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ネフローゼ症候群の漢方治療 医案26 腎炎、腎不全の漢方治療154報

2013-06-22 00:15:00 | ネフローゼ症候群 漢方治療症例の実際(医

李寿山氏医案 脾腎陽虚 湿瘀互結 壅滞三焦案 

(中国当代名医医案医話選より)

李寿山氏は名老中医、大連中医院 教授

患者:王某 16歳 男性 学生

初診年月日1987320

主訴:小便不利 水腫再発

病歴:

幼年期に腎炎の既往歴がある。3ヶ月前、発熱水腫尿少で大連某病院に救患として入院、3日後解熱したが水腫は加重した。診断:ネフローゼ症候群、入院3ヶ月有余、大量のステロイド、雷公藤などの中西薬品及びアルブミン補充療法を受けたが、病情は寛解せず、日増しに病情が重くなり、李氏の会診となった。

利氏初診時所見

全身高度水腫、胸水腹水を伴う、陰嚢腫大光亮、腹部と下肢の皮膚に多発性の水疱隆起あり、体位変動により水腫加重、小便短少、速尿(フロセミド)の筋注、経口投与にて24時間尿量500mlに届かず、食欲不振で食べられず、主食50g程度、心悸短気(動悸息切れ)、口干思飲、悪心で吐きそうになる、大便数日に一回、ベッドに臥して起きず、無理に起きようとすると眩暈がして座ることも出来ない。検査:精神萎縮不振、面色白、語気低微、全身高度水腫、臍が飛び出しており、腰背中の浮腫は平らで指で押せば陥没し、足内踝とアキレス腱の間及び足の裏は水腫で平らであり、“満月様顔貌”、舌淡津少にして燥、舌辺に瘀点があり、舌下静脈は淡紫で細く長い。脈象沈細弦数

尿検査:蛋白4+RBC3~5/HP顆粒円柱(+) 血清総蛋白4g/dl、アルブミン1.1/dl、グロブリン2.9g/dlCre133.4μmol/L1.5m/dL) BUN3.2mmol/L19.2m/dL)、二酸化炭素結合力CO2CP23mmol/L正常域2030mmol/L或いは5070 Vol%、血圧21.8/12kPa(164/90mmHg)、腎機能軽度障害あり。

診断:腎虚水腫(ネフローゼ症候群)、脾腎陽衰、湿瘀互結 壅滞三焦。

治療:益気化瘀 淡滲利水 扶陽を補助とする。

処方

黄耆30g 党参30g 丹参20g 二丑(白黒牽牛子)15g 鹿角霜15g 桔梗5g 炮附子3g 水煎服用。

420日再診:

水腫は大消(すでに西洋利尿剤は中止してあった)、二便通暢、食欲も食べる量も増進、一日主食約200g。支えられてベッド上に起き活動が可能になった。脈沈細無力、舌淡既に潤、苔薄白、舌辺に紫気あり。

水湿漸少、瘀滞漸化、脾腎両虚が著明、扶正を主として、化痰滲湿を併用する。

コメント:文脈、処方内容から判断して化痰滲湿は化瘀滲湿の間違い。

処方

黄耆50g 党参30g 白朮15g 当帰10g 丹参20g 桂枝7.5g 炮附子5g 益母草30g 冬葵子(利水滲湿 潤腸通便)15g 茯苓15g 金桜子15g 川貝母6g 鹿角霜15g 水煎服用。

経過

上方加減、治療2ヶ月余、少量の血漿蛋白の補充を除いて、ステロイドは完全に停止した。肢体水腫及び胸水腹水は全消、食欲増強、一日主食約300g、二便通暢、自力でベッドから降りて活動が可能になり、生活自理、面色紅潤、舌質淡紅、瘀点消失。苔薄白で潤、血清総蛋白6g/dl、アルブミン3.6g/dl、グロブリン2.4g/dlCreBUNCO2CP等正常。湿去瘀消、正気漸復、遂に退院、家に帰り休養することになった。

黄蓍と大棗の粥を食べるように指導し、?(大黄 ニベ科イシモチの浮き袋を乾燥させ粉末にしたもの)や枸杞子などの食事療法で治療効果を固めた。さらに、3ヶ月、体重は増加し、病気以前の状態に戻り、皮膚の水腫は脱落して瘢痕状の皺になった。一般症状は回復、何度も検査したが腎臓関連の数値に異常は無く、随訪2年。一切は良好で、既に復学していた。

評析

本案の患者は本虚標実の腎労水腫で、脾腎陽虚が本であり、湿阻血瘀が標である。急即治標、緩即治本、脾邪を去り正気を扶養する。

コメント:脾邪なる漢方用語は存在せず、何かの間違いと思われる。

方は防己黄蓍湯、葵子茯苓散、当帰貝母苦参丸等の加減、清利湿熱、淡滲瀉水である。扶陽を補助として、後に飲食治療を行い、遂に全快したのである。