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Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

自分の専門は集中治療だ、と思っている医者の数

2024年11月03日 | ICU・システム
昨日に続いて厚労省の統計ネタ。
こちらは今年の3月に発表されていたのを発見。
令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況

令和4年と言えば、我々集中治療医にとって記念すべき年。
そう、「医師届出票の「従事する診療科名等」の欄に「集中治療科」がついに追加されました」の年です。
ついに、”自分が従事している診療科は集中治療です”と思っている人の数が分かった。
さて、何人でしょう?
ヒント:2024年4月1日現在で集中治療医学会認定専門医は2770名です。

正解は、、、
919名!医師の0.3%でした!
専門医を持っている人のうち約三割が”自分が従事している診療科は集中治療です”と思っているのか。想像よりちょっと多いかも。嬉しい限り。

ちなみに女性の割合は17.6%(病院に勤める医師の平均は24.5%)、平均年齢は42.8歳(同45.4歳)。
つまり若めの男性が多い。そんな感じ、するね。
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日本の病院のICUベッド数(R5年度)

2024年11月02日 | ICU・システム
過去ログ:
日本の病院のICUベッド数(R4年度)
日本の病院のICUベッド数(R3年度)
日本の病院のICUベッド数(R2年度)
日本の病院のICUベッド数(H30年度)

9月30日に公表されていた。秋になったらベッド数チェック、と覚えることにする。
なお、このデータは厚労省のウェブサイトから取得しているのだけど、データの欠損や間違いは必ずあるはずなので、あくまで参考値です。

「ICU」というものを、
・特定集中治療室管理料 1 - 4
・救命救急入院料 2 or 4
・小児特定集中治療室管理料
のどれかを算定している病床と定義。
()の中はR4年←R3年←R2年←H30年の数字。

・ICUのある病院数:580(←588←614←601←625)
・ICUの数:733(←737←774←760←794)病棟
・ICUベッド数:7008(←7012←7221←7015←7204)床あった。
・ICUのある病院の全病床数のうちのICUベッド数の割合の平均:2.42%(←2.41←2.36←2.36←2.35)。
・人口10万当たりのICUベッド数:5.64床(←5.61←5.74←5.71←5.70)

次に、ICUのベッド数が多い病院トップ10。


病床数が200以上ある病院のうち、bed_ratioが高い病院トップ10。


循環器や小児など専門病院が含まれるので、対象を500床以上の病院に限定(総合病院であろうと仮定)。


なんと、東海大が三冠を獲得(36床のEHCUが救急加算3から4になった)。

人口が減って、病院が減るのでICUのある病院の数も減る。でも複数のICUを新しく作ったり増床したりする病院があるようで、その結果として、ICUのある病院は8つ減ったのにICUの数は4つしか減らず、ベッド数も4床しか減っていない。
一番興味がある人口10万当たりのICUベッド数は、ずっと昔から5台のまま。まあ、ICUベッド数が変化すると医療も変化するので、何が正しいのかは分からない。
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ICUにおけるレベチラセタムの投与経路による環境的影響

2024年09月20日 | ICU・システム
ICMで最近よく見かけるGreen ICU系の研究。

Santander S, Le Guennec L, de Maisoncelle I, et al.
Comparison of environmental, economic and professional impacts of levetiracetam according to its administration route in intensive care unit.
Intensive Care Med. 2024 Sep 2. Epub ahead of print. PMID: 39222138.


ある神経ICUで、レベチラセタムの静注を内服に変更したら、年間1400kgのCO2排出を減らせると試算された、と。

地球温暖化まで話を広げなくても、内服で済む薬は内服で投与すれば、コストも仕事量も減る。
確かにレベチラはつい静注で継続しがちかも?
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人工呼吸を必要とする患者のICU入室における病院と地域差

2024年08月14日 | ICU・システム
世界のOhbe等による研究。

Ohbe H, Shime N, Yamana H, et al.
Hospital and regional variations in intensive care unit admission for patients with invasive mechanical ventilation.
J Intensive Care. 2024 Jun 5;12(1):21. PMID: 38840225.


結果よりも、そもそも人工呼吸の開始がICUでなされた症例の割合が40%であることに愕然。データは2018-2019年で、COVIDで集中治療の存在感が増したとは言え、現状でこの数字が大きく変わっているとは思えない。

2003年に日本に帰国したとき、集中治療医の職が見つからず、救命センターに勤務した。
あれから20年。JSEPTICのメーリスは集中治療医の勧誘で溢れているし、医師転職サイトを見れば集中治療医の募集がすぐに見つかる。ずいぶん変わったものだと思うけど、臨床はまだまだこの程度。

病棟で急性病態に対して人工呼吸器を使用することがいかに普通じゃないか。それに日本が気がつくのはいつの日か。
次の20年に期待したい。
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ANZICSにおける第三の性に分類される集中治療患者の疫学

2024年07月01日 | ICU・システム
Modra LJ, Higgins AM, Pilcher DV, et al.
Epidemiology of Intensive Care Patients Classified as a Third Sex in Australia and New Zealand.
Chest. 2024 May;165(5):1120-1128. PMID: 38081578.


