プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

安倍「成長戦略」 「改革なくして」から「成長なくして」へ 財界を「同志」として

2006-11-19 19:58:54 | 政治経済
経済財諮問会議の民間議員の意向が政府の経済政策にストレートに反映する仕組みを作ったのは小泉政権であった。10月13日の安倍政権最初の経済財諮問会議で安倍首相は民間議員に向かって「成長のメーンエンジンとして、どうか引っ張っていただきたい」と引き続き民間=財界=多国籍大企業の成長政策をストレートに政府の経済政策とすることを表明。さらに「志を同じくする同志の皆様」とまで媚を売る念の入れようであった。安倍政権の経済政策は誰のためのものか、「成長」とは誰の成長であるか、この発言は端的に示している。私たちは、なにか政府は国民のことも考える中立機関という錯覚に陥りがちだが、階級社会の政府はもっとも肝心な利害については特定の階級の利益のためにひたすら奉仕するものだ。

10月13日の経済財諮問会議で御手洗冨士夫キャノン会長(日本経団連会長)、丹羽宇一郎伊藤忠商事会長(経済同友会政治委員会委員長)ら四人の民間議員は「成長なくして日本の未来はなし」として①イノベーションによる生産性向上②労働市場の効率化(労働ビッグバン)③世界に向けたオープンな経済の構築④グローバル化の観点からの税制の構築―など7つの課題をあげた。これに米財界の対日注文が加わって安倍政権の経済政策が具体化される。イノベーションによる生産性向上とは大企業の研究開発投資を税制・財政資金の投入で支援するということである。
労働市場の効率化(労働ビッグバン)でなにをやるのか。同じく民間議員の一人、八代尚宏・国際基督教大教授が内容を明らかにしている(「朝日新聞」2006年11月15日)。労働者派遣法にある保護規定は撤廃し「非正社員は非正社員なりに長期に“安定的”に働いてもらう」、「正社員の雇用保障は修正を」―派遣、請負の労働者は正社員としての直接雇用を求めるな(偽装請負を合法化)、低賃金でそのままずっと働け、正社員の解雇や労働条件の引き下げをもっとやりやすくせよ―これが労働ビッグバンの内容である。
グローバル化の観点からの税制の構築とは法人税実効税率をもっと引き下げよ、減収分は消費税増税など、家計の負担増で賄えということである。

これでは大企業は成長しても日本国民はどうなるのか。家計所得は抑えられ消費を冷やす。国内市場が相手の中小企業の景気はますます悪くなる。若者が安定した雇用と所得が得られないということは、次世代の労働者を育てられない。貧困と格差の拡大は社会の亀裂と空洞化をもたらす。
多国籍大企業は国内市場を当てにしていない。「上場企業の海外依存が一段と進んでいる。2006年9月中間決算の連結売上高全体に占める海外売上高の比率は、自動車大手6社が76%、電機大手6社は51%に上昇した。欧米の先進国だけでなく、BRICsなどの新興国にも収益の足場を広げており、上場企業全体(10日までの発表分で集計)でも50.6%と半分に達する。国内市場の長期的な伸びが期待できなくなる中、企業はいち早く世界経済全体の成長と連動する収益構造を構築している」(NIKKEI2006.11.17 07:00)。

己の短期的な利益の追求に狂奔する多国籍企業とそのいいなりの政府は“我が亡き後に洪水は来たれ”の世界である。多国籍企業の資本原理に規制を加える政府の樹立がどうしても必要だ。

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