徒然なるままに…なんてね。

思いつくまま、気の向くままの備忘録。
ほとんど…小説…だったりも…します。

親父の竹馬

2006-11-05 17:30:00 | 親父
 竹の温もり…木の温もり…昭和30年代以前に生まれた人たちならきっと覚えていると思う…。
家も家具も…玩具だってほとんどが木や紙でできていたし…学校の教材だって自然のものが多かった。

覚えているかな…?  

 竹ひご…竹の細く切り出した棒のことだよ…。
曲げて模型飛行機の翼の枠にしたり…凧の骨にしたり…。

 どうやってそんなもの曲げるかって…蝋燭の炎を使ってね…。
焦がさないようにあぶるのさ…。
 焦がすと折れるよ…。
少しずつ…少しずつ…慎重にね…。 

 だいぶん前に小学校の参観で凧作りに行ったんだけど…今は骨の入った和凧なんか作らないんだね…。
全部プラスチック製のカイトなんだ…。
飛ばない方が不思議ってくらい至れり尽くせりの代物…。 

 自慢するわけじゃないけど…その時…一番高く揚げて子供に喜ばれたんでちょっと嬉しかった。
若いお父さんやお母さんたちと違って…自分らは操作にコツの要る和凧で育っているから…教材用のカイト飛ばすくらいそんなに難しいことじゃない…。

 今は凧揚げなんかして遊ばないんだよね…。
広い場所がないから…。 


 竹と言えばね…。
小学生の頃…オトンが竹を使って竹馬をこさえてくれたことがある…。 

 本物の竹竿短いの二本…。
膝よりちょっと低いくらいのところを小さな板切れ二枚で挟んで…板切れの先と挟んだ付け根を針金でしっかり絡げて…。
三人の子供にひとつだけだったけど…交代で遊んだ…。 

 自分ら子供は裸足になって草履履く時みたいに指で竹を挟むようにして…それに乗った。
歩くのにも乗るのにもコツがあるんだよ…。

 ゆっくり乗ったら倒れるから…ひょいっと乗るんだ…。
ちょっと最初は怖いかもしれないけれど…前のめりで歩く…。
 オイチニ…オイチニ…。
爪先の方に力を入れる…仰け反ったらこけるよ…。 
慣れたら運動靴履いてても大丈夫…。
 
オイチニ…オイチニ…。

そんな掛け声…今は使わないか…ははは…。 

 それからしばらく…オトンの手作りの竹馬は自分ちと幼馴染たちの遊び道具のひとつになった。
竹馬の最後がどうなったかは覚えてないけれど…きっと遊びすぎて壊れてしまったんだろう…。 

 この間…ショッピングセンターの玩具売り場に竹馬らしきものが売っていた…。
高さの調節できるプラスチック製…。

 触っても…全然しっくり来ない…。
命在るものの温かみが伝わってこないから…。
これじゃ…すぐに飽きて壊れる前にお払い箱かも知れないなぁ…。 

 でもね…。
そんなものでも…ずっと使えば…きっと馴染んでくるんだろう…。
物に命を与えるのも使う人の気持ち次第なんだ…。
買って貰った人…大切にしてね…。 

竹の命とオトンの手作り…高い玩具は買って貰えなかったけど…それで十分楽しかった…。

その幸せは…何にもない家に育った子供の特権かもね…。