プロメテウスの政治経済コラム

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西川郵政社長進退問題  鳩山総務相事実上の更迭  金融権力が支配する倒錯した社会

2009-06-12 20:51:50 | 政治経済
日本郵政の西川善文社長の進退問題について、西川氏続投に反対する考えを重ねて表明していた鳩山邦夫総務相が、事実上更迭された。西川氏は、日本郵政の社長就任前にも、三井住友銀行の頭取として、取引先の中小企業の弱みにつけこみ、金融商品を買わせて損害を与えていた、「今日の得は僕のもの、明日の損は君のもの」[神谷 秀樹(みたに・ひでき)氏]という強欲金融資本家の代表であり、「社長にふさわしくない」人物であった。今回の事態は、郵政「民営化」(privatization)がもたらした必然的な結果であった。

現在、米オバマ政権の経済政策の中枢にいるのは、ティモシー・ガイトナー財務長官であり、ローレンス・サマーズ国家経済会議(NEC)委員長である。ともに、ロバート・エドワード・ルービンの門下生である。彼らは、リボルビングドアでウォールストリートに入って、政府に来て、またウォールストリートに戻る。一度、甘いキャンディーをなめた人は絶対に変わらない(NBonline2009年6月10日「究極のロビイスト“ゴールドマン”の罪」での神谷氏の発言)。日本の郵政「民営化」(privatization)は、このようなアメリカと財界の手先である小泉純一郎・竹中平蔵によって画策されたものだった

鳩山総務相が、郵政「民営化」(privatization)の本質をどこまで理解していたかを別として、「西川氏の過去の経営、ガバナンス(企業統治)に関する責任は何よりも大きく、絶対に消えない」と主張して、続投に反対したことは正しい。西川社長の辞任は当然であった
日本共産党の山下芳生議員は、9日の参院総務委員会で西川社長の「六つの責任」をあげ、「西川社長のもとで国民はこんなにも害をこうむった。責任を取ってやめるのが当然ではないか」と迫った。「六つの責任」とは、次のとおりである。
(1)「かんぽの宿」など国民財産をたたき売り
(2)ゆうちょ銀行「カード事業」などを三井住友系列と癒着、私物化
(3)かんぽ生命「保険金未払い」を公表せず
(4)「障害者団体向け第3種郵便」の悪用を見逃す
(5)簡易郵便局の閉鎖など国民サービスの低下
(6)21万人の非正規労働者のワーキングプア化

西川社長は、普通の神経の持ち主なら、とっくに辞めているはずだが、「反省すべき点もあったが、いったん引き受けた以上、民営化の土台をしっかりと築くことが私に与えられた責務だ」と開き直った。

郵政「民営化」(privatization)とは、前にも書いたとおり、privatizationを「民営化」と訳したために、多くの人が、なにか国民のためにいいことをやってくれると錯覚したが、Privatizationとは、「Private Only」(関係者立ち入り禁止)の表示にあるように関係者だけのための会社化(私物化)のことである。この政策を陰で主導したのは、アメリカ・ウォールストリートの強欲金融資本であり、ウォール街に憧れを持つ日本の金融資本であった。小泉純一郎・竹中平蔵がかれらの政治的代理人として表で働き、旧い自民党も国民もまんまと屈服させられた。

今回のアメリカの金融危機のもとにある商業銀行が投資銀行と同じように危ないことをやりだすことを考案したのは、ロバート・ルービンであった。彼はもともとゴールドマン・サックスの会長で、その後、クリントン政権の財務長官になった。彼がやった最大のことは、グラス・スティーガル法と州際銀行法を撤廃したことであった。「州際銀行法というのは、基本的には自分の州内で預金を取って、地場の人に貸しなさいという法律です。この法律があれば、『トゥ・ビッグ、トゥ・フェイル(大きすぎて潰せない)』のような巨大銀行なんてできるわけがありません。ところが、この時、銀行が全国銀行になれるようにしたのです。全国銀行になると何が起こるかというと、ブローカー経由でローンを買えるようになる。住宅ローンを買える会社ができたわけです。そうして、顔も見ていない人宛ての債権を買ってくるようになりました」「州際規制を取って、銀行が巨大化するようにしたことと、証券業務ができるようにした」。「彼は、財務長官を辞めるとシティグループに行きます。ボブ・ルービンはシティに大規模な証券化をアドバイスしました。結局彼は1億2000万ドルぐらいのボーナスを持っていきました」。「政府に行って法律を全部変え、その法律を最も生かせる場所であるシティに行き、シティの株価がピーク時に2700億ドルぐらいあったのを、70億ドルぐらいまで落とした」。「それだけ株主の価値は毀損し、今回これだけの公的資金をぶち込まないといけないようにしながら、自分は1億ドル以上ものボーナスを持っていったのです。『今日の稼ぎは僕のもの、明日の損は納税者のもの』という、典型的な生き方をしているので、この部分は僕はもっと批判されてしかるべきだと思います」(神谷氏の発言 同上)。

郵政「民営化」とは、340兆円にのぼる国民の資産をこのような強欲米日金融資本家に差し出すことが、ことの本質であった。竹中は、著書『構造改革の真実』で「大臣がこれだけ法案作成に直接かつ詳細に関(かか)わったのは前代未聞だった」と手柄を誇っている。麻生もその支配から逃れられなかった。



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