徒然なるままに…なんてね。

思いつくまま、気の向くままの備忘録。
ほとんど…小説…だったりも…します。

虹色の贈り物

2006-11-01 22:18:28 | 生き物
 秋めいて…少しだけ涼しくなってきた…。
それでもまだ…家の中では半袖で過ごしている…。 
代謝が悪いので…気温の変化に身体がすぐには付いていかない…。
さすがに外では長袖だけれど…。 

 冷房病ではないよ…。 自分はほとんど冷房を使わない…。
そうだね…暑い夏の午後3時~5時頃…34℃越えたなら使うかな…。
パソコン使うとめちゃ暑いから…。 いつもじゃないけどね…。 

 子供の頃は…町全体が夏場でも…もっと涼しかった…。
ルームエアコンなんてものは…まだ普及してなかったんだ…。
団扇か扇風機…。 
自動車も窓開けて走る時代…だった。 


 あれは…夏の終わり頃…。
自分はひとりで神社の奥の子供用の遊び場に居た。
今ほど物騒じゃなかったから…子供ひとりで神社に居ても問題はなかった。 

 学校の登下校の分団の集合場所で…年寄たちの集いの場でもあった。
見上げるほど高いイチョウの木に囲まれた境内と遊び場…。
ジャングルジムや滑り台…砂場…鉄棒…ブランコ…そんなものがあった。

 いつもなら子供で賑わっているのに…本当にひとりきり…。
不思議なくらい静かだった。 

 生い茂る黄緑のイチョウの葉…木漏れ日の中でひとり遊んでいた。
何をして遊んでいたのか覚えていないから…多分…低学年だったのだろう…。

 夏の終わりといっても…まだ暑い盛りだから…みんなが午睡を楽しんでいる時間だったのかもしれない…。

しん…とした境内…。 いつも沢山居る鳩の声さえも聞こえない…。

 ふと…イチョウの木の下の何枚も落ちているまだ緑色の葉に眼が行った。
ただの葉っぱなのに…何気なくその方へ近づいて行った。

 おや…と思った…。  
何か居る…。

 そっと葉っぱをどけてみる…。
背中が虹色に光る緑の虫…。 玉虫だ!  

玉虫はオトンの小さい頃には神社にも結構居たという話だが…自分の子供の頃はすでに希少だった。

 本物…見るのはこれが始めてではないけれど…こんなところでお目にかかるとは思わなかった…。
だって…ここは普通にみんなが遊ぶところで…普段…蝉くらいしか居ないから…。
 
 緑色に輝くその身体は不思議な魅力に満ちている…。 
虹を背負うその姿は眩しいほど神々しい…。

すげぇ!

神社の神さまの贈り物だ…。 

 けれど…よく見ると玉虫は死んでいた…。
死んだ虫なら…もって帰っても良さそうなものだけど…何だか悪いような気がしてもとのように葉っぱをかけた…。 

このまま…誰にも気付かれぬまま…。
それが一番なんだろう…。  

残念な気持ちもあるけれど…。

 玉虫は翌日には消えていた…。
葉っぱもなかったから掃除されてしまったのかもしれない…。

 自分は神さまに素敵な贈り物を貰った…。
玉虫を自分のものにはしなかったけれど…玉虫の記憶は永久に消えない…。