さすがANZICS先輩、2016年からANZICS-APDに"third sex option"というのを追加したそうで。
0.06%、525症例の疫学情報がこの文献。

日本だと、JIPADが導入を決めるというよりは、病院もしくは電子カルテが決めたことに追従することになるでしょう。もう始めている病院(か電子カルテ)ってあるのかな?
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ICU退室後の患者と家族の心のケアはとても難しい。

2024年05月30日 | ICU・システム
最近、これのせいでAI関係の文献ばかり読んでいて、臨床の文献が読めていない。なのでNEJMの集中治療関連の研究としては久しぶりにポジティブだったこれこれもつい最近読んだ。とくにこれは、日本の脳卒中急性期診療が、根拠に基づくようになるのか、それともくも膜下出血脳梗塞のように「我が道を行く」のかを見極める上でとても重要なのではと思ったが、この2つを読んだらそれどころではなくなった。

Kentish-Barnes N, Azoulay E, Reignier J, et al.
A randomised controlled trial of a nurse facilitator to promote communication for family members of critically ill patients.
Intensive Care Med. 2024 May;50(5):712-724. PMID: 38573403.

ICU退室後から3ヶ月間、ナースが家族をケアしても、うつの発症頻度を減らさない。

Sharshar T, Grimaldi-Bensouda L, Siami S, et al.
A randomized clinical trial to evaluate the effect of post-intensive care multidisciplinary consultations on mortality and the quality of life at 1 year.
Intensive Care Med. 2024 May;50(5):665-677. PMID: 38587553.

ICU医師を含む多職種チームがICUを生存退室した患者さんの心のケアを半年すると、患者さんの精神予後は悪化する。

フランス人は優しくないからじゃないかと言いたくなるが、それは言っちゃダメだね。
特に前者は、この研究とは異なり、介入内容が細かく決まっているようなのに、それでも効果はなし。

ICUの仕事が、患者さんとその家族を幸せにすること、それができなくても不幸せをできるだけ減らすことなら、それって相当難しい。
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ICU設計の変更が譫妄とメラトニン濃度の日内変動に影響する可能性

2024年04月13日 | ICU・システム
最近、生活がパターンが変わり、それとともに読んでない文献がいよいよ溜まり、あっという間に100を超えた。どんどん読まないと。。。

Spies C, Piazena H, Deja M, et al.
ICU Design Working Group. Modification in ICU Design May Affect Delirium and Circadian Melatonin: A Proof of Concept Pilot Study.
Crit Care Med. 2024 Apr 1;52(4):e182-e192. PMID: 38112493.


ICUの設計をする時って、ベッドを何床にするとか、倉庫をどこに作るかとか、医者とナースの控え室の大きさをどうするかとか、そんな話が多いけど、患者さんの視点から設計を考えることって少ないのでは。
これもそうだけど、今後はそういう視点で作られたICUが増えるのかな。だったら素敵だな。
まあ、pilot studyなので証明されているわけではないのだけれども。視点が素敵だな、と思って。
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2007年から2021年までの中国におけるICU病床数の変化

2024年02月29日 | ICU・システム
Yuan L, Xu S, Xu J, et al.
Variation in intensive care unit beds capacity in China from 2007 to 2021.
Intensive Care Med. 2024 Feb 20. Epub ahead of print. PMID: 38376514.


なんと中国ではICUベッド数が15年で7.8倍に増えたらしい。

ところで、この文献の中に、
"We collected hospital beds, and ICU beds from 25 OECD countries in 2021 from the OECD database."
と書いてあって、ICUベッド数の国際比較では”国内随一の権威”である僕としては興味津々。
調べてみると、
Health at a Glance 2023
の113ページに確かに記載がある。勝手ながら、こちらにコピペ。



・日本と韓国は病院病床数が抜けて多い(つまりが慢性疾患用のベッドが多い)。
・重症ベッドはOECD平均のちょっと下で、人口10万人あたり14.4。

ただし、この日本の数字はHCUとか救急の下の加算とかも含んでいるはずで、いわゆるICUのベッド数は最新データで5.6なので、やはり日本は最下層であることが確認された。
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SOFAの呼吸の"respiratory support"って?

