プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

海自護衛艦インド洋へ再出航   元自衛隊幹部が厳しい批判

2008-01-24 18:53:28 | 政治経済
新テロ対策特別措置法に基づきインド洋で給油活動を行う海上自衛隊の護衛艦「むらさめ」が24日午前、横須賀基地(神奈川県)を出航した。25日には、佐世保基地(長崎県)から補給艦「おうみ」が出航する。国の安全保障を軍隊・武力に依存することは、いまや時代遅れになりつつあるが、各国が自主的に軍隊の解体に進んでいるという状況でもないことは事実である。しかし、自衛隊幹部のなかにも海外派兵が常態化しつつある現在の自衛隊のあり方に批判的な意見を持っている人も多い。日本国を愛し、自衛隊を愛するが、いまの自衛隊は日本の防衛とは無縁な存在になりつつあるというわけだ。

「しんぶん赤旗」1月24日付で海上自衛隊の元高級幹部がインド洋再派兵について、その胸中を次のように語っている。きわめて論理的で説得的である。私からはなにもつけ加えることはない。
――海上自衛隊の補給艦、護衛艦を再びインド洋に出動させ、対テロ戦争という名の「報復戦争」を行っている米軍などへの燃料補給というかたちで協力することに、国民は納得をしていない。アメリカが要求しているからというだけでインド洋に「日の丸」をかかげるというのでは、あまりにも主体性のない行為だ。それではアメリカの属国でしかない。「ショー・ザ・フラッグ」というが、戦争をしている軍隊に「燃料を補給する」ことは参戦になる

小泉首相(当時)が「日米同盟が重要」ということで始めたことだが、当時と今では国際情勢、世界の動きは大きく変化している。「これまでもやってきた」「国際社会が継続を求めている」など、そんなあいまいなことで一度撤退させた自衛隊を再び派兵することは許されない。アメリカはテロをなくすといってアフガン、イラクで軍事力を行使してきたが、テロをなくすどころか世界に拡散している。アフガンでは人道復興どころか治安を悪化させているだけだ。だからアメリカの「報復戦争」に参加する国でも戦争への態度を変えてきている。アフガンのカルザイ政権もテロに加わらないタリバンとの交渉で和平プロセスを進めている。アメリカと戦争を始めたイギリスさえも、アフガンでの軍事作戦一本やりから対話・和解路線に移しつつある。オーストラリアも方向転換を明言している。日本はなぜそうした世界の流れを察知して、自衛隊をインド洋に再派兵することに慎重な態度がとれないのか。“軍”を軽々しく他国や海外に出す国は世界から軽く見られる。むしろ慎重な国ほど尊敬されることを知るべきだ

補給艦だから、というのは理由にならない。燃料がなければ戦争はできないことを考えれば補給艦もれっきとした武器だ。自衛隊を他国のいいなりやなれあいで動かすことはやめてほしい。憲法は海外での武力行使を禁じている。自衛隊を出さなくても外交で国際貢献は立派にできるはずだ。日本はそれだけの影響力を世界に示すことができると確信している。自衛艦のインド洋再派兵はやめるべきだ。――

防衛省元幹部の箕輪登(元政務次官)、竹岡勝美(元官房長)、小池清彦(元教育訓練局長)の3人は、かもがわ出版から『我、自衛隊を愛す 故に、憲法9条を守る』(2007)を出版している。いま自衛隊が問題になっているのは、憲法9条の戦力か否か、その存在が違憲かどうかではない。武力によらない国際平和秩序という諸国民の願いに反して、先制攻撃戦略をとる(つまり世界で真っ先に攻撃の手を出す)アメリカとともに海外で戦争のできる軍隊にするのかどうかが問われているのである。海外で戦争をできるようにするためには、交戦権を否定している憲法9条第2項の「改正」がどうしても必要である。米軍支援に駆けつけても、前線で肩を並べると武力行使=交戦になるからである。

三人の著者は、日本の防衛とは無縁な自衛隊はおかしいと考えている。こうした考えは必ずしも、少数ではない。自衛隊はもともとは、日本に対する攻撃から国民を守るものだからである。箕輪さんは文字通り命を削りながら小泉内閣のイラク派兵に反対し、差し止め訴訟を起こし、2006年5月に亡くなった。竹岡さんも小池さんもいまの政権与党の「憲法9条を変えて、米国とともに海外で戦争のできる国にする」という考え方を厳しく批判する。
自衛官のみなさん。なぜ自分は自衛官になったのか。いま一度考えてもらいたいものだ。箕輪さんの口癖は「平和に右も左もない」であった。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。