清書で止咳平喘薬として分類されているものは、杏仁↓(苦辛) 甜杏仁(甘) 桔梗↑(苦辛) 前胡↓(苦辛) 白前↓(苦辛) 百部↓(甘苦) 紫菀↓(辛苦)
款冬花↓(辛) 旋覆花↓(苦辛鹹) 金沸草↓(苦辛鹹) 桑白皮↓(甘)
枇杷葉↓(苦) 蘇子↓(辛) 葶藶子↓(辛苦) 馬兜鈴↓(ばとうれい)(苦微辛)
青木香(苦辛) 色分けは温薬がオレンジ~赤、涼寒薬はライトブルー~ブルー、平薬はグリーンとしました。
色分けしてみますと、温涼寒平いろいろありますね。矢印は↓は降気作用を意味し、肺気上逆の気逆を降ろすという意味です。ここで桔梗のみが↑となっていますが、宣肺袪痰作用といい、肺気を発散させるという意味と、諸薬を肺に載薬上行させる引経薬として作用する意味にもなります。
治肺でよく用いられるものに、宣肺(せんぱい)、粛肺(しゅくはい)、清肺(せいはい)、瀉肺(しゃはい)、温肺(おんぱい)、潤肺(じゅんぱい)、補肺(ほはい)、斂肺(れんぱい)の八直法があります。燥肺(そうはい)をくわえるべきとするは当院の趙鴻博士の意見です。燥肺とは湿濁が肺に蓄積した場合に、肺の好む適当な潤の状態にまで戻すと言う意味であり、肺を燥にする意味ではなく、燥に過ぎてはなりません。肺は元来、燥をにくみ、燥に傾けば肺気上逆または喘息様の咳が出現するからです。
漢方用語の解説
宣肺とは肺衛の表邪を疎散させること。麻黄 紫蘇 桔梗などに作用があります。
粛肺とは肺中の痰火を清除させること。
清肺(栝萋 貝母 竹茹 天竺黄 竹瀝)とは肺中の実熱を清泄させること、
瀉肺とは肺中の痰火と水湿を瀉すこと。
瀉肺(桑白皮 葶藶子)と粛肺(蘇子 杏仁 旋覆花)は又、重軽、緩急の区別があり、前者では比較的強い薬を使い、後者においては比較的おだやかな作用のある薬が使われます。
温肺(乾姜 細辛 白芥子)は肺中における寒飲の温化を意味します。
潤肺(款冬花 百部 枇杷葉)は、乾いた肺を潤すことを意味します。
補肺とは、甘温で肺気を益し(人参 山薬)、又甘涼(沙参 麦冬 百合まど)で肺陰を養うことです。
斂肺(五味子)とは、発散された肺気を収斂してやることである。固渋法の一つで、慢性の咳をとめる治療法です。
燥肺(半夏 天南星)
宣肺、粛肺、清肺、瀉肺は袪邪に属します。
温肺、潤肺も袪邪する方法です。
補肺、斂肺等は扶正に属します。
肺は弱い臓で清虚かつ高位にあります。方剤は、重濁ではなく、清軽のものを選ぶべきである。呉鞠通は「上焦を治するものは羽の如く、軽ではなくば、挙にならない」と説きました。肺は弱い臓で寒熱に耐えられません。甘潤のものは肺気を自降させ、静粛となるので、治肺の方薬は、辛平甘潤が最も適宜と思います。
(内経)には「辛は肺を生む」「辛をもって瀉す」とあります。この瀉は表邪を駆散させ、邪を除き正を安定させ、肺の作用を助けるので「生肺」と言われます。(内経)には又「肺は収を欲すれば、急に食酸で収まる」「酸でこれを補う」とある。咳喘であれば上気し、呼吸促拍になり、肺気を耗散させる。それで酸をもって肺体を補い、耗散された気を収める。苦はすなわち降に、辛はすなわち散に、甘は滋潤に作用するとあります。
臨床では以上の諸々の方法を、組みあわせて用いなければならない。例えば宣粛を用いると同時に、清粛をも用いる。その他、清と潤を、清と宣を、潤と粛を、斂と補を同時に使い、例えば温、清、宣、斂を合わせて使います
宣粛、清潤を合わせて使う等があります。
基礎理論的用語解説
宣発
肺の機能で、広く発散させて行き渡らせるという意味があります。気・血・津液を全身に巡らせたり、発汗や呼吸を行うことです。口から濁気を外へ出したり、発汗したり、皮膚呼吸で濁気を出すことをいいます。
粛降
肺の機能で、各臓腑へ降ろすという意味があります。下降させることにより、吸気や水分を下方へ移動させることです。体内に清気を採り入れることをいいます。採り入れた清気は下降して気道を清潔に保ちます。また、大腸の蠕動運動を促します。