徒然なるままに…なんてね。

思いつくまま、気の向くままの備忘録。
ほとんど…小説…だったりも…します。

散歩道で拾った話…四百四十五「シオ系三種・ショウジョウ♀♂・オニヤンマ・チョウトンボ」

2010-08-30 21:54:00 | 生き物
 今日の散歩道…相変わらずの猛暑…地面も草木もカラカラです…。
入道雲が彼方に現れ、時折、この辺りの上空を暗い雲が通り過ぎますが、雨粒ひとつ落ちてきません…。
降れば降ったで蒸し暑いだけかも知れませんが、ひと雨欲しいところです…。


 さて…今日の最初の画像は…そっくりトンボ三種…。
皆さんよく御存知のシオカラトンボの仲間です。
…といってもdoveは昆虫に詳しくないので…違ってたら教えてくださいね…。


 最初は…シオヤトンボ…。
シオカラトンボにそっくりですが、背中の色が異なり、身体の黒い部分がシオカラトンボより少ないトンボです。

     

こちらが御馴染みのシオカラトンボ…。

     

シオヤ・シオカラよりも大きく、体色の青が濃くて美しいのがオオシオカラトンボ…。

     

なんて素敵な青色だろう…。
青の好きなdoveはこのトンボに惚れ込んでいます…。

シオカラトンボとオオシオカラトンボは前回のトンボの時にも別の個体をUPしましたが、シオヤは今回が初めてのUPになります。


 この金色のトンボは…ショウジョウトンボのメス…だと思われます…。
時折、ネットでも金色のトンボを目にしますが、ショウジョウトンボの若い個体やメスは光の加減によって素晴らしく美しい金色に輝くそうです。

     

そしてこちらが成熟したオス…。

     

オスは美しい紅色です…。
ショウジョウトンボは日本の赤系のトンボの中でも最も秀麗なトンボだと思います…。


 この大きなトンボ…オニヤンマ…だと思うのですが…薄暗い休憩所の室内で見かけたので体色がはっきりしませんでした…。

     

画像も高い天井にとまっているものが多いのでボケ画像ばかりで、その中ではこの画像が最もはっきりしています。


 最後は…チョウトンボ…です…。
ひらひらと舞うように飛ぶこのトンボは、輝く美しい羽を持っています。

     

飛んでいる姿も実に優雅…。
…なんですが…なかなかとまってくれないので先回は撮影をあきらめました。
今回はたまたまとまってくれて画像をゲット…ラッキーでした…。


 この他にも、アオヤンマやギンヤンマ、ひょっとしたらハッチョウトンボのメスかもしれない黄色い体色に模様のある小さなトンボ、黄系のトンボ、赤系のトンボ、イトトンボなどが飛んでいましたが、止まってくれないので画像はゲットできませんでした。

珍しいトンボも居そうなので、名前などを調べるために上手く撮影できるといいのですが、なかなか思うようにはいきません…。

生き物を撮影するのは本当にむずかしいです…ね…。





散歩道で拾った話…四百四十四「緑地の植物」

2010-08-27 23:20:00 | 植物
 今日の散歩道…晴れ…連日毎日暑い日が続いています…。
あまりにも土地が乾き過ぎているためか、風はあるけれど全然涼しくありません…。
木陰に入っても温い風が流れています…。

 昨日は緑地へ行ったのですが、池の周囲を歩いていると涼しい風が吹いてきて爽快でした。
散歩道の川と緑地とは距離的にはそんなに離れていませんが、緑が多いということはそれだけ体感気温が違うのかもしれません…。

 さて…今日の画像はその緑地で見かけた植物たちです…。
最初の花は…多分…ツルフジバカマ…。

     

撮影に失敗してかなりのボケ画像のため、はっきりとは分からないのですが、見た目には最も該当するヒロハクサフジが海岸近くに生える植物であるため、その次ということでツルフジバカマと判断しました。
似ている花にクサフジもありますが葉の数や形が異なります。
オオバクサフジとも葉の形や花のつき方が異なるように思います。
間違っていましたら…是非正しい名前を教えてくださいね…。


 次の花は…ヒナギキョウ…。
散歩道でも其処此処に頻繁に見られる花ですが、緑地では所々に群生していました…。

     

散歩道ではとびとびに咲いているため、5~6mmの小さな花ですから、他のものに気を取られていると見落としてしまいますが、まとまって咲いている緑地ではすぐに目に入るため簡単に見つけることができました…。


