プロメテウスの政治経済コラム

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「ねんきん特別便」送り直し  政府与党は本気で問題を解決する気があるのか!

2008-01-25 19:13:13 | 政治経済
参院選直前の2007年7月5日、安倍前首相は「最後のお一人に至るまで、すべて記録をチェックし、保険料をまじめに払っていただいた方々に正しく年金をお支払いしていく」「1年以内に名寄せを行い、突き合わせをおこなう」(通常国会終了後の記者会見)と大見得を切ったものである。宙に浮いた5000万件を一年以内に処理というのは一年が31,536千秒と知っている人は、みなウソだと思っていた。案の定、昨年末になって福田首相は「解決するといったかな」(12月11日)、町村官房長官「選挙中ですから、ある程度こう、簡略化して物をいってしまっているところが確かにあった」(同)、舛添厚労相「3月が終わればすべて年金問題がばら色の解決ができて、全部終わっているという誤解があったんだろう」(同)と言い出した。政府与党は本気で問題を解決する気があるのか!

鳴り物入りで始まった「ねんきん特別便」。昨年12月末までに、記録漏れの可能性が高い人を対象に48万人分が送られたが、記録漏れがあったとして訂正できた年金受給者は約5%の2万人にとどまる。それもそのはず。社会保険庁が窓口を訪れた人に記録漏れの特定につながる助言をしないよう各地の社会保険事務所に「裏マニュアル」を送っていたのである。あれだけ「消えた年金」の責任を追及されながら、本人が思い出して申し出ない限り記録を訂正しないという「申請主義」の立場をとり続けているのだ。
日本共産党の小池晃議員は昨年12月25日の参院厚生労働委員会で、「消えた年金」に対する国の対応の問題点を、具体例を示しながら追及した。小池氏が紹介したのは、夫の遺族年金を申請しようとした東京都在住の女性の例。女性は、社会保険事務所で「(夫は)1960年以前に勤めていた会社があるのではないか」と聞かれる。分かる範囲で会社名を告げると、「似ているが違う。社長名や会社の住所などを思い出したらまたくるように。これがいわゆる『消えた年金』なんです」といわれた。他の窓口でも「会社名は途中まであっている。95%ご主人のものだと思う」といわれたが、会社名は教えてもらえなかったという(「しんぶん赤旗」2007年12月26日)。
ちなみに共産党に手紙をだしたこの女性は、小池議員の国会質問の2日後に「消えた年金」が見つかったという連絡を受ける。夫の結婚前の勤め先を「サンデー農機」と乏しい記憶で答えたが、実際は「サンデー農林社」という業界紙の会社であった(「しんぶん赤旗」2008年1月20日)。 小池議員の国会質問がなかったら、「惜しいですね。思い出したらまた来て下さい」のままであった。

舛添厚労相は22日、「ねんきん特別便」を、記載内容を改めた上で送り直すと言い出した。加入記録しか記載されておらず、どこに漏れがあるのか分かりにくいとの批判が上がっているためで、またも莫大な税金が使われることになる。だったら、なぜ最初からやらなかったのか。政府与党には本気で問題を解決する気があるとはとても思えない。

それを象徴するのが、23日の公明党・浜四津敏子代表代行の参院代表質問である。昨年の参院選第一声で「特別便」の実施について、「これは公明党が大きな推進力となった」と胸を張っていた、その公明党の代表代行が「再度、『(ねんきん)特別便』を送付しても、あまり効果は望めない」と言い出す始末である。加入履歴の記憶を喚起する記録がいっさい記載されていない特別便の欠陥を棚に上げて今度は、「電話や訪問」による対応をしたらどうかと迫った(「しんぶん赤旗」2008年1月24日)。

社会保険庁は24日になって、該当者不明の約5000万件の年金記録のうち、コンピューター上にはあるが、氏名などが記されていない約524万件について、原簿などと照合してきたが、氏名の補正ができない記録が約6万件残ったことを明らかにした。氏名がない記録は名寄せ作業の対象とならないため、政府・与党が「公約」していた今年3月末までの名寄せ作業の完了が、改めて実現不可能であることが明確になった(「読売」1月24日21時12分)。
社会保険庁のコンピューターに入力されていない5000万件とは別の「旧台帳」と呼ばれる紙台帳の年金記録計1466万件のうち、約2割の判読が難しく、名寄せが困難であることが25日、わかった。文字が不鮮明などの理由で判読が難しい記録は、単純計算で約290万件に上ることになる。政府・与党が昨年7月にまとめた「年金公約」では、今年5月末までに旧台帳の名寄せを行うことを約束しているが、判読できない記録が残れば、これも達成できないことになる(「読売」1月25日12時16分配信)。

社保庁はどんな記録管理をしていたのか! 政府与党はどのように問題を解決するつもりか!

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