2024年02月25日 | ICU・システム
めっちゃ今更なのだけど、疑問に思ってしまった。

ご存知の通り、SOFAの呼吸の3点以上には"respiratory support"が必要。でもその定義が不明確で、人工呼吸のみなのか、NPPVやHFNCも含むのか、よく分からない。どちらかの記載はあってもそこに根拠はなく、みんな勝手に決めている感じ。例えば、
Pérez-Torres D, Merino-García PA, Canas-Pérez I, et al.
Real-world inter-observer variability of the Sequential Organ Failure Assessment (SOFA) score in intensive care medicine: the time has come for an update.
Crit Care. 2023 Apr 21;27(1):160. PMID: 37085825.

6年以上の経験のある専門医がSOFAを計算したところ、呼吸のKappa値は0.42しかなく、六臓器の中で最も一致率が低かった。こんな研究が昨年発表されるくらいだから、混乱は世界中で起こっているようだ。

僕は人工呼吸のみだとずっと思っていた。なのでNPPVやHFNCも含めるという話を聞くたびに、「間違ったこと言ってるなー」と思っていた。でもつい先日、「あれ、根拠を知らないぞ!」ということに気がつき、自分に対して驚いてしまった。
仕方がない、調べるか。

当然のことながら、SOFAの原文には記載がない。でもこれ以外に”正しい定義”と呼べるものはない。ただ、当時はNPPVもHFNCもほぼ臨床で使用されていなかったので、respiratory support = mechanical ventilationだったと考えるのが妥当でしょう。
でもそれでは根拠にならないので、SOFAを作ったVincent先生が書いている文献を片っ端から確認した。その結果、見つけたのがこれ。

Vincent JL, Moreno R.
Clinical review: scoring systems in the critically ill.
Crit Care. 2010;14(2):207. PMID: 20392287.

SOFAの原文の2nd authorであるMoreno先生との共著。ちなみにこのレビューはICUにおける重症度スコア全般についての解説で、掲載された当時「めっちゃ良いから読んでね」と僕がそこらじゅうで宣伝してたやつ。
で、この中に、SOFAのrespiratoryの項目として"PaO2/FiO2 ratio, mechanical ventilation"の記載を発見!
少なくとも2010年の段階ではこのお二人は"respiratory support" = "mechanical ventilation"とお考えであったことが分かる。

ちなみにJIPADでは2018年度から入室時のSOFAを算出しているけど、respiratoryの算出は人工呼吸のみ。理由は簡単で、HFNCとNPPVはICUでの使用については収集しているけど、入室24時間の情報は人工呼吸しかないから。

とりあえず間違ったことはしてこなかったようで、一安心。
と言っても、もうすぐ発表されるであろうSOFA2.0ではこの辺の混乱も解消されることでしょう。
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早期敗血症ケアにおける自動リアルタイムフィードバックの効果

2024年02月20日 | ICU・システム
Leisman DE, Deng H, Lee AH, et al.
Effect of Automated Real-Time Feedback on Early-Sepsis Care: A Pragmatic Clinical Trial.
Crit Care Med. 2024 Feb 1;52(2):210-222. Epub 2023 Dec 13. PMID: 38088767.


敗血症が疑われる患者さんに対して、敗血症バンドルに沿った検査と治療(抗菌薬開始、血液培養採取、乳酸測定、および異常値だった場合の再検)が行われなかったら、それをポケベル(!)で知らせる仕組みを作り、この仕組みで連絡するかしないかを無作為に割り付け比較。1377名が対象となり、敗血症バンドルに沿った検査が行われた頻度は21.1% vs.29.6%と有意に上昇したが、死亡率は8.3% vs. 8.4%で改善はなかった。

まず、ほぼ70%はアラートに関係なしにバンドルの対象ではなかった可能性があり、20%はアラートされなくても検査が行われた。なのでそもそも介入できる患者さんが全体の10%しかいない。これが自動アラートの限界。
人は必ず忘れるし、コンピュータは忘れない。なのでコンピュータが人の役に立つことはきっとあるはずだけど、本当に有効な仕組みを作るのは難しい。
その典型例のような研究。考えされます、ほんとに。

一つ思うのは、こういう仕組みを作る時って、抜けを減らそうとしてどうしても広くアラートしてしまう。そうするといわゆる”オオカミが来たぞー”症候群が起こり、正しくアラートされた時ですら無視されるようになってしまう。それだったら、抜けがあってもいいから、絶対に役に立つアラートだけした方が役に立つんじゃないだろうか。

実は、3年ほど前からフィリップスとこれ関係のアプリを開発中で、もうすぐ臨床応用ができそうなレベルまで来ている。コンセプトは「うるさいと思われないこと」。
さて、ユーザーに便利だと思ってもらえるか、実際に有効性が示されるか、乞うご期待。
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