プロメテウスの政治経済コラム

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参院選へ  米国・財界追随の傾向を強める菅政権  政治家としてタチの悪い菅氏

2010-06-17 20:34:53 | 政治経済
「奇兵隊」内閣と自ら命名し、逃げ足の速さを誇った菅首相。代表質問のあとの予算委員会質疑も遮って、ボロが出る前に、参院選挙に突入しようと一目散である疑惑を隠し、争点を隠し、正体を隠したまま、マスコミが新首相をヨイショしている間に、選挙をやりすごそうという魂胆である。しかし、菅政権の反国民的性格は、衆参代表質問ですでに鮮明である。鳩山前政権は、ともかくも長期にわたる自民党政治に代わる「政権交代」を目指していたので、新自由主義「構造改革」政治や利益誘導型開発政治、対米従属政治からの転換を含んだ公約を掲げ、その実現に努めようとした。しかし、支配階級の巻き返しに阻まれ、国民の世論に依拠して立ち向かえない弱さから、公約と国民の期待を次々と裏切る行為を重ね、ついに退陣に追い込まれたこれを見た菅直人新首相は、鳩山前首相が悩みに悩んだ問題は、「辞任という形で自らけじめがつけられた」と押し流したうえで居直り、より一層支配階級に忠誠を誓うことで自らの政権を維持する道を選んだ。支配階級の“後ろ盾”を得て『長期・安定』政権をめざす――これこそ自公政権回帰そのものではないのか。要するに自民の“ダメ”ははっきりしたが、民主も菅政権になっていよいよ“ダメ”がはっきりしたということだ

 いよいよ参議院選挙戦がはじまる。鳩山政権の躓きで、国民の間では、“自民もダメ、民主もダメ”の流れがうまれ、その「受け皿」になろうと、「第三極」を自任する「新党」ラッシュが続いていたが、ここにきて民主党が昔の自民党さながらの首相の首をすげ替えて政権浮揚をはかる手に出た。問題はマスコミである。
政権が行き詰まると、首相の首をすげ替えて政権浮揚をはかるのは古くからの自民党の手法である。近くは、安倍、福田、麻生と続いた自・公政権の手法であった。テレビなどのメディアは、政権がなぜ行き詰まったのかを検証することなく、政局の動きと“新政権”への期待を無批判に煽り、この思惑に応えた。今回もメディア、とりわけテレビは民主に呼応し、鳩山→菅の交代劇を応援した。鳩山前首相自身が辞任の原因としてあげた「普天間問題」と「政治とカネ」は辞任で一件落着かのように扱い、この問題の追及はぴたっと止まった。
民主党人事、菅新政権の組閣を通して集中的に報じられたのが“脱小沢”であった。5日から8日にかけての番組表には“脱小沢”の文字が躍る。いわく「脱小沢?人事大胆予測」「脱小沢人事で何ができるか」「脱小沢へ菅新内閣」…あたかも清新な政権が誕生するかのようなイメージが、メディアによって作られたのだ(「しんぶん赤旗」2010年6月17日)。

 菅新政権は清新な政権どころか、鳩山氏のように悩まずあっけらかんと居直り、支配階級に奉仕する政権であることは、衆参の代表質問をつうじても、すでに鮮明である。

 まず沖縄・米軍普天間基地問題。「県内移設反対」という沖縄県民の総意を踏みにじり、名護市辺野古に新基地をつくる、米軍の訓練を全国に分散・拡大する―、こんな「日米合意」を「原則としてしっかり守る」と明言。自己の最近までの発言との矛盾を突かれると「政治家として当然のことだ」と開き直る。悩みに悩んでズルズル決断を引き延ばした鳩山前首相よりよほどタチが悪い。自らがいったことを簡単にひるがえす、自らの県民への「約束」を簡単にくつがえす、これが「政治家として当然だ」という菅氏の資質は政治家として欠格である
マスコミはこのことこそ問題として追求するべきだ

次に、 国民生活と日本経済の問題。菅氏の「強い経済、強い社会保障、強い財政」とは何か
「強い経済」は、多国籍大企業の国際競争力強化によって労働者と国民の生活を苦境に追い込むすでに破綻済みの道である。「大企業をもっと強くする、そうすればその利益がいずれは国民の暮らしにまわり、経済も成長する」―小泉以来の構造改革路線の継続そのものである
「強い社会保障」も看板倒れであることは、小泉構造改革で切り捨てられた社会保障をもとに戻すことすら拒否しているのだから、明白である。後期高齢者医療制度、医療費の窓口負担、生活保護の老齢加算、障害者自立支援法、いくつかの具体的な試金石で質されても、冷酷で無責任な官僚答弁を繰り返すだけである
「強い財政」とは要するに日本経団連が「成長戦略 2010」で要求した「一刻も早い消費税の引き上げ」と法人税の引き下げを実現することである。最近、民主党が米倉弘昌経団連に急接近しているという。直嶋正行経済産業相は16日、米倉氏と東京・大手町の経団連会館で意見交換し、法人税の実効税率引き下げで共闘する方針を確認。国会閉会で政界が参院選モードに入る中、経団連との距離を縮めているという(「産經」6月17日7時57分配信)。

日本のようなアメリカ主権・財界主権の社会では消費税を引き上げても国民の必要費用に使われる前に、彼らによって収奪されるだけである
消費税が、社会全体で必要な費用を国民全体で支え合う観点から重要税目といえるのは、北欧のように名実ともに国民主権が確立している社会での話である。22年間の消費税収224兆円のうち財界に208兆円も収奪され(減税の穴埋めに使われ)て、労働組合がストひとつも打てないような日本社会では、支配階級が栄え、労働者階級と国民の貧困が一層進むだけである

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