 この花は先回一輪だけ咲いていて、サワオトギリと間違えたコケオトギリです…。
サワオトギリの方が花も葉も倍くらい大きく対生する葉は茎を抱きません。
また、コケオトギリは紅葉しますがサワオトギリは紅葉しません。
そもそも、サワオトギリと見間違える相手はアゼオトギリらしく、ここでdoveの超いい加減さがはっきりと示された結果となりました…。

     

因みにコケオトギリにそっくりなヒメオトギリは雄しべの数がコケオトギリより多く紅葉しないようです。


 小さな保護湿原でシラタマホシクサが咲き始めました…。
先回ではまだほとんどが完全につぼみ状態だったのですが、輝くような白い小さな花が湿地の其処此処で花開いています。

     

群生している様子はまるで銀河のよう…。
小さな湿地の中で広大な宇宙を体感できます…。

えっ? そうは見えない…?

申し訳ない…doveは白い花を上手く撮影できないもので…。
美しい画像を御覧になりたい方は雪の下さんとごんべ絵さんの御宅へ飛んでください。


 こちらは初回に撮り損ねたトウカイコモウセンゴケ…。
何とか撮影に成功しました…。
トウカイコモウセンゴケはコモウセンゴケに似ていますが、葉っぱがスプーン型なのがトウカイコモウセンゴケ、しゃもじ型なのがコモウセンゴケだそうです。

     

     

トウカイコモウセンゴケの小さな花を離れたところから撮影したボケ画像ですが、ロープの中には入れない状態で何とかゲットした画像…。
doveのコンデジでは快挙と言わざるを得ません…。
これもごんべ絵さんの御宅で素敵な画像が御覧になれます。


 これはシロバナサクラタデ…。
たくさんの雑草に混じってあちらこちらで可憐な花穂を垂れていました…。

     

シロバナサクラタデによく似たサクラタデは花色も淡紅色で花穂は稀にしか垂れないそうです。


 こちらは多分…ノチドメ…。
よく似たものにチドメグサやオオチドメがありますが、葉の大きさや切れ込みから見てノチドメと判断しました…。

     

チドメグサの類は止血作用があるのでこの名がついたらしいです。
因みに庭の隅や石垣などに生えている小さなチドメグサの仲間はヒメチドメといいます。


 ノチドメと同じ水路に咲いていた…アメリカアゼナ…です。
もう終わりがけのようで花が落ちていました…。
淡紅色が普通だそうですが、この花のように白色もあるそうです。

     

よく似た花にアゼナがあります。
アメリカアゼナには葉に鋸歯があり、アゼナにはないので区別ができるそうです。

 
 これはノアズキ…川の土手にも咲いています…。
花も葉も特徴的で、花は中心の竜骨弁がくるっと曲がって上向いており、葉は卵状菱形です。

     

よく似たものにヤブツルアズキがありますが、こちらの葉は狭卵形や卵形です。
因みに小豆の元となったのはヤブツルアズキの方だそうです。


 ネムノキの葉に似ていることから付けられた…クサネム…です…。
この画像ではたまたま白っぽい淡黄色の花ですが、他の花には中央部分に赤褐色の斑点があります。

     

クサネムもネムノキと同様、暗くなると葉を閉じて睡眠運動をするそうです…。


 ラストは…ヒレタゴボウ…別名アメリカミズキンバイ…。
管理されてか自然生えかは不明ですが、緑地の二箇所の人工湿地にはぎっしりとこの花とタカサブロウが咲いていました…。

     

その間からシロバナサクラタデが覗いているという感じ…。
昆虫たちの良い溜り場になっていました…。

おっと…タカサブロウの画像だけUPするのを忘れちゃった…。

 緑地はすでに秋の顔になっています…。
先回出会った花の中にはすでに姿を消したものもあり、逆に新しく咲き始めたものもあり、こんな短期間でも自然は休みなく移り変わっているのですね…。

 
 緑地に足を延ばした御蔭で、また新しい楽しみが増えました…。
この次にはどんな植物に出会えるのかなぁ…?

ワクワクします…。














続・現世太極伝(第百四十五話 嬉しくねぇなぁ…。 )

2010-08-23 21:17:17 | 夢の中のお話 『続・現世太極伝』
 日本庭園の池のような大きな湯船…趣向を凝らしたその造作に…プールだっ!…と歓声をあげながら駆け出していく子供たち…。
揃いも揃って今にも飛び込みそうな勢いだ…。

違う違う…これでも風呂なんだから暴れちゃだめっ…飛び込み禁止っ!

