「痰」 最終講義
本日の漢方市民講座は「痰」最終講座です。来月12月からは、もう少し解りやすい内容にしたいと思います。
それでは、師弟問答に入ります 。
老師:
痰が存在する臓腑が異れば、症状の表われも特異であることは覚えておかなくてはならない。昨夕は「痰動于腎」を問うた。今朝は「痰留骨節・経絡」について問う。およその病機はなんぞや。
貴方:
「痰留骨節・経絡」とは、痰濁が骨節・経絡に停留して、気血鬱滞、絡脈痺阻(ひそ)となることです。
老師:
然り。骨節はおよそ関節と同意である。経絡は眼に見えないものであるが、血気運行の通道で、直行する経脈と、経脈から分かれ身体各部を網絡する絡脈の総称であり、経絡は全身の気血の運行 臓腑四肢関節の連係 上下内外の疏通 体内各部分の調節などの通路と考えられ、経絡の系統的な連係が、人体を有機的統一体にしている。 では骨節や経絡に痰濁が停留すればいかなる症状が生じるや。
貴方:
骨節疼痛腫脹、肢体が麻痺不仁、或いは半身不随、口眼歪斜、瘰癧(リンパ節腫)、癭気(甲状腺腫)、結節、腫塊などです。経絡に沿って痰濁が停留するために生じる症状です。
老師:
然り、では一般的な舌象と脈象は?
貴方:
苔白膩、脈弦滑です。
老師:
然り。他の「痰」症と大方同じである。では治則はなんぞや。
貴方:
軟堅消結、通絡化痰です。
老師:
然り。通則不痛 痛則不通のごとく、経絡に停留している痰を除き(化痰)、経絡の流れを改善するのが通絡化痰であり、経絡に停留した痰が凝結して癭気(甲状腺腫)、結節、腫塊を形成した場合には、堅さを軟らかくしてシコリ(結)を散らすのが、軟堅消結(散結)である。方剤を挙げれば四海舒鬱丸、指迷茯苓丸になる。解説せよ。
貴方:
四海舒鬱丸(しかいじょうつがん)(出典:瘍医大全):組成は、海蛤粉(鹹寒) 海蒂 海藻(苦鹹寒) 海螵蛸(=烏?骨) 昆布 陳皮 青木香です。
青木香15g 陳皮 海蛤粉各9g 海帯(わかめ) 海藻 昆布 海螵蛸各60gを沸騰水をかけて塩分を除きます。その後、乾燥したら細末に砕き、一日3回服用します。沸騰水をかけ、容器の底に沈んだ残りの残滓はツボである気頚に塗ります。病状が改善したら、再発予防として、黄薬子120g 白酒1升を60分煮詰め、7日間容器に置き、白酒の火毒を除き、日に2回数杯を飲みます。効能は、行気化痰,散結消?(しょういん)です。格生薬の効能は、青木香、陳皮は理气化痰、海蛤粉、海帯、海藻、昆布は清熱化痰,軟堅散結に、海螵蛸は活血消?に、全体として、行気化痰,軟堅消?に作用します。黄薬子は凉血降火,消?解毒に働き、白酒と煮て内服すれば、能?瘤結気を治し,継続服用すれば、気?を根治できます。
老師:
然り。四海舒鬱丸(しかいじょうつがん)の主治は、肝脾気鬱による気?(きいん)であり、甲状腺種(qi goiter/simple goiter)であり、喜怒にしたがって消長するもので、はなはだしくなれば飲食の障害を起こすものとなる。
次に、指迷茯苓丸について問う。出典と組成と効能を述べよ。
貴方:
指迷茯苓丸の出典は通常は、朱丹渓の丹渓心法とあるか、全生指迷方であると聞いております。効能は燥湿滌痰にて、経絡の留痰を滌痰することにより四肢、関節の痛みを除くと聞いております。組成は
半夏60茯苓30枳殻15風化芒硝7.5 生姜 一回6gにて、主治は痰留経絡です。四肢の疼痛、あるいは浮腫があり、舌苔は白膩が多いと聞き及びます。
老師:
然り。元来、指迷方では「茯苓丸」と称されたものであり、停痰臂(肩)痛,指迷方と私も聞き及んでいる。飲伏於内,停滯中脘,脾主四肢,脾滯而氣不下,故上行攻臂,其脈沉細者是也と記載があるように、脈象は沈細とあるが、必ずしもそうでない症例がある。生姜汁で丸薬にしたものである。風化芒硝は軟堅に作用するとある。虚痰により、行気すれば肩の痛みはおのずから止むとある。痰飲流入四肢に流入するのが病機であり、風邪によるものではない。導痰湯も可なり。症状が重ければ、控涎丹(こうえんたん)(三因极一病証方論):甘遂 大戟 白芥子も考慮に入れるべし。蠲痺湯は痺証の共用処方である故に考慮すべし。蠲痺湯(医学心悟):羌活 独活 桂心 秦艽 当帰 川芎 炙甘草 海風藤 桑枝 乳香 木香の組成である。証により、風邪が盛んな者には、羌活、独活、防風を加え、寒邪が盛んな者には、川烏、細辛を加え、湿邪が盛んな者には、薏苡仁、防己を加えるのがよい。肩の痛み、関節の痛みが慢性化して、気血不足、肝腎虚弱を伴う者には、三痺湯(婦人良方)を病証の重点に従い加減使用する。三痺湯(婦人良方):独活桑寄生湯の桑寄生を黄耆 続断 生姜に変えたものと理解できる。続断 杜仲 防風 肉桂 細辛 人参 茯苓 当帰 白芍 黄蓍 牛膝 甘草 秦艽 熟地黄 川芎 独活 生姜の組成となり、袪痰より、補気に重点が移る。
貴方:
2009年6月2日に、「臨床経験録」で発表された指迷茯苓丸の記事を拝読する経験がありました。
http://www.haodf.com/zhuanjiaguandian/zhaodongqi_67726.htm
??奇医生(医師)の発表です。氏は指迷茯苓丸について以下のように述べています。以下簡体漢字が混じります。
??奇医生(医師)の発表2009年6月2日
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