プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

イラクの航空自衛隊 アメリカからの指示待ちでよいのか

2006-11-18 18:34:47 | 政治経済
中間選挙で敗北したブッシュ大統領の失地回復は、9・11テロ事件の恐怖をアメリカ国民に常に想起させ、「テロとの戦い」を進める大統領を売り込むこと以外にない。APEC首脳会議の機会に行われる18日の日米首脳会談でも対テロ戦争への協力や在日米軍再編の推進などで緊密な二国間の同盟関係を誇示するものと思われる。しかし、世界、アジアが日々、アメリカ支配からの自立に向かっって進んでいるときにそんなことでいいのだろうか。北朝鮮から「日本は6カ国協議に出てこなくて良い。日本はアメリカの家来でしかなく、外交能力も低いので、会議に出てくる意味がない」といわれて悔しくないのか。日本の国連常任国入りをめぐって世界の大方の見方も常任理事国にもう一つのアメリカは要らないというものであった。

安倍首相は、イラク戦争が「正当」だったといい、戦争支援の変更もないという態度をとり続けている。戦争をはじめた当のブッシュ政権がイラク政策の見直しに追い込まれているというのに、日本政府がイラク戦争は正しかったと言い続けるのは重大である。これでは日本は誤りも正せない異常な国と見られ、ますます世界で孤立するほかない(しんぶん赤旗」2006年11月18日)。
イラク戦争開始の口実は完全に崩れさった。イラクには大量破壊兵器はなかったし、アルカイーダとも関係なかった。ブッシュ大統領自身も「開戦時の多くの情報が誤りだった」と認めている。ところが安倍首相は、「当時、イラクに大量破壊兵器が存在すると信じるに足る理由があった」、開戦支持自体は「正しい決定」だったと言い続けている。誤った情報に基づく政策決定は、決定の基になった情報の誤りが判明した時点で見直されるのが当然である。いまも正しいといい続けるのは誤った決定をした者の無責任な開き直りの議論そのものである。安倍氏がその当時の決定が正当だから、アジア太平洋戦争をいまも正当と考えているのならば、誤りを誤りと認めない人間ということでもはや一国の首相としての資格はない。

日本の支配層は、アメリカの先制攻撃戦略にそって海外で米軍とともに戦争する自衛隊(軍)を目指している【その最後の関門が憲法9条である】。日本政府がつくりあげてきた「アメリカの戦争は正当」との神話が崩れると自衛隊を海外に送り込み、参戦し続けることが難しくなる。だからイラク戦争支持を崩そうとしないのだ。
しかし、世界では、日本の周辺でもアメリカ抜きの地域の集団的安全保障体制の形成に向けた動きが力を増して来ているのが現在の主要潮流である。アジアにはすでに、中国・ロシア・中央アジアで構成する西方の「上海協力機構」と、東南アジア・日中韓で構成する南方の「東アジアサミット(ASEAN+3)」という、アメリカが加盟していない2つの地域安保体制が徐々に形づくられつつある。これに北東アジアの米日中韓朝露で構成する6カ国協議が東方の地域安保体制として加われば、アジアの集団安保体制が完成する【米国がどうでるか、南北朝鮮の関係がどうなるか依然未知数も多いがアメリカは徐々に中韓に主導権を譲る気配を見せている】。
七月に中断したインドとパキスタンの包括和平対話も両者の喉に引っ掛かるトゲであった「テロ対策機構」の創設を決め和平のより高いレベルでの協議が始まった。

アメリカが武力で世界を荒らしまわる、そのアメリカと同盟して「集団的自衛権の行使」をするために、いまから憲法の「改正」に向かう日本の時代錯誤の愚かさは、少しまじめに世界の動向に注意を払えば一目瞭然である。
ウソではじめられた戦争の誤りを認め、イラクの罪のない民間人を攻撃する米軍などの支援のための航空自衛隊をただちに撤退させることだ。

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