やんちゃな後ろ姿に慌ててストップをかけながら、西沢は足早に小さな背中を追った…。

 宿を囲む木々の闇の中に、湯の流れ出る音と季節の奏でる音だけが飲み込まれていく…。
灯籠の仄かな明かりに照らされて、乳白色の柔らかな湯気に包まれた小さな身体が四つ浮かんで見える…。

隙間無く星を鏤めたミッドナイトブルーの無限スクリーン…。
子供たちは呆然と空を見上げている。

慧勠(エリク)がそっと天に向かって手を伸ばす…。
溢れるほど光に満ちた空が不思議でたまらないようだ。

亮と温泉に行った夜も…こんな星空だった…。

ふと…そんなことを思い出した。

にわかに肌を擽る冷気…初秋とはいえ…やはり山間の夜風は冷たい…。

「風邪ひくから…少し湯に浸かりなさい…。」

子供たちにそう声をかけて、西沢自身も石造りの湯船に身を沈めた。
心地よい湯のぬくもりの中で、うんと手足を伸ばす…。
思わず知らず…ふうっと息が漏れる…。

 あの日までは他人のふりをしていた…。
突然かかってきた親父の電話で実の兄だと知られてしまった…。
星を見上げながら真実を告げたんだ…。

それももう…遠い昔…光陰矢の如し…だな…。

 子供たちは言われたとおりに一旦は湯に浸かったものの、あっという間に飛び出して所狭しとはしゃぎまわっている。
公園の人工池で水遊びでもしているかのような大騒ぎ…離れ客室専用の露天風呂でなければ即苦情がきそうだ…。

あ~ぁ…もぅ…風邪引いても知らねぇぞ…。

そう嘆きながらも楽しげな子供たちの様子に次第に頬が緩んでくる…。

いいなぁ…こういうのも…。

ノエルと輝が与えてくれた悪戯な天使たち…。
輝が逝ってしまって…西沢が想い描いていたものとは少しばかり違う形になってしまったが…それでもやっと手に入れた本物の家族との暮らし…。

僕と恭介と…ノエルと子供たち…輝とあの子が居ればパーフェクトだったのにな…。
うまくいかないもんだなぁ…。

心の中の輝がクスッと笑う…。

「人間はお星さまになれる…? 」

何を思ったのか…唐突に絢人(ケント)がそう訊ねた…。
瞬時…西沢は言葉に詰まった…。

「ママと赤ちゃんはお星さまになった…って倫祖母ちゃんが言ってた…。」

そうか…それで…お星さまが見たい…と言い出だしたのか…。

子供たちをこの温泉に連れて来たのは、絢人がいっぱい星の見えるところに連れて行って欲しいとせがんだからだった…。

「ケントは…どう思う…? 」

絢人の瞳を覗き込むようにして西沢はそう訊ねた。

「わかんない…けど…お星さまは遠過ぎて…ケントの傍に来られないよ…。
ほら…見えるけど…届かない…。 」

背伸びしていっぱいいっぱいに手を伸ばしながら絢人は言った…。

「ママはいつもケントの傍に居る…ケントには見えないけどママには見えるんだって…。
傍に居るんだから…お星さまにはなれない…ノエルはそう言ったよ…。

花蓮さんのマンションの屋上でも…届かなかった…。

それにね…ケントが見ると…お星さまはいつも違う場所に居る…。
お星さまは動くんだよ…。

じっとケントを見てるなら…動かない…。 」

 ある日突然…目の前から消えてしまった母親…。
まだ…死の意味も理解できない年…言葉にできないほどショックを受けたに違いない…。
幼いなりに絢人は懸命に考えて、どうにか納得できる答えを見つけようとしているのだろう…。

「ケント…今…ママが何処に居るか…ほんとうのところは誰にも分からないんだ…。
ママの姿はもう僕等の目には見えないから…。

でもね…ママはケントのことをちゃんと見ていると思う…。
ノエルが言うようにケントの傍に居て…ケントを護ってくれているのかもしれないよ…。

ケントのことが大好きだからね…。 」

 絢人は輝の血を引く能力者…その場凌ぎのいい加減な誤魔化しは通用しない…。
祖母である倫の昔風な慰め方の是非はともかくとして、倫よりノエルの答えの方が正しいと感じたに違いない…。

「ふうん…誰にも…わかんないか…。 見えないからか…。 
でもやっぱり…ママはお星さまになってない…。
あとで教えてあげよう…っと…。 祖母ちゃんきっと驚くな…。 」

 ずっしりと星を湛えた空…届きそうで届かない手…自分自身でそれを体感することで…絢人はひとつだけ満足できる答えを導き出したようだ…。
すべてを解決するにはまだまだ長い時間がかかりそうだけれど…。

カニっ!
カニが居るよっ!

