徒然なるままに…なんてね。

思いつくまま、気の向くままの備忘録。
ほとんど…小説…だったりも…します。

ブリキの湯たんぽ

2006-11-30 11:00:00 | ひとりごと
 並木の紅葉が一枚…また一枚…と散って…遊歩道の上に錦の模様を描いている。
風が吹くとかさこそと音を立て…いっそう寒さをつのらせる…。

 北の方ではもう雪が降っているんだね…。
雪の少ないこの地方では…まだ…晩秋の景色のまま…。
それでも…もう間もなく…霜が降りはじめるだろう…。

今は思い出だけになってしまったが…かつては毎年この季節になると火鉢に練炭を入れ…火を起こした。

 練炭とか炭とか言うと…若い人たちは焼肉屋か鰻屋…焼き鳥屋など調理用の燃料を思い浮かべるだろうね…。
それと…TVや映画などでたまに使われている七輪は…案外知っているかもね…。
魚を焼くシーンなんかによく使われているから…。

 炭は昭和の中期まではほとんどの家庭で使われている暖房用の燃料でもあったんだ…。
この頃にはまだ…電気やガスを調理や暖房に使えない地域もあった。
風呂や竃(かまど)は薪を焚いて使っていたんだよ…。
 ガスで焚くのはもっと後…電気に至ってはずうっと後の話…。
だから…だいたいどの家にも小さな煙突があった…。

 人の出入りのあるところでは薪ストーブが土間に設置されてあったりしてね…。
さすがに町中では囲炉裏は見なかったけれど…田舎の方では使われていた…。

 暖房器具も風呂や竃と同じで…だんだんとガスストーブ…石油ストーブ…と呼ばれるものが普及されてきた…。
電気ストーブに辿り着くまでにはしばらくかかったけどね…。

 いずれにしても…部屋全体を効率よく温めるってわけにはいかなかったなぁ… 
大学病院や大きい施設には当時でもセントラルヒーティングなるものがあったけれど…。

 冬の夜はしもやけができるほど冷えるので…腹巻をして…蒲団に入る。
毎晩…母親が夜間で何杯も湯を沸かし…ブリキの湯たんぽに熱湯を詰める。
布袋に入れて手ぬぐいを巻いて蒲団の足元に入れてくれる。

 これがほかほかと気持ち良い…。
朝までぐっすり眠れる…。

 最近は温度調節のできる電気毛布だの何だの機械的なものがいっぱいあるけれど…湯たんぽは…熱過ぎず…くど過ぎず…それに勝る心地よさだと思うよ。
機会があったらお試しあれ…。

 持ち運び便利な行火(あんか)…小型ケースに炭火を入れたものだけれど…を使う人も居たな…。
化学変化を応用するホカロンなんてない時代だから…炭は大活躍だったわけさ…。

 子供が生まれた時に…夜泣きはしなかったんだけれど…全然眠らないんだ…。
夜中でも真ん丸く目を開けている…。
おかしいなぁ…と思って親と同じ蒲団に入れたら…赤ん坊は寒さで眠れなかったらしく…親の添い寝で問題解決…。

 触ってみると今風のマットレス付きのベビー寝具は軽いけど温かくない。
綿の蒲団に変えたら全然温かさが違うんだ…。
洋風寝具の時は何か温める道具が必要だと分かった…。

 当時…手伝いに来てくれたシッターさんが問題解決に…と手に入れてきてくれたのは湯たんぽ…。
驚いたことにプラスチック製…。
最近はプラスチック製がほとんどで…ブリキはなかなか手に入らないんだって…。
熱の伝わり方がなんだかなぁ…だったけど贅沢は言えない…。

 なるほど…湯たんぽがあると親が添い寝しなくてもちゃんと眠る…。
昔の人の知恵って…すごいもんだねぇ…。