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ネフローゼ症候群の漢方治療 医案21 腎炎、腎不全の漢方治療149報

2013-06-17 00:15:00 | ネフローゼ症候群 漢方治療症例の実際(医

高輝運氏医案 脾腎陽虚 気化不利案

キイワード:微小変化群 新加春澤湯

(高輝運臨床経験精選より)

患者?某 42歳 男性 党幹部

初診年月日199164

初診時所見

患者は腰酸乏力、顔面双下肢に水腫あり、気短自汗あり。小便不利、便溏(軟便)。尿蛋白(4+)24時間尿蛋白定量7g。血清総蛋白4g/dl、アルブミン3.0/dl、グロブリン2.2/dl

西洋医診断ネフローゼ症候群1型(微小変化群)

舌質淡胖、苔白、脈沈細弦

中医弁証

脾腎陽虚 気化不利

治則

益気温陽 化気行水

処方

太子参10g 黄耆15g 茯苓10g 猪苓10g 澤瀉10g 白朮10g 桂枝8g 川附子8g 熟地黄15g

経過

36剤服用後、プレドニゾンは減量して20mg/日となり、尿蛋白(+)、24時間尿蛋白定量は0.6g、血清アルブミン値は4.5/dl、グロブリン値2.6/dl、継続50剤(計86剤)後に、プレドニゾン減量5mg/日、尿蛋白(-)その他の検査正常域。浮腫消失、退院となった。

評析

高氏はネフローゼ症候群の病機の要点は本虚標実であり、虚実挟雑のこの病に対して、腎の陰陽の本、益腎健脾即ち開閉有度にすれば、水邪は自ずと消えるという視点を有する。以前に“新加春澤湯”を多年用いて、ネフローゼ症候群の治療効果を確実にしている。春澤湯は明代の王肯堂「証治准縄」が出典であり、張仲景「傷寒論」の五苓散加人参の配合である。高氏は前賢の経験基礎を継承し、更に川附子、熟地、生黄耆を加えた。方中、附子は温腎に、熟地は滋補腎陰に、黄耆 白朮は健脾益気に、二苓(茯苓 猪苓)、澤瀉は淡滲利湿に、桂枝は化気行水に作用し、全方は扶生固本、益腎健脾、行気化水の効となる。

ドクター康仁の印象

あまり陽虚という証は無いように思いますが、高氏は記載されていない畏寒肢冷などを見て、陽虚と判断したのかも知れません。陽虚の場合には舌質がやや暗に傾きますが、その記載はありません。

陽虚であれば、涼薬の太子参よりも平薬の党参や温薬の人参の方が向いていると私は思います。人参に比較して太子参が価格の面で安かったのでしょう。

ともかく、約3ヶ月でステロイドを順調に減量し維持量5mgで、尿蛋白(-)となったのですから、成功例でしょう。長期観察をしていませんので、本案の治療が再発防止になったのかどうかは未知です。ステロイドからの離脱も記載されてはいません。

こういう症例経過に対して、丁度ステロイドが効いただけで、中医治療をしなくても結果は同じじゃなかったのでは?と揶揄する西洋医がいることも十分承知の上で、本案を紹介しました。

沖縄は梅雨明けになったそうですが、近畿はまだ先です。

口が粘る、苔が白膩になる、身体が重だるい。すべて現在の私の症状です。内湿と外湿が互結している状態です。

羌活勝湿湯でも飲んでみます。次には清暑益気湯の季節が到来しますね。

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2013617日(月) 記