 露天風呂を囲っている塀に近い岩の辺りで吾蘭(アラン)が嬉しそうに大声をあげた。
絢人はその声に釣られるように慌てて吾蘭の手招きする方へと向かった。
来人(クルト)と慧勠がもの珍しげに吾蘭の手許を覗いている。

お湯でも平気なのかなぁ…?

あちゅいとこ…いれてみゆ…?

え~っ…死んじゃうよ~。

「ねぇ…どうしてお風呂にカニが居るの…? 
これ…お湯ん中に入れても大丈夫なカニ…? 」

ひょいと蟹を摘み上げ、離れたところに居る西沢にも見えるように差し上げながら、吾蘭が大声で訊ねた。

「あぁ…多分…外の川から上がって来たんだよ…。
湯なんかに入れちゃだめだ…茹で蟹になっちゃうからな…。
よく観察したら放してあげなよ…。 」




 障子の向こうからぼんやりと漏れ来る光…月明かりなのか…それとも外灯か…。
離れの客室を囲む和風の庭園には景観と安全上の配慮を兼ねて幾つもの外灯が備え付けられてある。
邪魔にならない程度の穏やかな灯りだが…気になり始めると鬱陶しくって仕方がない。
幾度目かの寝返りの後…眠れぬ自分を持て余した西沢は大きな溜息をついた…。

手を伸ばして枕もとの携帯を取る。

まだ…11時にもなっていない…。

 遊び疲れた子供たちを隣の部屋で休ませたのが9時少し前…。
仕事の都合で遅れてやってきた滝川が如何にも眠たげな様子だったので、大人も早々に寝ることにしたのだが、蒲団に入ってすぐに寝息を立て始めた滝川とは逆に西沢はなかなか寝付かれなかった…。

 目を閉じると、届かぬ星に手を伸ばす絢人の様子が目に浮かんで、つい要らぬことを考えてしまう…。
大人たちが良かれと思って絢人にかけた慰めの言葉が、残念なことに、幼い心に少なからず戸惑いを生じさせてしまった…。
それでも絢人を包む周囲の人々の温かな気持ちは決して絢人に悪い影響を与えたりしないはずだ…。

 西沢には言葉に疑問を抱くほど慰めてもらった記憶が無い…。
誰も傍に居なかったのだから…捨てておかれた…というのが本当かも知れない…。
尤も、実母絵里が亡くなった経緯を思えば、養父も絵里の事故死に関わった妻子のケアで手一杯、西沢を看るどころの騒ぎではなかったことだろう…。

絵里と暮らしていた旧西沢邸の離れの部屋にたったひとり…。
屋敷を崩壊させるほどの大パニックを起こすまでは…誰も西沢に目を向けなかった…。

 無論…当時の記憶などすべてがおぼろげなものだ…。
けれど…その時に味わった底知れぬ恐怖と理由の分からぬ怒り…は…今の西沢の中にも消えずにある…。

いい加減にしろよ…。 まったく情けないやっちゃ…。 
こんなこと…いつまで覚えていても仕方ないじゃないか…。

 再度の溜息とともに西沢は起き上がり、障子の向こうの広縁に出て、閉め忘れたらしい厚手のカーテンを引いた。
外からの光は遮断され…非常灯と誘導灯の僅かな灯りだけが残った…。

