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Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

急性呼吸不全生存者のための移動クリティカルケア回復プログラム

2024年02月18日 | ICU・システム
Khan BA, Perkins AJ, Khan SH, et al.
Mobile Critical Care Recovery Program for Survivors of Acute Respiratory Failure: A Randomized Clinical Trial.
JAMA Netw Open. 2024 Jan 2;7(1):e2353158. PMID: 38289602.


呼吸不全でICUに入室し生存退院した患者さんを、最初の半年は2週に1回、その後は月に1回訪問して、身体的および精神的な評価と介入を行なった。その結果、QOLは改善せず、ER受診と入院の確率が増え、死亡率に有意差は認められなかった。

つまりはPICSに対する介入研究、と考えていいだろうか。
結論だけ見ると有効そうじゃないけど、死亡率は10.3% vs. 16.3%でp値は0.05。実際に計算してみるとChi squareで0.0562。確かに0.05を上回っているけど、定期的に訪問すると体調や病気に対する注意が払われて、「病院行った方がいいよ」とより頻回に言われ、もろもろの結果として死亡率が低下した、と考えるとスッと理解できるので、どちらかと言えば有効性を示した研究のように思える。

最近のAJRCCMにもこんな記事が載っていて、いわゆるICUサバイバーの長期管理の重要性について述べている。PICSの関心がいよいよ高まっている感じ。

ただ、PICSのフォローやケアはICUの仕事なのか、については疑問。
ICUに来なくても長期入院でADLが低下する人はたくさんいるし、AKI後のCKD管理の重要性なども言われているし、入院による状態悪化を長期フォローする仕組みが必要で、PICSはそこに含まれれば良いのではないか。

ICUリサーチの担当は、PICSという病態を世に知らしめて、より大きな仕組みの中に組み込んでもらうところまで、な気がするのだけど、
それってちょっと無責任か??
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ICU用に調整された薬剤の組み合わせアラートの効果

2024年01月25日 | ICU・システム
Bakker T, Klopotowska JE, Dongelmans DA, et al.; SIMPLIFY study group.
The effect of computerised decision support alerts tailored to intensive care on the administration of high-risk drug combinations, and their monitoring: a cluster randomised stepped-wedge trial.
Lancet. 2024 Jan 19: Epub ahead of print. PMID: 38262430.


無駄なアラートは、単に無駄なだけでなく、患者さんに有害。
逆に、無駄を省くと人はちゃんとアラートに反応にするようになる。

電子カルテなどのDXが導入されて医療者の仕事量が逆に増えたという話があるが、それはコンピュータがいけないのではなく、導入方法を考えた人間が悪い。コンピュータによる正しい仕組みの構築はきっと有益。

「そう、まさしくその通り!」という結果を示した研究がLancetに載っていて、ちょっとゾクゾクしました。
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2009年から2021年までのオランダICUの質向上

2023年12月27日 | ICU・システム
Roos-Blom MJ, Bakhshi-Raiez F, Brinkman S, et al.
Quality improvement of Dutch ICUs from 2009 to 2021: A registry based observational study.
J Crit Care. 2024 Feb;79:154461. Epub 2023 Nov 10. PMID: 37951771.


結論は、「7つの指標に基づくオランダのICUケアの質は2009年から2019年にかけて有意に改善し、ICU間の異質性は褥瘡を除いて中から小規模である。」

この文献のeditorialが好き。
Pisani L, Quintairos A, Salluh JIF.
ICU registries: From tracking to fostering better outcomes.
J Crit Care. 2024 Feb; Epub 2023 Nov 18. PMID: 37981535.


表1を、Chat先生に日本語にしてもらった。

テーブル 1: ICUレジストリがケアの質の向上に役立つ方法
・ケースミックス評価とアウトカム: レジストリによるケースミックス評価は、ICUの疫学に関する知識を向上させ、QI研究の対象を特定するのに役立つ。
・ケアのプロセス: 証拠に基づくケアのプロセスへの遵守の監査と、ICU介入のデザインの改善が可能である。
・監視: レジストリは、パンデミックや新興疾患、ケースミックスおよびアウトカムの傾向の監視に対して、タイムリーなデータを提供する。
・RCTおよび擬似実験研究のためのコアデータ: レジストリは、ICUでの治療の有効性と安全性を試験する観察的または介入的研究の実施を容易にし、作業負荷を軽減するコアデータセットを提供する。

JIPADは、施設数140、症例数40万例に到達している。このまま行けば、2-3年後にはANZICSの施設数を抜き、7年くらいでICNARC(人間がデータ収集しているICUデータベースとしては世界最大)を抜き、20年後には日本全部のICUが参加している計算になる。

まだ参加していないあなた。置いてかれちゃいますよ。
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日本の病院のICUベッド数(R4年度)

2023年12月10日 | ICU・システム
まず過去ログ:
日本の病院のICUベッド数(R3年度)
日本の病院のICUベッド数(R2年度)
日本の病院のICUベッド数(H30年度)
気がついたら、厚労省のデータが更新されR4年度のデータが出ていたので、再計算。

