アメリカにいた時、住んでいたのは地方の小都市だったせいもあって日本の麺類を入手するのに苦労した。ラーメンはインスタントでかまわなければ
Krogerという普通のスーパーでも手に入るし、他の麺も東洋食料品店に行けば入手は不可能ではないのだが、売っているのは主に乾麺でそれも日本の相場から考えると馬鹿みたいに高く、おまけに賞味期限切れだったりして薄給の身では購買意欲などわかなかった。日本人の知り合いで某商社駐在のご家族は週1回、日本食レストランで食事をするのを常としていたが、そこはうどん一杯食べるのにチップを入れて最低12~3ドルは覚悟せねばならない超高級レストラン(?)だった。日本人の感覚では今の価値で10ドル=900円くらいかもしれないが、当時は1ドル100~110円。いた所の当時のアメリカ人の平均年収が2万ドル程度と日本の当時の平均年収の2分の一以下だから、感覚的にうどん一杯2500円だ。それに10ドルあれば牛挽き肉が特売日でなくても4kg以上買えてしまう。アメリカでアメリカ人と同じ給料をもらっている身としてはいかに高級かはわかってもらえると思う。そのような高級レストランに気軽に行けるはずのない知り合いの大半の日本人は安価に入手できる様々な太さのスパゲティ麺を何とかして日本の麺に近づけるべく日夜工夫に励んでいた。
よくやったのはフェットチーネをきしめんのつもりで食べること。適度にこしがあってうどんとしてはなかなかであった。鍋に入れれば区別がつかなくなる。あとはスパゲティでちゃんぽん。重曹を入れて茹でると小麦粉とアルカリが反応して黄色くなり、本当のちゃんぽん麺のようになる。
ちゃんぽんは、日本橋の某製薬会社の会議室で研究会があった時に休みの日だったので近くに開いている店がほとんどなく、たまたま「本場」をうたっているちゃんぽん屋に入って食べてから好きになった。(実はちゃんぽんは学生時代に旅行した長崎で初めて食べたのだが、その時の味はよく覚えていない。)そこはオープンキッチンで作り方が見えたのでそこの作り方を参考にして見よう見まねで適当に作っている。ただ、自分が今いるところではちゃんぽん麺は入手が難しい。冷凍食品で具やスープまでついている物は売っていてもちゃんぽん麺だけのは売っていない。ちゃんぽん麺は唐灰汁(とうあく)というかん水で作られるらしいのだが、この唐灰汁が長崎でしか作られておらず、長崎から遠く離れれば入手が困難になるようだ。
以前、東日本、某地方都市の食堂で「ちゃんぽん」を見たので注文したが、それは普通の中華麺を使って作っている、いわゆる「タンメン」であった。メニューにタンメンがあったので違いを聞いたらあんかけになっているのが、タンメンであんかけになっていないのがちゃんぽんだとか。おかしいのだが、
Yahoo知恵袋で見るとタンメン=ちゃんぽんは東日本では当たり前らしい。タンメンをちゃんぽんと称するのは関東的にOKなのかもしれないし、自分は別に原理主義者ではないのだが、でも、でも、でも、この食堂は根本的に何か間違っていると思う。あんかけ中華そばはタンメンではないと思う。よく考えるともうわけがわからない(笑)。この食堂は長崎人も関東人も敵としたいみたいだった。
ちょっとちゃんぽんが食べたくなっので、作ってみた。スパゲティの作り方と本当に良く似ている。たぶん長崎人はスパゲティの作り方を見て日本的にアレンジしたのに違いない。だからスパゲティを使ってちゃんぽん麺を作るのは先祖がえりかもしれない(笑)。なんちゃってちゃんぽんだが、食べていたらあれこれ昔のことを思い出してしまった。
スパゲティ(できればやや細めのスパゲティーニ)を重曹水でゆでる。重曹は適当。中華鍋一杯に大匙一杯ぐらい。茹で方はややかため(アルデンテよりは柔らかく)
野菜、肉、(あればあさり)をいため、酒、水を注いで沸騰させ
ウェイパーを適量入れ、塩コショウで味を調え、そこにややかために茹でたちゃんぽん麺を入れて煮てできあがり。