ケントが元気に過ごせるようにしてやることだけ考えていればいいんだ…。

 暗闇の中で枕を放り出して、うんと手足を広げ、蒲団の上に大の字になった。
目が慣れてくると、いつの間にか滝川が目を覚ましてこちらを見ているのが分かった。

「ごめん…起こしちゃったな…。 」

ごそごそ動いてうるさかったろ…と西沢は言った…。

何の…と滝川は軽く微笑んだ。

「早くに寝過ぎて目が覚めただけさ…。 」

それはいつもの優しい嘘…。
ノエルが急用で来られなくなって、急遽、休む間もなく出先から駆けつけた滝川…疲れているに違いないのに…。

「ケントのことが気になるか…?
おまえも幼い時に母親を亡くしたから…どうしても境遇を重ねてしまうよな…。 」

努めて穏やかな口調で西沢に話しかける…。
西沢の何処かにまた新たな変調の兆しがないか…を確かめながら…。

「ケントには…ノエルがついている…。
大丈夫…ノエルは立派にケントの親父してるよ…。
僕はただ…ノエルの後押しをしてやるだけ…。

 結果的に輝は…いい男をを選んだってことだ…。
僕みたいなどうしようもない…いじけ虫…じゃなくてさ…。 」

いじけ虫…まさにぴったり…西沢はフッと笑った…。

「ノエルを選んだわけじゃないさ…。 利用したんだ…。

 輝にとって出自の違うおまえとの結婚は避けて通れない問題山積…障害物だらけで決心のしようもなかった…。
まぁ…仮に如何にかなったとして…おまえが特別な血統だってことを別にしても…結局のところ…輝の性格じゃ西沢家とはまったく反りが合わないだろうけどな…。

 だから…ノエルの子供を産むことにした…。
ノエルという媒介を通して…おまえとは切れない絆ができる…。
子供同士が実の兄弟だという確かな絆が…ね。

輝はそういう形を選んだ…。

言ってしまえば…僕だってそうだ…。
ノエルにエリクを産んでもらうことで…おまえとの間に絆を結んだ…。

利用する…なんて言葉は悪いけどもな…。
ノエルはすべてを承知の上で輝と僕に協力してくれたんだし…。」

それほど…おまえと離れたくなかったってことさぁ…。

最後のフレーズの…甘ったるい声が西沢の臍の辺りを擽る…。

その声はやめろ…っ!

げんなりしたように西沢が言う…。

滝川は声をあげて笑った…。

問題なし…だな…と…胸の内で安堵の息を吐いた。

 以前に比べれば西沢の状態はかなり落ち着いている…。
長年付き合ってきた輝が非業の死を遂げ、同時にせっかく輝との間にできた娘も失って、このところ散々な想いをしていたにも関わらず、普段と変わらぬ冷静さを保ち続けている…。

 西沢の中の4歳の紫苑もようよう成長を始めたのかもしれない…。
幾つになっても衰えを見せない祖母譲りの秀麗な横顔を見つめながら…そんなことを思った…。

 西沢の実母は早世したので面識はないが、滝川が高校生くらいの頃まではまだ巌もカタリナも元気で、西沢本家に遊びに行った折に何度か会ったこともある。
子供だったから…御祖母ちゃんが外国人なんてかっこいい…くらいにしか考えていなかったのだが…。

「結婚…と言えばさ…巌御大は何でカタリナ御祖母ちゃんと一緒になれたんだ…?
西沢本家の後継者ともあろう人が外国人との結婚なんて、一族から猛反対されそうな気がするけど…? 」

ふと滝川の脳裏にそんな疑問が浮かんだ…。

「あぁ…それね…。 話したことなかったか…?
祖父は曽祖父が高齢になってから迎えた後妻の子だったので、西沢家の後継候補からはずれてたんだ…。 」

高齢…っつっても…50ちょっと前頃だったかな…?
細かいことはあんまり覚えてないや…。

少しばかり自信なさげに西沢は言った。

「えぇっ? あの巌御大が家族から差別されてたってぇの…? 」

意外な逸話を聞いて滝川は思わず驚きの声をあげた。

とても信じられねぇ…あの御大には誰も逆らえんかった…って聞いてるぞ…。

「そういうことじゃなくて、曾祖父と先妻との間にはすでに成人した子供が4人も居たから、最初のうち祖父は自由の身だった…ってこと…。
後継はとっくに長男に決まってたんだよ…。

 ところがさ…いざ曽祖父が亡くなってみると、長男のところには子供がなくて、次男は病弱で独り身、養子に出した三男には先方の跡取りとなる男の子がひとりだけ、嫁いだ長女には男女ふたり子供はいるが、どちらも後継としての能力を持っていない…ってな状況で…。

 急遽、親子ほども齢の離れた長男が祖父を養子にした時には、すでにカタリナ御祖母ちゃんと結婚した後だったってわけ…。
御祖母ちゃんは外国人だけど能力者だし…厄介な家門もついてないし…で…まっいっか…ってことになったらしい…。 」

