先日次のようなコメントをいただいた。
「粳米をもち米と定義してあるのは間違いではありませんか?まして白虎湯に含まれるとすれば清熱作用を期待してのこと。もち米だと温性があります。粳米は玄米、お米、うるち米だと聞いています。これなら凉性で白虎湯と合います。
大変に真面目に勉強されている。真面目に勉強するのは賞賛に値するが、部分を見て、全体を見ないというのか、私に言わせれば「浅はか」というべきコメントである。
確かにご指摘のようにウルチ米であろう。「盆 戦争 ぼた餅」の流れからもち米という講座になってしまったことはお詫びする。
しかし「白虎湯」中の粳米は粳米の清熱作用を期待して配合されているのではない。私がグリーンで表記したのは薬性が「平」という意味である。コメントにあるように温性であればレッドあるいはオレンジで表現したはずである。「白虎湯」は「粥」はなく「薬湯」である。石膏中の微量元素を安定させ薬湯に留める働きが粳米にあるわけで、山薬、これも薬性は平であり、代用も可能である。分子間の詳しい関係は知らないが、「リポステロイド」の如き、成分の閉じ込め作用があるのではないかと思う。
「もち米だと温性があります、、玄米、お米、うるち米、、これなら凉性で」のコメントはさらに「近○眼的専門○○」である。
飢餓が続けば体温が低下する、その時に「玄米、お米、うるち米」の粥を食わせれば体温が下がるから避けるべきかといえばそうではない。「エネルギー」漢方で言う「気」「陽」を補うことで体温は上昇するわけで、「玄米、お米、うるち米」が補陽薬として分類されていないのとは別課題なのである。ましてや清熱剤とも分類されていない。杓子定規に「玄米、お米、うるち米は涼」とする根拠が見当たらない。米を食いすぎれば冷え性になり、餅を食いすぎれば体が熱くてたまらないということは無いのだ。麦飯は麦(涼)と飯(涼とすれば)だが、とろろ=山芋(平)をかけて食すれば体が冷えて困ることは無いのだ。
脱水、高体温、飢餓に陥り砂漠で行き倒れになっている人がいるとすれば、紅茶(温性)、緑茶、麦茶(涼性)、水(平)を問わず、まずは補陰の意味で水分を与え、日陰で涼ませ、一息ついたら消化のいい食べ物を温、涼を問わずエネルギー補給の目的で与えるわけである。棗(なつめ)は温、西瓜(すいか)は涼、米が涼?苦瓜は寒であるという薬性にかかわらずにである。当然餅粥でもいいわけだ。
逆に冬山で遭難して低体温になっている人に対しては、まずは保温し、ブランデーを飲ませ、気付けと共に体を温め、エネルギーを早急に与える。漢方用語で言えば補気、補陽である。次に暖かい飲み物、消化のいい食べ物を温涼にかかわらず与えるのである。最初から餅を食わせる馬鹿は当然いない。ブランデーが補陽剤として分類されていないのはすでに御存知であろう。
「凉性で白虎湯と合います」とは私にとっては鋭い指摘だったが、以上を以って、その「涼性」も、もち米の「温」にも納得できないものがあると返答する。平を意味するグリーンで表記した根拠である。
そもそも主食となる穀物は、温熱涼寒平で言えば平を中心とするものであり、秋刀魚は涼、マグロは温のような議論は無意味だと思う。生姜、シシトウ、唐辛子、ニンニクは温という議論は、副食物となり生薬となるから存在する。
それでも疑問をお持ちになるのであれば、上海中医薬科大学薬理学教室の「文」教授(中薬理学、方剤学教授)に質問をすればいいと思う。大変優しい女性教授である。
「ナゼ粳米(ジンミー)いれる、これ大切なことよ、オシリ コメ清熱作用ナイ、これ試験に出すよ、よく覚えるネ オシリ」と言われて私は覚えた。
頻繁に耳にする「オシリ」であったが、「お知り!」と激励の意味か、彼女が留学中に日本人か誰かに悪戯で吹き込まれた単なる「お尻」なのかいまだに意味不明である。私の「白虎湯」理論は文教授の教えである。
真面目な漢方の御質問には誠意を持ってお答えします。