なお、「ICU」というものを、
・特定集中治療室管理料 1 - 4
・救命救急入院料 2 or 4
・小児特定集中治療室管理料
のどれかを算定している病床と定義した。
()の中はR3年←R2年←H30年の数字。

・ICUは588(←614←601←625)の病院に737(←774←760←794)病棟、7012(←7221←7015←7204)床あった。
・ICUのある病院の全病床数のうちのICUベッド数の割合の平均:2.41%(←2.36←2.36←2.35)。
・人口10万当たりのICUベッド数:5.61床(←5.74←5.71←5.70)

次に、ICUのベッド数が多い病院トップ10。

病床数が200以上ある病院のうち、bed_ratioが高い病院トップ10。

循環器や小児など専門病院が含まれるので、対象を500床以上の病院に限定(総合病院であろうと仮定)。


去年の結果と比べて気がついた。東大病院がなくなって、高知赤十字が一気に増えている。
このデータは厚労省のホームページから取得しているのだけど、生データを確認すると、東大病院の"算定する入院基本料・特定入院料"が全て欠損していて、高知赤十字の”特定集中治療室管理料4”の病棟が45床増えている(もともと10床なので、きっと登録データの間違い)。

多施設でデータを収集すると、データの欠損や間違いは必ず起こるし、それは国のデータでも同じなのね。
なので、毎年の細かい増減はあまり意味がないということがわかった。

まあそれでも、
日本には約600の病院に約750のICU、約7000ベッドあって、
病床数との比は約2.4%、人口10万人あたり6弱のICUベッドがある、
という認識は持っていて無駄じゃないはず。
自分の病院のICUベッド数が多いか少ないか分かるし、他の国のデータを読むときも日本と比較できるし。
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集中治療患者情報管理システムのバイタルサイン異常検知機能導入の効果

2023年11月20日 | ICU・システム
色々あってメッチャ時間がかかったが、ついに掲載!

山口 庸子, 内野 滋彦, 齋藤 慎二郎
集中治療患者情報管理システムのバイタルサイン異常検知機能導入の効果
日集中医誌 2023;30:459-60.


何をしたのかは、口で説明するよりも動画を見てもらった方が分かりやすいはず。
バイタル異常検知システム紹介動画

ACSYSを使っていて、バイタルの修正ができてないと困っている方、導入を検討してみては?
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ICU患者家族のPTSDに対するオンライン情報ツール

2023年11月17日 | ICU・システム
Hoffmann M, Jeitziner MM, Riedl R, et al.Effects of an online information tool on post-traumatic stress disorder in relatives of intensive care unit patients: a multicenter double-blind, randomized, placebo-controlled trial (ICU-Families-Study).
Intensive Care Med. 2023 Nov;49(11):1317-1326. PMID: 37870597.


面白いなと思った点が2つ。

1つは、いわゆるA/Bテストが医療の研究で行われているところ。RCTを医療で行おうとすると、IRBの認可を得て、IC取得して、保険もかける必要があってと、色々大変。でもウェブの世界では、表示する内容や言葉やスタイルを変えて、ユーザー(消費者)がより多くクリックする(購入する)表示を模索するなんてことが普通に行われている。羨ましーなーと思っていたA/BテストがRCTで使用されていて、単純に面白い。もちろんRCTの手順はちゃんと踏んでいるけど。

もう一つは、結果がネガティブだったところ。コロナで早期中止されたとはいえ、有効そうなシグナルすら見えない。つまり、家族が不安に思い、そのせいでPTSDを起こしてしまうのは、「ICUってどんなところなんだろう、何をやっているのか分からないから怖い」というような不安ではないということのようだ。例えば病院のウェブサイトを改善しようとしたり、ICUの説明を書いたパンフレットを作ったり、そういう努力をしているところって少なくないのでは。無駄とは言わないけど、少なくとも不安の改善やPTSDの予防にはあまり繋がらないらしい。やはり、人と人とのコミュニケーションが大事そう。

こんな未来が本当に来たら、医者もナースも今より暇になる、と思ったら大間違い。今は忙しくてつい後回しにしてしまっているコミュニケーションに使う時間がきっと増える。機械が増えると冷たくなりそうだけど、実は暖かくなる、のかも。

そうそう、ChatGPTが絵を描いてくれるようになったので、早速「未来の集中治療室」を描いてもらったよ。



て、点滴がない。
そうか、そういう可能性もあるか。
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集中治療専門医を失うらしい。

2023年11月09日 | ICU・システム
昨日、集中治療医学会からメールがきた。
「日本専門医機構認定のサブスペシャルティ領域専門医制度開始に伴い準備を進めておりますが、機構専門医更新の際に基本領域の専門医資格が必要になります。」
だそうだ。
確かに、機構認定サブスペシャルティ領域「専門医の認定・更新」に関する整備指針に、
(1)機構専門医更新申請資格
B.本機構が定める基本領域学会の機構専門医(学会専門医は除く)資格を有していること
という記載があり、この文章は2022年4月15日に改訂されているので、随分前から決まっていたことらしい。

青天の霹靂とはこのこと。
てっきり、今後専門医になる人は基本領域が必要だけど、すでに取得している人は関係ないと思っていた。
知らなかったのは僕だけ?