怜雄から聞いた話によれば…だけれどもね…と…西沢は付け加えた…。

「なるほど…それでか…。 」

滝川は頷いた。

 西沢を実の父親である木之内家の有から騙し取り、自由を奪って閉じ込めた張本人である祖父巌…。
愛情を注いだとは御世辞にも言えないが…西沢に莫大な財産を遺した…。
それも…他の孫たちとは桁違いの…。

「それでか…って…? 」

怪訝そうに西沢が訊き返した。

「巌御大の次兄さんは…多分…その後元気になったか…所帯を持ったかしたんじゃないか…?
そうなると西沢一族は次兄さんの立場を考えるようになる…。
御大はそのまま後継で仕方がないとしても…その後を次兄さんの希望する誰か…例えば次兄さんの実子なり養子なりに…と言い出したかもしれない…。

 御大がすんなり子息の祥さんを後継とするには…次兄さんと一族を黙らせるだけの何か大きな拠り所が必要だったんだ…。
裁きの一族の本流の血を引く紫苑が生まれたことは御大にとってはまさに渡りに船…。
祥さんの養子にしておけば誰も祥さんの地位を脅かすことはできなくなる…。

 ところがそんな折に祥さんの妻である美郷さんが絵里さんを事故死させた…。
祥さんの将来を思えば…真実は絶対に隠しとおさねばならない…。
養母が実母を死なせたなんてことが知れれば紫苑を有さんに返さなければならなくなる…。

そこで…有さんには自殺…表向きには薬の飲み過ぎによる事故死…としたわけだ…。」

まぁ…これは推理に過ぎんけども…それほど外れた話じゃないと思うぜ…。

眠気も吹っ飛んだか…少々興奮気味に滝川は言った…。

「母が自殺を図ったのは…事実だけどね…。 
電話で相庭にふられた直後…あれは完全に衝動的な行動だった…。

にしても…そうか…なるほど…それで祖父や養父の僕に対する異常な執着心の正体が分かったよ…。 」

 祖父が西沢を閉じ込めて他家に対して威光を示す手段としていることには、内心腹ふくるる思いもあったし、養父が告白した亡き妹への愛情ゆえの執着には、如何にもやりきれないものを感じていた。
けれども、養父の後継としての地位を確固たるものとするという実利を追ったものならば、閉じ込められた身として喜ばしくはないものの、方策としては納得できる…。

「相庭のこともさ…おかしいとは思っていたんだ…。
あの用心深い御大がわざわざ裁きの一族から御守役の相庭を招いてまで紫苑を確保しようとしたこと…。
気付いていたかどうかは分からんが相庭は宗主の密命を帯びた御使者…巌御大にとっちゃ何時破裂するか分からない爆弾を抱えるようなもんだぜ…。

だから紫苑はさ…巌御大と祥さんにとっては要らない子どころか如何あっても手放せない大事な御宝だったんだ…っ! 」

大発見をして喜びを隠せない子供のように滝川は声を弾ませた。

「期待しちゃなかったけど…あんまり…嬉しくねぇなぁ…そんな存在意義は…。
祖父もちゃんと事情を説明してくれれば良かったのに…。 
育ててもらってるんだから御養父さんの役に立て…とでも言ってもらった方が…ずっとマシ…。 」

僕にとっては実の父以上の人だったけど…養父にとって僕は…なんだったんだろうね…?

そう言って…少しばかり寂しげに西沢は笑った…。






次回へ

散歩道で拾った話…四百四十三「アオサギ・コサギ・ダイサギ・カワセミ」

2010-08-19 16:48:16 | 生き物
 今日の散歩道…曇り時々晴れ…実際の気温よりも体感温度の方がずっと高いです。
寝起きからぐったり状態…なんだか出かける気になれません…。

 昨日は晴れていて気温的には高かったけれど、散歩道には気持ちの良い風が吹いていました。
そろそろ鳥類が川に戻って来ているような気がしたので、緑地の湿地観察には行かずに久々に散歩道を歩きました。

 かんかん照りのせいかカルガモの姿は少なかったけれどもサギ類は来ていました。
惜しいことに撮影場所に辿り着く前にササゴイには逃げられてしまい、画像が得られませんでしたが…。

 さて…本日最初の画像はアオサギ…。
アオサギは今のところ3羽ほどが散歩道に来ているようです。

     

