから自然のうちに受け容れられた。

沖縄の人びとは、日米安保と地位協定が日本国憲法の上にあるということを体験的に知っている。131人の憲法学者の声明を見て、何をいまさら子どもみたいな議論をしているかの気持ちだろう。問題は、被支配の現実が見えなくなった多くの本土の日本人である。もともと対米従属は敗戦の結果余儀なくされたものであり、復興のための手段であったはずだが、思考停止のまま「戦後の国体」になってしまった。「戦後の国体」となった対米従属構造を維持することで、権力を保持している安倍政権に代表される日本の支配層と日米同盟の恩恵として高度経済成長を成し遂げたことで、同盟関係を傷つけてまで独立不羈の国になる道にリアリティーを感じない多くの本土の日本人。すでに冷戦は終わり、朝鮮戦争レジュームも今また終わろうとしている。今なら新しい形での「日本の独立」ができるはずだが、思考を停止させられた日本国民が立ち上がるのは、そう簡単ではない。沖縄の闘いから何を学ぶか。


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