20年ほど前、インド、バングラデシュを2年ほどの時期をおいて2回ほど旅行した。当時、現地で米やチャパティ、それにイギリスパン、プルマンはよく食べたのだが、ナンを食べた記憶がほとんどない。ナンは食べたのか、あるいは見たことがあったのかもしれないが、日本のインド料理店でよく見かけるようなシズクの形ではなく丸かったようにも記憶している。
20年近くという年月で記憶があやふやなせいもあるが、どちらの旅もいわゆる高級ホテル、レストランの旅ではなかったのがその理由の一つかもしれない。また、旅行がベンガル地方中心だったため、そこが米食文化圏であったことももう一つの理由としてあげられるかもしれない。
以上よりナンを食べた記憶というとほとんど日本での記憶だ。今はもう閉店してしまったが以前、
日比谷マハラジャという店がマハラオという名前だった頃は現地の味に近くてよく行った(名前が変わった後、味も変わった気がした)。だから自分の中のナンの記憶はマハラオのナンということになる。それも10年以上前になる。ま、料理の味も現地に近いのでたぶんナンも近い、、、かもしれない。
初夏だし、
前回のチャパティに続いてナンを食べたくなったので焼いてみることにした。
でも、焼くにあたって2つの問題を解決しなければならない。
一つは材料と配合。そしてもう一つはタンドールなしでどうやって焼くか?
【材料と配合】
1)イーストを使って発酵させる。
ナン自体がそれほどポピュラーでないためか、公表されているナンのレシピで決定的なものはないようだ。検索しても色々なレシピがある。ただ、ナンのレシピというとイーストで膨張させるかベーキングパウダーで膨張させるかと大きく2つに分けられるようだ。たぶん、レストランのナンはイーストだと思う。ということでイーストを使って膨張させることにする。ヨーグルトを入れるのも一般的みたいなのでヨーグルトもあわせて入れる。
2)イースト以外の材料
卵を入れてかなりリッチにするレシピもあるようだが、味の記憶をたどれば多くのレストランでは卵は入れていないように思う。それではリーンな生地かといえばそうともいえない。食べればほんのり甘みを感じるので砂糖と牛乳か脱脂粉乳は入れているようだ。また、のばしやすくするために液体の油脂を入れているだろう。ギー(水牛のすましバター)を使えば本格的なのかもしれないが、作るのも面倒なので普通のオリーブオイルを使うことにする。あとのばしやすくするための工夫として
ピザ用緑サフを使う。
以上より材料は精製した小麦粉、イースト、水、牛乳、ヨーグルト、塩、砂糖、オリーブオイルとした。レストランでは普通のパン生地に近い生地でタンドールで焼いていると思われるので、それぞれの分量はパン生地の基本で考えればいいだろう。
【焼成】
材料は解決したが、焼成の方がかなり問題だった。ナンはタンドールの高温で一気に焼成するので家庭で焼くのは難しいらしい。ナンはタンドールの壁からの熱とタンドール自体の中の高温の二つの熱で焼けるようだ。つまり伝道熱と輻射熱(一部対流熱)である。この二つの熱を効率よく伝えるとなると結局はオーブンになるのだが、オーブンはタンドールなみの高温を持続させることは難しいようだ。タンドールの中は300~500度だが、ガスオーブンでは300度は確保できても扉を開けるだけで一気に温度が下がってしまう。この高温を確保するためにフライパン、中華なべを使う方法、あるいはこれにオーブン焼成を組み合わせた方法、魚焼きのグリルを使う方法、などなどちょっと検索するだけで皆、苦労しているのがわかる。魚焼きグリルは400~500度と一番タンドールの熱に近いようだが、中が狭いため大きなナンは焼けない。ダッチオーブンを使うといいようだが、上に炭火をのせるというのも面倒だ。
でも、ちょっと考えたら簡単な方法があった。ピザストーンを使えばいいだけだ。ただそれだけでは熱容量が少なすぎるかもしれない。出来るだけ300度を確保するということで上段にピザストーン、下段に石をのせ、予熱終了後も10~15分間、300度でオーブンを運転することにした。
ということでナンのレシピ完成! やってみたところかなりおいしい! スーパーで売っているナンとは次元が違う。それに手前味噌だが、キタノカオリを使っているのでもしかしてそこら辺のインド料理店の味を越えているかもしれない。
ナン4個分のレシピ
キタノカオリ 200g
水 85ml
牛乳 50g
砂糖 10g
塩 2g
オリーブオイル 10g
イースト 緑サフ 3g
オイル以外をまずHBで捏ねる。捏ね始め5~10分で少しずつオイル投入。発酵時間55分(全工程1:20)
時間を見ながらオーブン予熱300度。
ピザストーン、石を忘れずに入れて予熱。予熱終了後も300度で運転。
4分割 丸めてベンチタイム適当10分?(笑)
粉をつけ、パンマットの上でのばし、のばした後、オーブン内ピザストーンの上に投入。この時、出し入れは迅速に。
焼成は目視で適当に。多分1~3分。