 そして…コサギ…。
コサギはアオサギよりも早くから川に戻ってきていました。
3~5羽くらい居るかな…。
模様がないので個体の区別がつかなくて…よく分からないのですが…。

     

 こちらはダイサギ…。
散歩道に来るダイサギは、doveが歩く圏内では毎年1羽だけですが、さらに下の方へ行くと他にも何羽か居るようです。

     

 カワセミ…この夏初の画像です…。
声だけはかなり前から聴こえていましたが…なかなか撮影できませんでした…。

     


     


 川の反対側に居るのでボケ画像ですが、やっとこさ撮影できて大満足…。
もう少し涼しくなってくれば姿を見られる回数も増えていくでしょう。
今年も巣立ったばかりのカワセミが居るようなので、近い内にそうしたニューフェイスのカワセミたちとも出会えるかもしれません…。

 逆に…上流で巣立ったばかりのサギらしき鳥の死骸を川の中で発見しました。
下流にはカメに食べられている死骸の破片…比較的羽の長いもの…もありました…。
獣に襲われたか…この暑さでやられたのかもしれません…。

豊かで穏やかに思える散歩道の川の自然も…過酷であることには違いないようです…。


散歩道で拾った話…四百四十二「かくれんぼ・トンボ(コシアキ・ショウジョウ・シオカラ・オオシオカラ)」

2010-08-16 18:17:30 | 生き物
 今日の散歩道…晴れ…暑い…のひと言です…。
13日と15日に墓参りを済ませ、14日と本日は雑用のため散歩には行きませんでしたが、御盆の前に再び緑地へ行って来たので、画像はその時撮影したものです。

さて…私(昆虫)は今…何処に居るでしょうか…?

     

     

分かりましたか…?

上の画像の中にはバッタ…かなりデカイバッタですが…ショウリョウバッタかなぁ…?
おんぶバッタの巨大化したようなやつです…。
下の画像にはオオカマキリ…これもデカイといえばデカイ…。

こちらはコシアキトンボ…。

     

川でよく見かけるトンボです。

この綺麗な紅いトンボは…多分…ショウジョウトンボ…。
ナツアカネやアキアカネも紅いけれど…サイズが大きいので…。

     

こちらはシオカラトンボ…。
doveの子供の頃にはたくさん居ましたが、最近、少なくなりましたね。

     

シオカラトンボとよく似ていますが、オオシオカラトンボでしょう…。
シオカラトンボよりずっと青くて綺麗なトンボです。

     

この他にも優雅なチョウトンボやヤンマ類が居ましたが、飛行中で撮影できませんでした。
そういえば…バッタ類もたくさん居たのに撮ってこなかったなぁ…。

 この日緑地で出会った方が重要な情報をくださいました。
マムシ警報…撮影していた湿地のすぐ脇から奥に頻繁にマムシが出没する…と…。
そういえばこれからしばらくはマムシの繁殖期及び産卵期…マムシが攻撃的になる危険な時期に入ります。
緑地にはマムシがたくさん居るので要注意…。

蛇はそう嫌いではありませんが…さすがに毒蛇とは出遭いたくありません…。

くわばらくわばら…。








昭和二十年八月十五日…我国に於ける終戦の日…追悼。

2010-08-14 21:10:25 | ひとりごと
この世に於ける現時点までのあらゆる戦争の犠牲となられた方々の尊き命を悼み、
謹んで御冥福を御祈り申し上げます。
この世から一刻一秒も早く戦争という不毛の愚行が消滅し、
誰もが当たり前に平和を享受できるようになることを願って止みません…。

                                                                                            合掌

散歩道で拾った話…第四百四十一「山芹・トウカイモウセンゴケ・コケオトギリ・シラタマホシクサ・鷺草」

2010-08-10 17:14:50 | 植物
 今日の散歩道…曇りのち雨…そして曇り…。
気温はそれほどでもありませんが…湿気が多いせいか蒸し暑い日です…。

 雨が振る前に緑地へ画像の撮り直しに出かけるつもりだったのですが…朝から喉が痛みだし何となく体がしゃんとしないので大事をとって家に籠もっています…。
夏風邪引いたかもなぁ…。

 で…本日の画像は失敗作ばかりです…。
日曜日に撮ってきたのですが、喜び勇んで開いてみれば、ボケ画像ばかりでした…。
なにせ小さな花がほとんどなので、かなり近いところからでないとdoveのカメラではなかなかうまく撮れないのですが、近づけないように縄が張ってあるので手を伸ばして撮っています…。