ちょっと古い情報だけど、
永松聡一郎, 幸部 吉郎, 山下 和人, et al.
集中治療専門医のバックグラウンドとサブスペシャルティ
日集中医誌 2012;19:97~98.

によると、2009年の集中治療専門医は854名。そのうち麻酔科専門医も救急専門医も持っていない人が101名、そのうち循環器専門医と脳外科専門医を持っている人が48名いるので、集中治療専門医だけしか持っていないと思われる人は53名(全体の6.2%)。
学会のウェブサイトによると、2023年4月1日現在、集中治療専門医は2550名(14年で3倍になった)。もし集中治療専門医だけしか持っていないと同じ比率だとすると、158人が集中治療専門医を失う計算になる。

と言っても、僕みたいな情報弱者はきっと少ないのでしょうけどね。
このページの左に、「僕が唯一専門医を持っている学会。巷では、そういう人をreal intensivistと呼ぶ、らしい?」なんて書いてあるが、消さないと。

セミリタイアしているとはいえ、正直ちょっと寂しい。
これでいよいよ集中治療医としての復帰の可能性はなくなった。
まあ、する気ないけど。
ーーーーーーーーーー
追記:集中治療専門医を失わないらしい。
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西暦2050年、ある集中治療専門医の回想

2023年10月28日 | ICU・システム
ここ数年、未来の集中治療はどうなるのか、ほぼ毎日考えている。
そしたらドンピシャリの文章がCCに出ていたので、ちょっとビックリ。

Cecconi M.
Reflections of an intensivist in 2050: three decades of clinical practice, research, and human connection.
Crit Care. 2023 Oct 9;27(1):391. PMID: 37814338.


西暦2050年に引退を考えている集中治療医が、この30年間を振り返った文章。
モニターは大きくてインターラクティブなものとなり、専門医へのコンサルテーションはネット内のアバターに行うようになり、治療はadaptive RCTの結果とAIの判断に基づいたpersonalizeされたものとなった。Fluid challengeも自動化されている。そして何よりも、患者や家族のために使う時間が長くなった。

集中治療医になったばかりの若者への言葉(DeepLで和訳したものを補正)。
・好奇心を持ち続けろ:テクノロジーは進化し続けるが、人間の生理学とケアの基本は不変である。
・テクノロジーを受けいれろ、でも頼るな:技術は専門知識を助けるために利用するものであって、取って代わるものではない。
・つながれ:患者やその家族とつながる時間を増やそう。人とのふれあいはかけがえのないものである。
・忘れるな:機械は予測、分析、計算はできても、悲嘆にくれる母親を慰めたり、患者の心を軽くするジョークを披露したり、家族の目が恐怖で曇っているときに安心の手を差し伸べたりすることはできない。

僕が医者になったのは1993年なのでちょうど30年前(集中治療を専門として選んだのはその4年後)。その頃と比べて一番変わったことと言えば、やはり知識・情報へのアクセスが容易になったこと。当時は調べものや雑誌の閲覧をするには図書館に行く必要があったし、勉強しようと思ったら本屋に行く必要があった。医者は夜中も土日も働くのが当たり前(今もそういう人はいるだろうけど)の時代、知識を得るための時間を作ることがそもそも大変だった。

これからの30年。
どうなるだろう。楽しみだわー。
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ICU患者が経験した自己申告による症状

2023年10月22日 | ICU・システム
Saltnes-Lillegård C, Rustøen T, Beitland S, et al.
Self-reported symptoms experienced by intensive care unit patients: a prospective observational multicenter study.
Intensive Care Med. 2023 Oct 9. Epub ahead of print. PMID: 37812229.


ICU患者の症状でもっとも訴えが多かったのは口渇(66%)。

ちょっと懐かしい。ICU患者の口渇についてはナースと勉強会もやったし、研究もした(抄録1抄録2)。本当はもっとちゃんとした介入研究まで予定したのだけど、諸々あって頓挫した。

痛みの対応は大事だけど、それによって別の苦痛を産んでいる可能性についてはもっと考慮されてもいいかもね。
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APACHE III・JRODの死亡予測能力に対する欠損値の影響

2023年09月28日 | ICU・システム
手前味噌ですが。

Hayakawa K, Uchino S, Endo H, et al.
Impact of missing values on the ability of the acute physiology and chronic health evaluation III and Japan risk of death models to predict mortality.
J Crit Care. 2023 Sep 22; Epub ahead of print. PMID: 37742518.


ここで書いたことを実際に証明した研究がJCCに掲載されました。
メッセージは、アルブミンを測定しないとあなたの施設のSMRが高くなっちゃうよ、です。

予後予測に有用で、施設パフォーマンスが正しく評価され、酸塩基の診断もできる。
アルブミンを測らないという選択肢はないと思います。
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