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要薬考 熟地黄 生地黄

2012-11-16 00:15:00 | 漢方市民講座

熟地黄  性味 甘、微温 帰経 心肝腎 効能:補血調経 滋腎益精と和書には記載されているが、中国の清書には養血滋

、補精益髄と記載されてもおり、原意は同じ意味であろう。補血調経の調経は、血虚による月経異常を正常化するという意味である。

ゴマノハグサ科のジオウRehmannia glutinosa LIBOSH、カイケイジオウR. glucinosa LIBOSH. var. hueichingensis CHAO et SCHIHの肥大根を乾燥した後、酒で蒸して塾製したものが熟地黄である。酒で処理した熟地黄は苦味が増し、温性が増す。 補血作用に優れ、四物湯(当帰、熟地黄、白芍、川芎)は養血の基本方剤である。六味地黄丸中に配合 熟地黄は補血補腎虚の要薬と呼ばれる。同じく、補血、滋陰 特に腎陰虚に用いられる阿膠との共通点は、「不動」の性質があり、滋?(じに):胃を障害しやすい。長期間の投与で食欲低下、胃の張満感が出現する。熟地黄の滋?の予防として配合される薬剤は  砂仁であり、砂仁と攪拌した砂仁拌熟地は滋?の副作用が少ない。中国漢方医が、

熟地、砂仁 拌と処方箋に書く意味は、熟地と砂仁を一緒に混ぜる意味であり、砂仁拌熟地を指す。

Jpeg

スライド 熟地黄と乾地黄(生地黄)

新鮮地黄は苦味が甘みより強く、大寒であり、清熱涼血に優れているので、熱入営血や血熱妄行に適している。乾地黄は苦味より甘みが強く、滋陰養血に優れているので、陰虚陽亢 血虚化燥に適する。熱盛の時期には新鮮地黄が、後期で傷陰があり、余熱の残っている時期には乾地黄がよい。気血津液弁証によれば、熱邪が営分にある時は、高熱煩燥、舌赤脈数 斑疹隠隠(皮下出血)がさらに熱邪が血分に入ると斑疹悪露が出現する。

しかし、現実的には、日本の漢方診療では新鮮地黄を使用することは無い。冷凍庫に新鮮地黄を保存しておけば使用は可能であるが、熱性疾患で新鮮地黄を使用しなければならないような症例は、現在では西洋医学の分野であるからだ。発熱が続けば体力が衰える。癌患者にみられる抗生物質耐性の発熱などは、多くは入院しているので、漢方の出番が無いのが現状である。新鮮地黄や牛黄が奏功することがあるので、頑固な発熱には考慮されてもしかるべき薬剤である。日常診療では、乾地黄(干地黄 甘 苦 寒 心肝腎)を使用することになる。清熱滋陰に作用し、歴史的には、

清営湯(温病条弁) 熱邪が深く営陰に入り、津液を損傷した熱傷陰営に用いられる。

証:発熱(夜間甚)心煩少寝、譫語 斑疹隠隠 紅絳舌干(少苔あるいは

  無苔)脈細数 主治:熱傷陰営 効能:清営泄熱(清営透熱)滋陰活血

組成:清営湯

透熱転気の代表方剤

水牛角30

生地15玄参 麦冬9銀翹96 黄連5丹参6竹葉心3水煎服用

清営涼血水牛角生地 滋陰玄参麦冬 活血丹参と共に

透熱転気の金銀花 連翹 竹葉などにより営分邪気を衛分に戻す

Jpeg_2

スライド 清営湯構成

犀角地黄湯千金方)組成:犀角 生地黄 赤芍 牡丹皮

 などや、

増液湯温病条弁)組成:玄参 麦門冬 生地黄

 

青蒿鼈甲湯温病条弁):青蒿 知母 牡丹皮 鼈甲 生地黄

 

知柏地黄丸景岳全書

)(方中の熟地黄を乾地黄に変える場合もある)

           知母 黄柏 生地黄 山薬 山茱萸 澤瀉 

                               牡丹皮 茯苓

大補陰丸景岳全書知母 黄柏 生地黄 亀板

 などに配合されている。

涼血止血を期待し、四生丸校中婦人良方生側柏葉 生地黄 生荷葉 

                                                         生蓬葉

 や、

生津止渇目的に益胃湯温病条弁):沙参 麦門冬 氷砂糖 生地黄 玉竹

消渇証の口渇 多飲に滋膵飲医学衷中参西録):生地黄 山薬 黄蓍 山茱萸 生猪膵 

がある。

生地黄の清熱涼血作用、

清熱、養陰生津の作用は知母と似ている。現実的には、熱邪に対しては生地(生地黄 乾地黄)を配合することを常道として問題はなさそうである。

久痺症に対しての

独活寄生湯備急千金用方):独活 桑寄生  防風 細辛 当帰 白芍  乾地黄 杜仲 牛膝 人参 茯苓 甘草 桂心

 方中 乾地黄を熟地黄にしても支障はない。あるいは熟地黄 乾地黄両者を使用しても支障はない。

放射線 化学療法時に副作用軽減 効果増強目的 中国での症例から

人参10g沙参10g麦門冬10g莪朮10g黄蓍3040g白朮15

熟地黄10g山薬15g女貞子15g茯苓12g当帰12g枸杞子12

菟絲子12g陳皮7g木香6g 甘草6g 白花蛇舌草30

化学療法開始5日前から連日服用2週間

以下症状症候を著名に改善させる。

嘔気 下痢 食欲不振などの消化器症状

白血球減少 血小板減少などの骨髄抑制

体重減少 

ほとんどの癌メール相談はすでに化学療法、放射線療法を受けた後に、いわゆる第4期の末期がんの状態が多い。化学療法中やそれ以前の相談が少ないのは非常に残念である。

ドクター康仁 記

甘草には炙甘草と生甘草があり、後者は清熱作用を有する。地黄にも熟と生(あるいは乾)があり、後者は涼寒で清熱涼血 滋陰の作用がある。四物湯の当帰、川は丹参で代用することも可能であり、熟地黄は生地黄に変えるというサジ加減が出来る。各生薬の性味、効能を熟知していれば、方剤全体の温熱涼寒平の具合を変化させられる、これは、実際の臨床で大切なことである。

下品なコメントが続いていますので、コメントは当分受け付けないことにしました。