まぁ…それだけの腕がないってのも多々あるんだけども…。

悲しい…。

鮮明な画像を御覧になりたい方は、ごんべ絵さんの御宅や雪の下さんの御宅の美しい画像を御覧ください。

 まず…最初の花は…多分…ヤマゼリ…違ってたらごめんなさい…。
この仲間は似た花が多くてよく分からない…。

     

 こちらはトウカイモウセンゴケの花…。
普通のモウセンゴケの白の花とは異なり綺麗なピンク色です…。
葉っぱの方はうまく撮れんかったので…UPやめました…。
そっちの方が特徴的なのに…。

     

 この黄色の花は…多分…サワオトギリ→コケオトギリ…一輪しか咲いていませんでした…。
周りには葉っぱだけのが何本もあったけれど…終わりがけなのかこれからなのか…。
ごんべ絵さんと雪の下さんがdoveより先に撮影に来ているので、おふたりがすでに御覧になっていれば終わりがけ…ということになるし…そうでなければ…まだ楽しめるかも…。

     

シラタマホシクサ…はまだこれからのようです…。
この花…幾枚も撮ったのに一枚も明瞭なのがなかった…。
難しい…。

     

ここからは鷺草…。
たくさん咲いていてとても綺麗でした…。
蕾がついていたから…もうしばらく大丈夫かな…。

     

     

     


 ほんと…まともな画像がないね~…。
また…近いうちにリベンジ…行ってみます…。 

返り討ちに遭うかも…ですが…。





小さな黄色い花をサワオトギリと書きましたが、葉の根元が茎を抱いた形であるようにも見えるので、コケオトギリかもしれません。
サワオトギリは茎を抱きません。

現地で再確認できたら再度報告いたします。











昭和20年8月9日午前11時02分…長崎追悼

2010-08-09 10:41:41 | ひとりごと
原子爆弾の犠牲となられた方の尊き命を悼み、
謹んで御冥福を御祈り申し上げます。
この世の如何なる国、地域、民族においても、
このような愚行が繰り返されることのないように、
正当化されることのないように、
願ってやみません。
                                                 合掌

昭和20年8月6日午前8時15分…広島追悼

2010-08-06 09:37:00 | ひとりごと
  原子爆弾の犠牲となられた方々の尊き命を悼み、
謹んで御冥福を御祈り申し上げます…。
この世界の如何なる場所においても、
二度とこのような愚かな武器が使用されることのなきよう、

戦争・侵略・兵器の根絶を願ってやみません…。

                                                      合掌



                                                                                                  

散歩道で拾った話…四百四十「暑い日の生き物たち」

2010-08-04 22:12:44 | 生き物
 今日の散歩道…晴れ…連日猛暑です…。
本日出かける予定があったので、散歩道を歩いたのは昨日ですが、多少曇る時もあったとはいえ、余計に蒸し蒸しして暑い日でした…。
晴れようと曇ろうと暑い時は暑いですね~。

 人間が暑いと感じれば川の生き物たちも暑いのでしょう、昼中は時々避暑行動をとるように見受けられます。
そう見えるだけかも…知れませんが…。

避難の意味もあるのでしょうが、特に外敵が居なくても、日陰でじっとしていることがあります…。

     

ササゴイ…しばらく魚を追った後…草陰へ…。

     

カムルチー…時々流れの方へ出てはきますが…すぐに草陰へ戻っていきます…。

     

コイ…寒い季節には日のあたるところに集まっているのですが…暑い時にはこんな感じ…。

     

カルガモ…彼等は夏場よく日陰で涼んでいます…。

 この他にもコサギが葦の陰で羽繕いしていたり、アオサギが川の中の大きな木の陰になっている場所でじっと佇んでいたり…。
コサギもアオサギも冬には日向ぼっこする鳥です…。

水浴びする鳥たちも川のあちらこちらで見られる…。
カメが泳ぐでもなしにぷかぷか浮かんでいたり…。

生き物もちゃんと暑さ寒さの対策…しているんだなぁ…。

 そうそう…省エネなのか横着なのか…コイやカメは川の流れに身を任せて移動することがあるんですよ…。
いつでも自力で泳ぐわけじゃなくて利用できる川の力はちゃんと利用している…。

それもきっと…生きていくための知恵…なんでしょうね…。