プロメテウスの政治経済コラム

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景気は底を打ったか 家計を犠牲にしたままの「上方修正」 麻生政権の景気対策の特徴

2009-06-13 20:31:17 | 政治経済
総選挙を控えて、政府・与党は「景気底打ち」宣言にやっきである。麻生首相は選挙目当ての15兆円バラマキ補正予算について、「景気の底割れを防いで、かつ、その内容は生活者支援」だと一生懸命アピールしている。15兆円も財政資金を投入するのだから、景気に何がしかの効果はあるだろう。しかし、財界要求丸呑み・省庁要求丸呑みだけのなんの理念もない補正予算は、まったくのピント外れである。雇用と家計の犠牲の上に、大企業の生産が多少回復したからといって、とても景気は底を打ったとはいえない

そもそも、日本の「いざなぎ超え」景気は、アメリカの住宅バブルによる過剰借金消費に支えられた輸出大企業だけが、繁栄を謳歌する、大多数の国民には実感のない景気拡大であった。政府は2004年1月の月例報告で「景気は、設備投資と輸出に支えられ、着実に回復している」として以来、昨年7月まで「回復」の基調判断を続けた。正社員を非正規雇用に置き換え、労働者に犠牲を強いると同時に外需・輸出に頼って生産を伸ばし、輸出大企業が5年連続で最高益を更新した時期である。
戦後最長の「景気回復」と言われながら、国内の消費は伸びず、景気を自律的な回復軌道に乗せることができなかった。

雇用者所得が伸びず、社会保障の毀損はどんどん進むなかで、アメリカの過剰消費喪失と同時に、日本経済が急速に悪化するのは、当然であった。アメリカの消費バブルが崩壊し、膨らんだ製品在庫を大幅に圧縮するための減産のしわよせを、大企業は「派遣切り」「期間工切り」で労働者に押し付けた。減らしすぎた在庫を適正水準に戻す段階で、最近、輸出と生産が多少増えてきているというだけの話である。いま、大企業は雇用破壊・リストラの対象を正社員にまで広げている。政府の5月の月例報告でも雇用について「急速に悪化しており、厳しい状況にある」とのべ、先行きも「一層の悪化が懸念される」としている。国民の暮らしから見るならば、けっして「景気底打ち」などではない

麻生政権の景気対策の特徴は、次のようなものである
第一に、政策の理念がまったくないことである。定額給付金、雇用保険料の引き下げ、証券優遇税制の延長、高速道路料金の引き下げ、等々。これだけの財源を無駄にするするなら、ほかにやることがあるだろう。景気悪化から国民を守る視点、外需主導でなく、国民の懐を温める経済政策に転換する哲学がまったくない。
住む家さえ失った派遣労働者への対策や、生活保護の老齢加算・母子加算の復活、後期高齢者医療制度の廃止、国民健康保険証の取り上げ中止など暮らしに困窮している人びとに緊急の手当てをすることが、内需の支えのためにも先ずやるべきことだ。
中小企業の経営を守り、雇用を守るというのであれば、新金融強化法で大銀行に公的資金を注入するのではなく、中小企業に対し、政府系金融機関からの直接融資を充実すればよい。企業の「派遣切り」を自由にやらせて蛇口を閉めないで、いくら雇用対策に金を注ぎ込んでもきりがない。政府がきちっと不法な解雇を許さないという立場で指導するべきである。これには、ほとんど金はかからない。

第二は、選挙目当ての一時的で露骨なバラマキが多いことである。補正予算に盛り込まれた雇用や医療、子育てなど国民向けの対策は一時的、一回きりのバラマキある。公明党得意の創価学会員騙しである。社会保障の自然増を毎年2200億円削減する抑制路線をやめるつもりは毛頭ない。総額15兆円先にありきで、財界要求丸呑み・各省庁要求丸呑みで足し算しただけである。ドサクサに紛れてマンガ首相が、117億円かけて「アニメの殿堂」を建設することまで含まれている。「未来の産業につなげていく」と言って、エコカー助成や家電のエコポイントを目玉にしているが、家計の可処分所得が安定して増える見通しが立たないときに、票になりそうな中間層に一時的な助成で高額商品が売れたとしても、需要の「先食い」にしかならない。「しんぶん赤旗」12日付によれば、「エコポイント」がもらえるグリーン家電の消費電力表示は真っ赤なウソだという。輸出不振に悩む家電大企業と自動車大企業への救済策そのものだ。住宅取得のための贈与税減税は、富裕者優遇策にほかならない。

第三は、当面の経済危機対策には一時的な大盤振る舞いをする一方、近い将来に、消費税増税を予告していることである。消費税は生活困窮者や生活保護世帯をよけて通らない。こんな税金で社会保障の財源をつくるという議論は社会保障の精神をぶち壊すものだ。国内消費需要を冷え込ませる愚策を繰り返すだけである。
日本は、世界最大の資金余剰国である。政治を変えれば、もう一つの日本を実現することは十分可能である。アメリカ依存から脱却し、アジア諸国との協力、共同化、通貨の安定化が、日本経済の再建にとって不可欠だろう。

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